pulpdust.org に新しくウェブサイトを構築するにあたって、私はそのページデザインに少なくない時間を割いた。デザインという行為は、どんなデザインが最も良いものと考えるかによってその結果に大きな違いをもたらす。私は、デザインという行為が行われたことを読者に意識させないデザインが最も良いものだと考えている。そうした考えを基礎として、サイトの理念や目的、内容を織り込んで行くことになる。

もう一つのデザインの軸としては、どこに何があるのか分かりやすいデザインを目指した。特に、ルートのデザインでは、通常はページの最上部に置くサイト名を、やや曲芸的な手法だがサイドカラムの上部に縦置きになるようにした。これによって、ページが表示された瞬間にメインカラムが読者の目に飛び込む効果を狙った。誰も題字を読みに来るわけではないと思うし、読者にどこが主部なのかと一瞬でも思わせたくない。

デザインを行う上で、配色には今回最も頭を費やした。繰り返しになるが pulpdust.org は複数のブログで構成されている。ルート(最上層のブログ)について最初は旧サイトのような配色にしてみた。もとは大学ノートをモチーフとした配色である。しかししっくりこない。pulpdust.org はマルチユーザシステムを備えており、今は一人でやっているが可能性としては複数の執筆者を迎えられるようになっている。だから中のブログの一つを自分の好みの配色にするのはいいが、ルートについては可能性を含んだ彩色が必要だった。


デザインをはじめるときは、いろんなものを盛り込みたくなる。しかしそれではまとまらなくなる。そこで何が中心であり最低限必要なのかを追い極め、まずはそれだけが十分に実現されるように考える。こうしておけばすっきりしたデザインができるし、後からの機能追加や変更がしやすくなる。色についても同様の思考が有効になる。

ページの配色を考えながら私はサイトの理念を示す象徴として、ひしゃく型に連なった六色の星の画像を作った。この六色の光を全て重ねると白い光になる。そこでルートの配色は彩色するという考えを一切捨てて白地に黒とした。リンク文字列については通常は寒色、訪問済みリンクは暖色という考え方をとってみた。これだけではさっぱりしすぎなのでボーダーラインのスタイルや太さを工夫して印象的に、そして虹色の星を題字の下に添えて特徴を付けた。

リンク文字列の色はつい淡くしがちで読みづらくなることがあるので、気を付けて濃いめにしてみたもののまだ十分でないかも知れない。文字色といえば、近頃は文字と背景との色の差が小さくて読みにくいページを見ることがある。大手のブログホスティングサービスで用意されているデザインの中にそういうものがあるようだ。プロのデザイナーだろうに、と思うが、むしろプロだからそうなるのかも知れない。というのは、内容の読みやすさをウェブページの品質としてきちんと評価する仕組みがおそらく無いので、デザインを報酬で請け負う人ほどデザイン性を強調したくなるのかも知れない。

ウェブサイトの設計において、ページの外観を決めるという意味でのデザインは主役ではない。大事なのは内容であり、内容を読みやすくするためのデザインである。そして、環境が変わり続けるからにはデザインに終わりはない。ウェブサイトの運営を続ける以上いつでも原点に戻って考え直せるかどうかが問われることになる。