日経メディカルオンラインに7月10日付で『男性患者は乳癌に気づきにくく予後不良になりがち』という記事が載っていた。
乳癌患者の約1%が男性だ。しかし、女性患者に比べ男性の乳癌は、進行した段階で診断される割合が高く、治療開始が遅いために予後不良になるケースが多いという。Orion Collaborative GroupのMarina Garassino氏が、2008年7月6日に欧州臨床腫瘍学会(ESMO)Luganoカンファレンスで報告した。
男性の乳がんは発見が遅れ悪くなる場合が多いという話は、乳がんに興味を持ってある程度調べたことがある人ならどこかで見聞きしたことがあると思う。この記事の報告では、1990年から2007年という期間を対象とした後ろ向き研究によってこれを裏付けている。
この記事でも、
男性にも乳癌が起こりうることを知っている人は少ない。今回分析対象となった患者の多くが、乳房の中に発見した腫瘤を癌だとは思わず、その結果早期診断の機会を逸していた
…と指摘しているように、身体と性差に関する知識の不足、あるいは不正確さが、男性乳がんの悪化を支持しているようである。ここ数年毎十月に行われている、乳がんの早期発見と治療を訴えるピンクリボン運動でも、ウェブ上の記事を見ているとどうやら男性に対しては「女性を守るために」参加せよと言わんばかりの空気を感じるし、自治体が行う乳がん検診でも、ざっと見た限り対象を女性としているところがほとんどのようだ。女性向けの保険商品の広告などでは乳がんが女性だけの病気であるかのように記述しているものもある。「正しい知識」面して結果的には誤解を広めているのではないだろうか。
ヒトの胎児は形態的には雌雄未分化の状態で発生し、その後男性化しなければ女性化する。だから基本的には全てのヒトが「同じ材料でできている」と言える。男女を問わず乳腺はある。だからといって違いを見なくてもいいということにはならないが、同じであるということを認めなくてもいいということにもならない。
ここに、社会的人間と生物的ヒトとの乖離が問題になる。このような状況を改善し、男性乳がんをめぐる医療環境をを女性のそれと同じ水準を目指し押し上げていくためには、どれだけのものが足りないのだろうか。
津野海太郎著『小さなメディアの必要』は、1981年に刊行され、一度絶版になった後、1997年に電子書籍として復刊され、青空文庫で配布されている。この本の中に、次のくだりがある。
…。活版印刷には大量の鉛活字や重たい機械がいる。電気も必要だ。しかしガリ版なら、かんたんな道具さえあれば自分ひとりの力で印刷ができる。しかも工夫しだいでは、びっくりするほどうつくしい印刷物をつくることも不可能ではない。…
この本では、『ガリ版の話』と題する一章を設けて、ガリ版印刷と「つづり方運動」やミンダナオ島の運動体との関係などについて記している。そして、私の印象では、この章はこの本の全体の中で、特に重要な意味を持っている。大きな設備が必要なく、人一人が所有可能な道具と手間で出版できるという点で、ウェブページとガリ版印刷は共通している。
ここでは、近頃いろいろと見聞きしながら考えたことなどを、この示唆に富む本からの引用とともにつらつらと並べてみることにする。
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