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かぐや姫のことを語る

かぐや姫 35  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

その後。
くらもちの皇子は、「これ以上の恥はない。かぐや姫と結婚できなかったばかりか、世間の人がどう思うだろうかと考えると、はずかしく思い、深い山の中へ入ってしまいました。
皇子の執事や仕えている人たちが、みんなで手分けをして探したが、皇子をみつけることはできませんでした。

皇子は、自分がしたことが恥ずかしくて、みずから姿を隠したのでしょうか。
その後、何年かたってから、ひょつこり帰ってきたのでしょうか。

この玉の枝事件をきっかけに、「たまさかに」ということばがつかわれるようになりました。

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かぐや姫 34  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

かぐや姫は、訴えた金工たちをよんで、たくさんの褒美を与えました。金工たちは、「期待したとおりだった」といい、喜んで帰りました。

ところが・・・。
その帰り道、皇子は、金工たちを血が流れるまでたたいたのです。
そして、金工たちがかぐや姫からもらった褒美を全部とりあげ、自分の物にしてしまいました。
工匠たちは、無一文になり逃げ帰りました。

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かぐや姫 33  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

かぐや姫の心はすっかり晴れて、くらもちの皇子に返歌をしました。

   まことかと聞きて見つれば言の葉を
   かざれる玉の枝にぞありける

かぐや姫は、歌とともに、玉の枝も返しました。

 一方、おじいさんは、あれほど皇子と意気投合したのに、だまされていたのかと思うときまりが悪く、しょんぼりして座っています。
皇子は、立ったり座ったりして落ち着きません。
日が暮れてから、皇子はこっそり家へ帰っていきました。 

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かぐや姫 32  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

ですから、くらもちの皇子のかわりに、かぐや姫さまから玉の枝の代金をいただきたいと思います」
金工たちは、「当然いただくべきお金です」と、口々にいいました。

かぐや姫は、「くらもちの皇子と、結婚しなくてはならないのか」と悩んでいた心がすっきりし、晴れ晴れした気持になりました。

おじいさんをよんでいいました。
「あの玉の枝をみた時、本物かしらと思い、何度も玉の枝をみました。意外な偽りごとだったのですね。偽りの品なので、早くくらもちの皇子に返してください」

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かぐや姫 31  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

おじいさんは、この金工たちは、何をいっているのだろうと思いました。
くらもちの皇子は、まさか金工たちがかぐや姫の家にまで押しかけてくると思っていなかったので、びっくりしあわてています。

このさわぎをかぐや姫が聞き、金工が差し出した文を読むと、こんなことが書いてありました。
「くらもちの皇子は、千日の間、身分の低い金工たちと同じ家に隠れ住み、立派な玉の枝を作らせました。そして、玉の枝が完成したら、官職をくれるといいました。いろいろ考えてみると、側室のかぐや姫さまが、玉の枝を希望しているのではないかと、気がつきました。

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かぐや姫 30  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

皇子は、おじいさんの歌を聞き、歌を返しました。

   我が袂今日かわければわびしさの
   千種の数もわすられぬべし

二人が話をしていると、金工が六人、庭へやってきました。
そして、一人が、文ばさみに文をはさんで訴えました。

「内匠寮(たくみづかさ)の金工、綾部の内麻呂が申し上げます。玉の木の枝を作るために、五穀を断ち、毎日神仏に祈りながら、千日あまり玉の枝の制作をしました。でも、くらもちの皇子から、まだ玉の枝の謝礼をもらっていません。ちゃんと謝礼をいただき、貧しい弟子にやりたいのです」と。

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かぐや姫 29  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

少しでも早く帰って、かぐや姫にこの枝をみてほしいと思いました。
船にのると、追い風が吹き、四百余日で帰ってくることができました。仏さまが守ってくれたのでしょう。

昨日、難波から都へ帰りました。
海の水でぬれた衣を着替えもしないで、こちらに直接きたのです。
おじいさんは、皇子の話を聞き、大変な思いをして、玉の枝をとってきたのだなと思いました。

