昨年末に ThinkPad X60(希少な? Core Solo 搭載型)を置き換えるためのノートPCを探していて、Lenovo のアウトレットに ThinkPad X121e(AMD E-300/RAM2GB/Windows 7 Home Premium・開封済み新装整備品)というのが税込23310円で出ていたので購入した。TinkPad は今までに X21 と X60 を使っていた。それらと X121e を比べると、新品の標準的価格帯が違うわけで、どうなのかなあ、という不安と、まあ ThinkPad なんだろう、という期待が入り混じる中、12月19日、そいつはウチにやってきたのだった。

かなり良いです。

そんな感じで手にした X121e なのだが、実物に触れてみるとカッチリとした筐体で、打鍵をシッカリと受け止めてくれる安心感がある。X21 はすでに廃棄したので思い出との比較になってしまうが、キーボードは X60 よりは、全体に薄くなっただけ傾斜が弱くなった以外はずっと良い。画面も X60 よりずっと良いし、X21 の様にヒンジが割れることも今のところ無さそう。キーボードをガシガシ打つ気が出てくる雰囲気である。

OS どうでしょう

Windows 7 は前に IdeaPad S10-3 を買った直後の動作確認で一回だけ起動したのが唯一の体験だったのだが、改めて触ってみると、これは「Windows Vista SP3」であるべきだと思う。あの、性能を抑える代わりに低価格にしたミニノートが流行りだした時期に、あんなものを発売したのだから、そのくらいするのが妥当だったろう。


それはさておき、Windows 8 へのアップグレードが一月いっぱい1200円で購入できる権利が付いてきたので、1月6日にそれを入れてみた。この新しく発売されたバージョンの出来映えは、確かに OS としての基礎的なところではいくらかの改善が見られるものの、ユーザ・インターフェイスの設計は粗雑である。

スタートメニューを思い切って廃止したのは良いが、その内容はそのまま残っている。従来のスタートメニューは、プログラムが自動的に分類される様な仕組みがないため、項目数が増えると急激に使いにくくなるという欠点があった。そのため Vista では改善が試みられたが、表面的なものに過ぎず、内容はそのままだった。それが今回もそのままであり、新しい仕組みはなく、さらにはそれが画面いっぱいに展開されるために従来よりも早期に使いにくくなりそうである。

新しい UI 向けに作られたアプリはその必要がないものでも画面全体を占有するし、今のところ強力なプログラムは存在しない。しかし従来型のデスクトップアプリとの併用は煩わしい。デスクトップアプリのタイトルバーやボタンなど各種部品の形状や配色は変化したが、完成度が今ひとつで、しかもユーザが自分でそれらを調整する仕組みは貧弱なものしか用意されておらず、調整しにくいという点では XP の Luna や Vista/7 の Aero よりさらに悪化している。また新型と従来型の併行状態はどっちつかずで、開発者と利用者の両方を当面は混乱させるだろう。

だから Windows 8 は、従来の Windows OS を使い慣れているならば当面は更新しない方が良いだろう。尤もそれは Windows を主に使っているなら、ということで、私の様に GNU/Linux などの優れた OS を主用している人ならば、これを試してみることは、娯楽としては1200円という価格には充分みあうものだ。割引のある日に映画館に入る様なものである。

openSUSE をインストールします。

さて Windows 8 で一週間ほど遊んだらば、もう飽きてしまったので、いつもの様にいつもの如く、openSUSE をインストールすることにした。ただ手許にあるインストールディスクは X60 に導入するために焼いたもので 32bit 版なので、64bit プロセッサの能力を活かすため新しくインストールメディアを作る。今回は KDE 版 Live CD イメージから USB メモリを使って「Live USB stick」を作る方法を試してみた。現在つかっている環境に SUSE Studio Image Writer をインストールし、software.opensuse.org から CD イメージをダウンロード、PC に USB メモリを接続したら Image Writer を起動し、ISO ファイルと USB メモリを指定して[Write]ボタンを押すだけだ(参考:SDB:Live USB stick - openSUSE)。

