かぐや姫 74 石上の中納言と燕の子安貝
子安貝ではないとわかった中納言は、いっそう気分が悪くなり、腰が折れて動けなくなってしまいました。
中納言は、こどもっぽいことをして、失敗したことを人に知られたくないと思っています。
それが病のもとになって、中納言はだんだんに衰弱してしまいました。
子安貝をとれなかったことより、他人がこの話を聞いて、どう思うかと気にしたのです。
/かぐや姫
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かぐや姫 74 石上の中納言と燕の子安貝
子安貝ではないとわかった中納言は、いっそう気分が悪くなり、腰が折れて動けなくなってしまいました。
中納言は、こどもっぽいことをして、失敗したことを人に知られたくないと思っています。
それが病のもとになって、中納言はだんだんに衰弱してしまいました。
子安貝をとれなかったことより、他人がこの話を聞いて、どう思うかと気にしたのです。
かぐや姫 73 石上の中納言と燕の子安貝
「大丈夫ですか」
「意識は少しあるが、腰が痛くて動けない。でも、わしは子安貝をとったので、うれしい。とにかくあかりを持ってきてくれ。子安貝をみたい」
中納言が、手を広げてみると、子安貝ではなく、燕の古い糞でした。
中納言が、燕の古い糞をみて、「ああ、残念。子安貝ではなかった」といった時から、期待に反することを「かいなし」というようになりました。
かぐや姫 72 石上の中納言と燕の子安貝
家来たちはびっくりして、そばにかけ寄り、中納言をだきかかえました。
中納言は、白目をむいて倒れています。
家来たちは、水を飲ませました。
中納言が目をさましたので、やっとのおもいで、鼎の上から中納言を下へおろしました。
かぐや姫 71 石上の中納言と燕の子安貝
「とれたぞ。早く下におろしてくれ。じいさん、やったぜ」
家来たちは、中納言を早く下へおろそうとして、綱をぐいっとひきました。
ところが。綱をひきすぎて、綱がなくなった瞬間、中納言が八個の鼎の上に、あおむけに落ちてしまいました。
かぐや姫 70 石上の中納言と燕の子安貝
「わしが登って、巣をさぐろう」
中納言は籠に乗り、綱で吊りあげられ、燕の巣の中をのぞきました。
すると。
燕が尾を上へあげて、ぐるぐるとまわっています。
「よーし、子安貝をとるぞ」
中納言は、手を差し出し、巣の中をさぐりました。
手に、何か平たい物が触りました。
かぐや姫 69 石上の中納言と燕の子安貝
日が暮れたので、中納言は、例の大炊寮(おおいづかさ)へ行き、燕の巣をみました。
倉津麻呂が教えてくれたように、燕が尾を上にあげまわっています。
「燕が、卵を産むぞ」
中納言は、家来を荒かごに乗せ、綱で吊りあげました。
そして、巣の中に手を入れさぐらせたが、「何もありません」と家来が。
「おまえの探り方が悪い」
中納言は、腹をたてました。
かぐや姫 68 石上の中納言と燕の子安貝
そして、ひそかに大炊寮(おおいづかさ)に出掛け、家来たちの中に交じって、燕が卵を産むのを監視しました。
中納言は、倉津麻呂が燕の子安貝のとり方を教えてくれので、着ていた衣装を脱ぎ、倉津麻呂に褒美として与えました。
「夜になったら、もう一度、大炊寮(おおいづかさ)にきてくれ」
倉津麻呂を、いったん家に帰しました。
かぐや姫 67 石上の中納言と燕の子安貝
「燕が卵を産むかどうか、どうやったらわかるのか」
中納言が倉津麻呂に聞くと、
「燕が卵を産む時は、尾を高くあげ、七回回って卵を産み落とすそうです。だから、燕が七回回った時に、綱のついた荒籠を引き上げ、燕が卵を産んだ瞬間に、子安貝をとればいいのです」といいました。
それを聞いた中納言は、喜びました。
「かぐや姫」を連載しています。
中学生のみなさん・高校生のみなさんへ。
「かぐや姫」を読んでいただきたいと思います。
「かぐや姫」を押し、番号順に読んでくださいね。
かぐや姫 66 石上の中納言と燕の子安貝
中納言は、その老人に直接会い、子安貝をとる方法を聞きました。
「今やっている方法では、子安貝はとれません。高い足場に、二十人もの人が登っていては、燕が怖がって巣に帰ってきません。一刻も早く、高い足場を壊し、そこからみんな離れること。そして、一人だけを荒かごに乗せて座らせ、すぐ網をつりあげることができるように準備しておくこと。燕が卵を産もうとしている時に、その網をつりあげ、籠を上にあげて、さっと子安貝をとればいいのです」
