去る4月15日、首相官邸において第34回男女共同参画会議が開かれ、「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」が公表された。「第3次計画」は来年度からの5年間にかかるものであり、今年中に策定される予定となっている。これに向けた「中間整理」は内閣府男女共同参画局のウェブサイトからダウンロードできる。また、これに対する意見の募集も行われている。
各紙速報記事等では、主にクォータ制など積極的修正、ワークライフバランスや労働条件の問題などに触れられていたが、他に性教育や性感染症、児童ポルノや表現規制問題まで内容は多岐に亘っており、各方面からの注目が求められていると言えるだろう。
「第7分野 高齢者、障害者、外国人など様々な困難を抱える人々が安心して暮らせる環境の整備」の下の「今後の目標」の中に、セクシャルマイノリティについての言及がある。
また、性的指向(異性愛、同性愛、両性愛)に関して困難を抱えている 場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要 である。
さらにその下「施策の基本的方向と具体的な取組」の「(4)貧困等様々な困難を抱える人々への対応」にも同様の記述があり、具体的な取組として以下の記述が加えられている。
女性であることで更に複合的な困難を抱える場合や性的指向に関して困難を抱えて いる場合などについて、可能なものについては実態の把握に努め、人権教育・啓発や 人権侵害の被害者の救済を進める。
「中間整理」はまた、近頃話題の表現規制問題についてもかなり触れている。「第8分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶」の「施策の基本的方向と具体的な取組」 - 「子どもに対する性暴力の根絶に向けた対策の推進」に以下の記述がある。
児童ポルノの根絶に向けて、国民運動の実施、インターネット上の流通防止対策 の推進や閲覧防止対策の検討等総合的な対策を検討・推進するとともに、児童ポ ルノ法の見直しや写真・映像と同程度に写実的な漫画・コンピュータグラフィックスに よるものの規制の在り方について検討する。
また同「第8分野」の「施策の〜」 - 「メディアにおける性・暴力表現への対応」の「塩飽の基本的方向」ならびに「具体的な取組」に、それぞれ以下の記述がある。
女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける表現は、 女性に対する人権侵害であり、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであ る。
女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象としたメディアにおける性・暴力表現 は、それ自体が「人権侵害」であるという観点から広報啓発を行うとともに、メディア・ リテラシー向上のための取組を推進する。
「第12分野 メディアにおける男女共同参画の推進」の下「今後の目標」にも同様の記述がある。
また、女性や子どもをも っぱら性的ないしは暴力行為の対象としたメディアの表現は、それ自体が「人権侵害」であ るという観点から啓発を行うとともに、メディア側の自主規制等の対策を働きかける。
「表現」自体が「人権侵害」であるとするのは相当踏み込んだものであり、注意を要する所だろう。
「中間整理」はこの他にも、様々な分野について触れている。下に「中間整理」の詳細な目次を付すので、ざっと見て気になる項目があれば、本文に当たった上で、意見があれば内閣府男女共同参画局へ送ってみて欲しい。意見募集の締切は5月12日である。
- 基本的考え方
- 目指すべき社会
- 最近の社会情勢についての認識
- 少子・高齢化社会の進展と人口減少社会の到来
- 経済の低迷と閉塞感の高まり
- 非正規労働者の増加と貧困・格差の拡大
- 国際化の進展と国際的な人の移動の増加
- 基本法施行後10年間の反省
- 第3次基本計画の策定に当たっての留意点
- 改めて強調すべき視点
- 女性の活躍による社会の活性化
- 男性にとっての男女共同参画
- 子どもにとっての男女共同参画
- 様々な困難を抱える人々への対応
- 女性に対するあらゆる暴力の根絶
- 地域における身近な男女共同参画の推進
- 喫緊の課題
- 分野や実施主体の特性等に応じた実効性のあるポジティブ・アクション(積極的改善措置)の推進
- より多様な生き方を可能にする社会システムの実現
- 雇用・セーフティネットの構築
- 推進体制の強化
- 重点分野
- 第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- これまでの施策の効果と、「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 施策の基本的方向
- 分野別の具体的な取組
- 第2分野 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
- これまでの施策の効果と、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し
- 国民的広がりを持った広報・啓発活動の展開
- 人権尊重の理念と法律・制度の理解促進及び救済・相談の充実
- 男女共同参画にかかわる調査研究、情報の収集・整備・提供
- 第3分野 男性、子どもにとっての男女共同参画計画
- これまでの施策の効果と、「男性にとっての男女共同参画」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 男性にとっての男女共同参画
- 男性の家庭・地域への参画
- 子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進と将来を見通した自己形成
- 子どもの健やかな成長と安全で安心な社会の実現
- 第4分野 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保
- これまでの施策の効果と、「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保対策の推進
- 非正規雇用における雇用環境の整備
