10月17日、MS Windows 8.1 が一般公開された。Microsoft では、いくつもの改良をしたと宣伝している様だ。これがその鳴り物入りで発表された、目を見張る様な新しい OS なのか…。
Microsoft が一体どのくらいの改良をしたつもりなのかは分からないが、見える範囲では、変更点は Modern UI の方に集中している。デスクトップ環境では、帰ってきたスタートボタンが目に付くくらいで、それも以前の様なドギツい彩色ではないから、あの鬱陶しさが戻っていないのは良いことだろう。問題は Microsoft がデスクトップをこの先どう扱おうとしているのか、方向感がよく分からないことだ。
いわゆるパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットも含めた、パーソナル・コンピューティング機器の全体で見ると、Microsoft の存在感はここ数年で確実に低下している。PC の生産性が必要なかったり、活用しきれないと感じている人の中には、PC をタブレットに買い換えるということも起こり始めているのだろう。消費をするだけなら、その方が扱いやすいのだ。
だから、それらに対抗するものを…、ということで Modern UI が作られたのは分かる。しかし、Windows ストアアプリで、PC の強みである生産性を活かせる様になるのかはよく分からない。従来のデスクトップと Modern UI という並行的な世界観が、PC のパッケージを市場の中で魅力的なものにするのか、その逆の効果を持つのか。今回、Microsoft が「サービスパックではない」と強調して投入した 8.1 では、デスクトップ環境の碌な改善が見られなかった。
今後、デスクトップと Modern UI の統合を進めるのか、どちらか一つにするつもりなのか、その方向性は見えないままだ。この曖昧な状態が、Windows 8/8.1 を、何となく使いにくいものにしている様に感じられる。
ところで、GUI でマルチウィンドウを実現するには、「オーバーラップ方式」と「タイアップ方式」という二つの方式がかつて考案されていた。前者は Mac OS や X Windows System、それに MS Windows でも採用された、複数のウィンドウを重ね合わせることができる方式だ。後者はウィンドウを画面にタイル状に並べる方法だが、これは早くに廃れた。Modern UI とはタイアップ方式のウィンドウ・システムを今の技術で作り直したものであり、その面では Windows 8 という現象は興味深い実験であるとも言える。
さて、以前スタートメニューを腐したこともあるので、一応公平に評価すると、Windows 8.1 では、スタート画面のアプリ一覧に「使用頻度順」「カテゴリ順」などで並べ替える機能が追加された。これは、従来の方式と内部の互換性を保ったまま、使い勝手を本質的に改善したものであり、「どうしてこういうことを早くやらないのか」と思わせる、この一年で Windows にもたらされた、おそらく唯一のものだ。
日付が重なったのは偶然だろうが、17日には Ubuntu 13.10 も公開された。こちらは、Unity という先進的なデスクトップ環境を体験できるし、それが気に入らなければ KDE、GNOME、XFCE や他の優れたものと替えることもできる。この同日公開も一つの興味深い現象なのであった。