「それはいい考えだ」
中納言は、高い足場を壊し、家来たちに邸へ帰ってくるように伝えました。
かぐや姫 65 石上の中納言と燕の子安貝
「燕の子安貝は、とれたか」
中納言は、使者を派遣して聞きました。
燕は、人がおおぜい登ってきて、巣をのぞいているので、巣に帰ってきません。
燕の様子を聞いた中納言は、「どうやったら、燕の子安貝をとることができるのか」と悩みました。
中納言が困っていると聞き、大炊寮(おおいづかさ)の倉津麻呂という老人が、「燕の子安貝をとるいい方法があります」といって、邸へやってきました。
かぐや姫 64 石上の中納言と燕の子安貝
「大炊寮(おおいづかさ)にある柱の穴に、燕がいくつも巣を作っている。家来を連れていき、足場を高くくみ、燕の巣をのぞけば、卵をうんでいるかどうかわかります」
すると、中納言が。
「そうか、いいことを聞いた」
中納言は、家来を二十人ほど、大炊寮(おおいづかさ)へ行かせました。
そして、高い足場を組み、家来たちに燕の見張りをさせました。
かぐや姫 63 石上の中納言と燕の子安貝
中納言石上磨足が、家来たちにいいました。
「燕が巣を作ったら、知らせなさい」
「何の為ですか」
「燕が持っている子安貝をとるためじゃ」
「燕を何羽殺しても、腹の中には子安貝など入っていません。燕が卵を産む時、どうやって子安貝とるのですか」
「燕は、人が巣に近づくと警戒しますよ」
かぐや姫 62 大伴御行大納言と龍の頸の玉
世間の人は、いいました。
「大伴の大納言さまは、龍の頸の玉をとってきたのかい」
「いや、玉などとってこない。それどころか、まなこに二つの李のような玉をつけて帰ってきたそうだよ」
「ああ、その李は、食べることができない」といったことから、世間の道理に合わない、常識はずれのことを「あな、堪えがた」というようになりました。
かぐや姫 61 大伴御行大納言と龍の頸の玉
大悪党のかぐや姫は、わしやわしの家来たちを殺そうとして、こんな難題をだしたのだ。今後は、かぐや姫の家へは近寄らない。おまえたちも、あのあたりを歩いてはならぬ」と。
大納言は、屋敷に残っていた財産を、帰ってきた家来たちに与えました。
大納言のうわさを聞いた元の奥方たちは、腹をかかえて笑いました。きれいな糸を使ってふかせた屋根は、鳶や烏が巣を作るために、全部くわえて持っていってしまいました。
かぐや姫 60 大伴御行大納言と龍の頸の玉
すると、大納言が起き上がり、いいました。
「おまえたち、龍の頸の玉など持ってこなくて、本当によかった。龍は、恐ろしい雷と同じ仲間だった。龍の頸の玉をとろうとして、わしのおおぜいの家来が、殺されかけたのだ。もしわしが、龍をつかまえていたら、龍に殺されていただろう。おまえたちが、龍をつかまえないでいてくれてほっとした。
かぐや姫 59 大伴御行大納言と龍の頸の玉
そのうわさをどこで聞いたのか、家来たちが次々に帰ってきました。
「龍の頸の玉をとることができなかったので、屋敷に帰ることができませんでした。でも、今は、龍の頸の玉をとることは困難なことだと、大納言さまもわかっただろうと思います。なんのおとがめもないだろうと思い、帰ってきました」
家来たちは、口々にいいました。
かぐや姫 58 大伴御行大納言と龍の頸の玉
松原にむしろをしき、大納言に船からおりるようにいいました。
大納言は、やっとのことで起き上がりました。
大納言は、重い風邪にかかった人のように、腹がぽっこりと膨らみ、両目はすももをつけたようになっていました。
その様子をみた国司は、にやにやしています。
大納言は、国府に命令して手輿を作らせ、うめきながら家に帰りました。
かぐや姫 57 大伴御行大納言と龍の頸の玉
三四日、順風が吹き、船を陸地につけることができました。
船頭が浜をみると、そこは播磨の明石の海岸でした。
大納言は、南海の浜に吹き寄せられたのだろうと思い、しょんぼりしています。
一緒に船に乗っていた家来が、国府に告げると、国司の播磨の守が、見舞いにきました。
大納言は起き上がることもできず、船底に寝ています。
かぐや姫 56 大伴御行大納言と龍の頸の玉
大納言は、立ったり座ったりして、千回位神様に祈りました。
祈りがきいたのか、やっと雷が鳴りやみました。
でも、まだ強い風が吹いています。
「やはり、龍のしわざだったのだ。今吹いている風は、よい方向に向かって吹いている」
大納言は、船頭のことばも、耳にはいらぬようでした。