- ポジティブ・アクションの推進
- 女性の能力発揮促進のための支援
- 多様な生き方、多様な能力の発揮を可能にするための支援
- M字カーブの解消に向けた取組の推進
- 第5分野 男女の仕事と生活の調和
- これまでの施策の効果と、「男女の仕事と生活の調和」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 仕事と生活の調和の実現
- 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実
- 妊娠中及び出産後の健康管理対策の推進
- 第6分野 活力ある農産漁村の実現に向けた男女共同参画の推進
- これまでの施策の効果と、「活力ある農産漁村の実現に向けた男女共同参画」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 意識改革と政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- 女性の経済的地位の向上と就業条件・環境の整備
- 女性が住みやすく活動しやすい環境づくり
- 第7分野 高齢者、障害者、外国人など様々な困難を抱える人々が安心して暮らせる環境の整備
- これまでの施策の効果と、「様々な困難を抱える人々が安心して暮らせる環境の整備」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 高齢者の自立した生活に対する支援
- 障害者の自立した生活の支援
- 外国人
- 貧困等様々な困難を抱える人々への対応
- 第8分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶
- これまでの施策の効果と、「女性に対するあらゆる暴力の根絶」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 女性に対する暴力の予防と根絶のための基盤づくり
- 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進
- 性犯罪への対策の推進
- 子どもに対する性暴力の根絶に向けた対策の推進
- 売買春への対策の推進
- 人身取引対策の推進
- セクシュアル・ハラスメント防止対策の推進
- メディアにおける性・暴力表現への対応
- 第9分野 生涯を通じた女性の健康支援
- これまでの施策の効果と、「生涯を通じた女性の健康支援」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 生涯を通じた男女の健康の保持増進
- 妊娠・出産等に関する健康支援
- 健康をおびやかす問題についての対策の推進
- HIV/エイズや、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を始めとする性感染症の予防から治療までの総合的な対策の推進
- 薬物乱用、喫煙・飲酒対策の推進
- 性差医療の推進
- 医療分野における女性の参画の拡大
- 生涯にわたるスポーツ活動の推進
- 第10分野 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
- これまでの施策の効果と、「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 男女平等を推進する教育・学習
- 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実
- 学校教育の分野における政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- 第11分野 科学技術・学術分野における男女共同参画
- これまでの施策の効果と、「科学技術・学術分野における男女共同参画」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 科学技術・学術分野における女性の参画の拡大
- 女性研究者の参画拡大に向けた環境づくり
- 女子学生・生徒の理工系分野の選択促進
- 第12分野 メディアにおける男女共同参画の推進
- これまでの施策の効果と、「メディアにおける男女共同参画の推進」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等
- 国の行政機関の作成する広報・出版物等における男女共同参画の視点に立った表現の促進
- メディア分野における女性の参画の拡大
- 第13分野 地域における男女共同参画の推進
- これまでの施策の効果と、「地域における男女共同参画の推進」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 地域における男女共同参画推進の基盤づくり
- 地域生活
- まちづくり・観光
- 防災
- 環境
- 第14分野 国際規範の尊重と国際社会の『平等・開発・平和』への貢献
- これまでの施策の効果と。「国際規範の尊重と国際社会の『平等・開発・平和』への貢献」が十分に進まなかった理由
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 国際的強調:条約等の積極的遵守・国内施策における実行・国内への周知
- 男女共同参画の視点に立った国際貢献
- 対外発信機能の強化
- 第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- 推進体制
- 今後の目標
- 施策の基本的方向と具体的な取組
- 国内本部機構(内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、男女共同参画会議、男女共同参画推進本部、男女共同参画推進連携会議)の強化
- 基本計画の実施状況や女子差別撤廃委員会最終見解等の実施状況についての監視・影響調査機能等の強化
- 地方公共団体や民間団体等における取組への支援(地方公共団体、国立女性教育会館、女性センター・男女共同参画センター、NPO、NGO、地縁団体、大学、企業、経済団体、労働組合等)
- 資料1 男女共同参画基本計画(第2次)における数値目標のフォローアップ
- 資料2 参考図表(関連データ)