皇子の話を聞き、おじいさんが詠んだ歌。
 
   くれたけのよよのたけとり野山にも
   さやはわびしきふしをのみ見し 

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かぐや姫 28  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

山をみると、登る手段がないほどけわしい山でした。
山の側面を登っていくと、この世の物とは思えないほど美しい花の木が、何本も立っていました。
そして、山からは、金・銀・るり色の水が、さらさらと流れています。

その川には、いろいろな色の玉で作った橋がかかっていました。
橋の近くには、光輝く木が数えきれないほど立っています。
ここへ持ってきた木の枝は、その中ではあまり美しいと思えないものでしたが、かぐや姫が希望した通りの物でないとだめだと思い、この木の枝を折ってきました。

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かぐや姫 27  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

その山は、非常に高く美しい山でした。
この山こそ、探している蓬莱山ではないかと思ったが、なぜか恐ろしく感じました。
二・三日は、山のまわりを船でまわり、様子をうかがっていました。

すると・・・。
美しい天女がでてきて、銀の椀で水をくんでいました。
あわてて船からおりて、「この山の名前は」と聞くと、「蓬莱山です」といいました。
これを聞いた時のうれしさ。こんなにうれしかったことはありません。
「あなたの名前は」と聞くと、「私の名は、うかんるり」と答え、すっと消えてしまいました。

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かぐや姫 26  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 

波の荒い日が続き、船が沈みそうになったり、知らぬ国に吹き寄せられ、鬼のような怪物に殺されそうになったり。
ある時には、方向がわからなくなり、遭難しそうになったことも。

食料がなくなってしまい、上陸した島で、草の根を食べたこともありました。
おそろしい妖怪に食べられそうになったことも。
貝を食べ、命をつないだこともあります。
道中、何度か病気になりました。

出航してから五百日目の朝八時頃。
海のむこうに、かすかに山が見えました。
船を島に近づけ、山をみました。

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かぐや姫 25 くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

おじいさんは、すっかりその気になり、姫の寝室の中をかたつけました。

皇子は、「苦労して玉の枝を探したことを、今さらいろいろいってもしかたがないが」といいながら、縁側にあがり座りました。
おじいさんが、皇子に聞きました。
「この木は、どんな所にはえていたのかね」と。
すると、皇子が話を始めました。

二年前の二月十日。
難波から船に乗り出発しました。
蓬莱山の方向がわからないので、心細かったけれど、風にまかせて航行しました。
航海を続けていれば、いつかきっと蓬莱山にたどりつくことができるだろうと思いました。

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かぐや姫 24  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

「くらもちの皇子は、姫が希望した蓬莱の玉の枝を持ってきたのですよ。姫、もう皇子の申し出をことわることはできません。自宅へも寄らず、旅の姿のまま、姫の所へきたのです。皇子と結婚しなさい」
おじいさんがいいました。

姫は、おじいさんの話も聞かず、頬杖をついて物思いにふけっています。
「姫。これは、日本では見ることができない貴重な玉の枝だ。皇子の申し出をことわる理由は、何もない。皇子は、人柄もよさそうだし」

すると、姫が。
「私は、じいのいうことを、ことわることができなかったので、くらもちの皇子には、蓬莱の玉の枝を・・・と、いいました。蓬莱の玉の枝など、たやすく持ってくることはできないだろうと思ったのに、簡単に玉の枝を持ってきました。ほんとうにくやしい」と。

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かぐや姫 23 くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

「くらもちの皇子が、旅から帰ってきました」
召使いが告げたので、おじいさんが皇子に会いました。
「苦労して、玉の枝を持ってきました。かぐや姫にみせてください」
おじいさんは、皇子が持ってきた玉の枝と手紙を持って、かぐや姫の部屋へ行きました。

   いたずらに身はなしつとも玉の枝を
   たおらでさらに帰らざらまし 

かぐや姫は、玉の枝を手にとってみました。
「本物かしら」
姫は、何度も玉の枝をみました。
皇子の歌も、なぜか心にひびきません。

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かぐや姫 22  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

