二〇〇五年四月から三年間にわたって続けられた、一橋大学大学院先端課題研究六「人間-環境関係の理論と展望」の成果。第1部は、一橋大学で行なわれた著名な環境運動家のレスター・ブラウン氏とのシンポジウムの記録をもとにしている。第2部は、氏の著作にそって、より詳細に氏の自然環境問題の認識とそれにもとづく提案および政策について紹介・検討。第3部は、われわれがあらためて環境問題にどういう見方や姿勢で立ち向かったらいいのかを反省し、吟味することを目指す。第4部は、環境問題についての教育や学習の現状や課題ないし展望について展開する。
女性もポルノグラフィを楽しんでいるー。男性特有のものと特殊視されやすい「ポルノを読む」経験をそのくびきから解き放ち、「女性たちがどのようなポルノを読んでいるのか」「どう楽しんでいるのか」「女性向けポルノはなぜマンガなのか」などを「ハードなBL」「レディコミ」雑誌を大量に読み込み、読者投稿を分析することで明らかにする。そのうえで、フェミニズムのポルノ批判が女性の性欲=性的能動性を取りこぼしている点を指摘して、快楽的な性に対する女性の能動性を肯定し、ポルノを消費する主体としての可能性を丁寧に論じる。
ジェンダー化された存在としての男性とその男性性が、当事者によって、さらに多様に再検討されている。解放運動としての自己省察=メンズ・リブ、DVやさまざまな暴力への取り組み、ゲイムーブメント、学問領域における展開まで、フェミニズムのインパクトを受けて切り拓かれた、実践的再定義の数々を紹介する。
社会構築主義のインパクト、多様性の承認。バックラッシュと新自由主義、「女性の貧困化」。社会理論がその方向性を見定めがたく彷徨する間に、ひとびとの身体・生命はグローバルな取引の激流に投げ出された。フェミニズムは近代リベラリズムの何を乗り越えるのか。ジェンダーの壁を越えた承認と再分配の理論構築へ、丹念に積み重ねられた論考を紹介。
フェミニズム運動史・思想史の原点である第一波のダイナミックな展開を膨大な資料を駆使して追求する。その全体像の解明。
フェミニズムとは性差別にもとづく搾取や抑圧の構造を問い、その変革を目指す思想のはずである。だが、いわゆる「第一世界」のフェミニズムは、「帝国」による植民地支配に起源する植民地主義を見落としたまま主張されてきた。植民地主義と性差別という複合的な抑圧のもとにある朝鮮女性たちが、真の人間性を求めて辿った苦闘の軌跡を描きながら、開かれたフェミニズムの可能性を問う。
文化的・社会的に構築されたセクシュアリティは、現在どこまで揺らいだか。排他的で抑圧的な異性愛規範を踏み破り、自らのセクシュアリティを選択する人、性暴力被害の当事者、性産業で働く人の声が制度や法を動かし始めた。これまで聞かれることのなかった多様な声を収録。
女性の政治・経済参画は先進国中で依然低く、男女賃金格差も突出する日本。女をあらかじめ劣位に置く権力ーとくに雇用や社会政策など生活を決定する多様な権力の分析は、問題の発見と理論化、実証分析の蓄積へと、フェミニズムの運動/研究の両方の実践が切り開いた。その軌跡と現在の位置を指し示す格好の文献を紹介。
「国家」と「わたし」の関係はどうあるべきか。過去のシティズンシップ(「市民権」)論、主にリベラリズムの議論を批判的に再検討しながら、「平等で自由な人格」がよりよく尊重されるための新たな理念を構想する。いかなる者の視点をも排除しない可能性を秘めたフェミニズム・シティズンシップ論につづき、誰かに依存せざるを得ない存在であるわたしたちにとって不可欠の「ケア関係」に着目した章を増補。本書は、「シティズンシップ」論入門として最適であると同時に、社会科学の新局面をひらく挑戦の書である。
「母」「主婦」…「女」役割の固定化の構造を解読し、解放をめざしてきた女性学のメインテーマ、性役割研究。共働きの増大や非婚・少子化の進むいま、雇用やケアをめぐって、性別役割分業が再編成されているー70〜80年代から現在まで蓄積された研究成果が、この社会のジェンダー力学をより鮮明に浮き彫りにする。フェミニズムの根本課題は、まだ大きい。
本書は、「政治」をどのように考えるかという問題を、政治学の知見を踏まえて真剣に扱うことにより、「政治」をめぐるフェミニズムの理論的考察に新しい知見を提示する。公/私の境界線、国家・社会・家族の関係、「男性のケア」などへの注目を通して、政治学の中心問題に「フェミニズム」をすえるとともに、「女性問題」ではないジェンダー平等を展望する。
若い女、中年の女、母親、主婦…孤立させられた女たちが声をあげたリブ。制度や意識の変化を経ても、性愛から老いまで、いまだ「名前のない問題」と向き合い生き抜く思想は終わらない。「女であること」と格闘し掴み取られて来たひとつひとつの価値を、手渡す/受け取るというセカンドステージへ。
女性への抑圧はいったい何に由来するのか。著者は主婦・家事労働に着目しつつ、階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった、近代資本制社会に特有の女性抑圧構造を、理論的、歴史的に明快に論じてみせた。マルクス主義フェミニズムの立場を打ち出し、研究の新たな地平を拓いた記念碑的著作。
妊娠や出産、育児は決して「自然の営み」ではない。育児負担の歪みがもたらす少子社会、出産の医療化の果ての産科医不足、テクノロジーが揺るがす生命観・家族観、生殖や再生産労働の商品化がひろげるグローバルな格差。フェミニズムの試金石でもありつづける〈母性〉=近代の性と生殖をめぐる危機の現在を見渡す論集。
人種差別、経済的搾取、軍国主義、環境破壊など、グローバルなレベルで社会正義と民主主義に反するプロジェクトを推し進める近代西洋科学への論争の書。客観性、合理性、価値中立性、真理…科学の中心的概念から科学と権力の共謀関係を問う。