こうして作成した Live USB stick を X121e に挿して電源を入れる。その際、F12 キーを押すと「Startup Device Menu」が開くので、該当する起動デバイスを選択すると USB メモリから openSUSE が起動する。デスクトップの Install アイコンからインストーラを開始できる。手順は通常のインストールディスクから行う場合と変わりないが、Live CD 版に収録されているパッケージの数は DVD より少ないので、い導入されるソフトウェアの構成は異なったものになる。そのためインストール時に日本語を選択しても通常の日本語環境にはならない。インストール完了後、YaST の「言語」設定の第二言語の欄で「日本語」にチェックを入れて[OK]ボタンを押すと、日本語関係のパッケージをまとめて導入してくれる(のだが、アプリケーションランチャーのカテゴリ名など一部が日本語にならなかった。割とどうでもいいところだけど)。

フリーかプロプライエタリか

私が購入した X121e は AMD E-300 APU なので、グラフィックチップは Radeon HD 6310 である。Linux では Radeon にはフリーの「radeon」と、AMD が配布しているプロプライエタリの「catalyst(fglrx)」の二種類のドライバがある。どちらを使うべきか? もちろん倫理的にはフリーソフトウェアが良い。しかし比較はしてみよう。

プロプライエタリの catalyst ドライバは、AMD のウェブサイトからも入手できるが、openSUSE 向けのパッケージもあり、これを使うと導入も削除も楽に出来る(参考:SDB:AMD fglrx - openSUSE)。そこからインストールして再起動すると一見して問題なさそうなのだが、使っているうちに困ったことにぶつかった。サスペンド/レジュームを繰り返していると、何度目かのレジューム時に画面が黒くなったままで、テキストコンソールに抜けることも出来なくなってしまうのだ。これはブートオプションなどをいくつか試してみたが、回避できなかった。

フリーの radeon ドライバは標準のインストールに含まれ、自動的に適用される。こちらでは安定したサスペンド/レジュームが出来る。ベンチマークなどはしていないので具体的にどの程度かは分からないが、描画性能は catalyst より劣る様だ。私には安定性の方が重要だということもあり、やはりフリーのドライバを使うことにした。

ハイバネーションは機能せず

サスペンド(スタンバイ/suspend to ram)は radeon ドライバを使った場合は問題なく機能するが、ハイバネーション(休止状態/suspend to disk)は働かない。ハイバネーションに入れようとすると、画面が黒くなったまま電源が落ちない。実は購入後にメモリを8GBに増やしていたので、ハイバネーションすることw考えてスワップパーティションを16GBも確保しておいたのだが、無駄になってしまった。解決策がないか検索してみたが、Debian をインストールした人もやはりハイバネできないよと書いている記事を見つけた(Installing Debian GNU/Linux on a Thinkpad X121e – Debian , debian , Thinkpad , install , Lenovo – Nicolas Kuttler)。

総評

ハイバネーションの問題はあるが、インストールと初期設定について特に記すべきことは他になく、X121e での openSUSE は総じて良い。

個人的 Linux 十周年

所有するマシンで GNU/Linux ディストリビューションを主に使う様になって10年ほどになる。メーカーがお膳立てを整えてくれるプリインストールの OS を使うのと違い、自分でそれをするということは、ハードウェアとの組み合わせによっては悩まされることもあるが、それだけの手応えを感じることができるのはフリーソフトウェアで構成された OS を使う理由の一つだ。そして、占有率の高さに胡座をかく Microsoft とは違い、Linux や他のフリー/オープンソースソフトウェアは常に進歩する力強さを感じさせてくれる。

10年ほど前といえば、産業技術総合研究所が KNOPPIX 日本語版を作り始めた頃で、月刊 UNIX USER がその CD を付録にしたときに私はそれを買い、Windows 98 がインストールされていたマシンで動かしてみた。CD から OS が起動するという事に驚き、OS が替わるだけで PC が輝いて見えることを覚え、KDE というデスクトップ環境の魅力に引き込まれた。GNU/Linux を使い続ける理由の一つは KDE だ。KDE もそれから随分と変わったが、今でも操作性や外観の柔軟性、特に配色が自由になることで私を満足させてくれる。

もしも OS が Windows しかなかったら、私は今の様には PC を使っていなかっただろう。Microsoft の経営の都合につきあうのは詰まらないことだからだ。プロプライエタリなものに囲まれては、果たして楽しめただろうか。優れたフリーソフトウェアと共に情報生活を送ることができるのは、とても幸せなことである。