おおぜいの人が、難波の浦へ、皇子を迎えにきました。
皇子は、旅に疲れたという様子で、ぐったり座っています。

皇子は、難波の浦での迎えがすむと、玉の枝を立派な箱に入れ、おおいをかぶせて、都へ運びました。
そして、召使いたちをつかい、「くらもちの皇子は、優曇華の花を持って、都へ行きました」と、うわさを流したのです。
かぐや姫は、くらもちの皇子のうわさを聞き、「くらもちの皇子には、負けてしまったか・・・」と悩みました。

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かぐや姫 20  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

「くらもちの皇子は、こんなふうに、みんなに見送られて出発しました」と、人々に信じさせたのです。
三日後。
皇子は人目につかないように、船で帰宅しました。

帰宅した皇子は、計画通りに、当時の一流の金工六人を集め、簡単に人が寄りつくことができないような家をつくり、金工たちをそこへ住まわせました。
秘密を守るため、垣根を三重にし、厳重な警戒をしたのです。
そして、皇子も金工たちと一緒に、その家に籠って、玉の枝の制作を見守りました。

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かぐや姫 19  くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝

くらもちの皇子は、はかりごとにたけた人でした。
「体の具合が悪いので、筑紫の温泉へ行き療養してきます」
そういって、朝廷から休暇をもらいました。
そして、かぐや姫には、「これから玉の枝をとりに行ってきます」と、使者に伝言させました。

皇子に仕えている人たちは、難波までみんなで見送りをしました。
しのびの旅ということで、皇子の従者は数人だけ。
皇子は、身近に仕える人だけを連れて行きました。
見送りの人たちは、皇子の見送りが終わると、京へ帰りました。

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かぐや姫 18  石作の皇子と仏の御石の鉢

   置く露の光をだにもやどさまし
   小倉の山にて何を求めけむ
 
かぐや姫は、その鉢を、皇子に突き返しました。
皇子は、鉢を門口になげ捨て、それでもへこたれずに、かぐや姫に返歌を詠みました。

   白山にあへば光の失するかと
   はちを捨てても頼まるるかな

かぐや姫はあきれてしまい、返歌はしませんでした。
皇子は、弁解をしながら帰って行きました。

偽の鉢を捨ててからも、あつかましくも「頼まるるかな」といった石作の皇子のことばが元になり、あつかましいことを「はじをする」というようになりました。

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かぐや姫 17  石作の皇子と仏の御石の鉢

その鉢は、大和の国十市郡にある山寺の、びんずるの前にあった鉢でした。
皇子は、その鉢に、たっぷり煤墨を塗り、錦の袋に入れ、かぐや姫の家へ持って行きました。

かぐや姫が、石作の皇子が持ってきた鉢をみると、鉢の中に手紙が入っています。
ひろげてみると、次のような歌が。

  海山の道に心をつくしはてないしのはちの涙ながれき

かぐや姫は、「鉢に光があるかしら」と、何度も鉢をみました。
でも、何の光もありません。

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かぐや姫 16  石作の皇子と仏の御石の鉢

石作の皇子は、「天竺に一つしかないという鉢を探しに行っても、どうせ見つけることはできないだろう」と思いました。
そこで、皇子は、かぐや姫の家には、「今日、天竺へ石の鉢をみつけに行ってきます」と、使者に知らせました。
皇子は、鉢を探しに行く気はありません。
召し使い達に命じ、寺をまわって、適当な鉢をいくつか探させました。

三年後。
皇子は、召し使いたちが探してきた鉢の中から、かぐや姫の所へ持っていく鉢を選びました。 

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かぐや姫 15  五人の求婚者への難題

「姫。どれも難しい品ばかりだね。この国にはないものばかりだし。五人にどう伝えたらいいのだろう」
「じい、何が難しいのでしょう。私への愛情があれば、何も難しいことはありません」
かぐや姫がいいました。
 
おじいさんは、「娘がこのようにいっております。娘のいう品を持ってきてみせてください」と、五人に伝えました。
五人は、かぐや姫の希望する品を聞き、うんざりした様子で帰って行きました。

しかし、かぐや姫と結婚できなかったら、この世に生きている価値はない。
天竺にある物なら、探せばきっとみつかるにちがいないと思うのでした。