Linux やオープンソースの話題を中心に情報技術の動向を伝えるニュースサイト Open Tech Press より、社会運動体と情報技術、特にフリー/オープンソースソフトウェア(FOSS)の関わりを考える上で参考になりそうな記事を11本選び出してみた。
こんにち、多くの組織・団体にとって情報技術とどう関わるかは重要な課題となっている。それは社会運動体にとっても同じことであり、ことに FOSS はコスト、ライセンス、倫理などで社会運動体に適する面が多いと考えられるため、FOSS をどう利用するか、FOSS コミュニティと提携しうるかどうか、また彼らに需要を伝えて活動に有用なソフトウェアを獲得できるかどうかといったことが、活動の維持・拡大や活性化を考える上で意味を持つと考えられる。FOSS のプロジェクト運営の経験も参考になるはずだ。
Open Tech Press | FOSSコミュニティによく似た、学術分野における「オープンアクセス運動」
FOSS(フリー/オープンソースソフトウェア)は、学術的な自由という理念と、何ものにも妨げられることのない情報交換という理念とに端を発するものであり、もともと学界からの影響を色濃く受けた考え方だが、この5年間に渡り逆にFOSSから学界に影響を与えているという。FOSSは今や、学界における「オープンアクセス運動」のモデルにもなっているのだという。オープンアクセス運動は、研究者に対しても一般大衆に対しても学術的な資料を制限なく閲覧可能にすることを促進することを目的とした運動だ。
Open Tech Press | オープンアクセスとオープンソースを融合させたPublic Knowledge Project
Public Knowledge Project(PKP)は、テクノロジにおける2つの思想的トレンド ― 言わずと知れたフリーおよびオープンソースソフトウェア運動と、学術研究成果への無料オンラインアクセスの提供を目指すオープンアクセス運動 ― を融合したものである。その目的の達成に必要なソフトウェアツール群と支持活動とを結び付けることで、創設後9年で同プロジェクトはオンライン学術出版業界の一大勢力へと発展した。
Open Tech Press | オープンソースソフトウェアが活動家たちに注目されない理由
理屈のうえでは、フリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)には倫理的および社会的問題に携わる人々の関心に直接訴える力があって然るべきである。だが実情はかなり違っている。FOSSおよび活動家たちの両コミュニティが倫理的に共通の立場を取り、表現の自由に始まり、組合組織、消費者の権利やプライバシー、独占禁止法に至るまでの各種の社会的関心を共有することは多いのだが、この2つのグループはほとんどと言っていいほど互いに関心を示そうとしない。一体なぜだろうか。
Open Tech Press | FOSSのサポータは消費者運動家となるべきなのか?
解説:極めて当然のことながら、フリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)コミュニティのメンバは、自分たちが単なるソフトウェアやハードウェアの専門家の集団ではないことを自ら実証している。またこれらの人々は、己の仕事の品質に対するプライドと倫理観を共通にする仲間を代表し、自分たちの姿勢を明確化するという活動を積極的に行ってきた。いわゆるコンピュータオタクとしてステレオタイプ化されたイメージとは異なり、多くのメンバは自分たちが果たすべき責任を政治や社会活動の場に反映させてきたのだ。その一方で企業サイドの多くはFOSSに対するサポートをどうすべきかの態度を決しかねており、一部の企業はデジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)などの規制テクノロジの導入に傾きかけているという現状を鑑みると、今や必然的な次の一歩を踏み出す時が到来したのかもしれない。つまりFOSSのサポータが、消費者運動家として活動し始める時期のことだ。それは、企業や組織が世に送り出している製品やそれらの活動方針に対して、FOSSの倫理観を下にした吟味を行い、その結果を公式な賞賛なり非難として表明するという活動である。
-
オープンソースソフトウェアの方法論、原理、実践手法は、標準規格や情報収集など、ほかの領域にも採り入れられ、飲料および医療の業界でも同様の話が持ち上がっている。さらに、オープンソースの哲学は宗教にも存在する。それは、聖職者層から与えられた教義を受動的に受け入れるのではなく、内輪の秘密を持たず、皆が力を合わせて相互に受容と恩恵をもたらす教義を生み出す協力の思想といえよう。
Open Tech Press | フリーソフトウェアを陥れる罠
Free Software Foundation(FSF)は、常々、言葉の魔力を重く捉えてきた。このことを最もよく示しているのが、FSFが「GNU/Linux」という用語にこだわり、認知度を高めるために「フリーソフトウェア」という言葉を「オープンソース」と同じように重用していることだろう。現在、FSFは、デジタル著作権管理(DRM)テクノロジの危険性を世間に周知する運動の準備を進めており、反対派の意見が自然に信用を失ってしまうような形で論争に突入するやり方に疑問を呈し、奮闘を続けている。
Open Tech Press | FOSSコミュニティーと身体障害者ユーザとの相互理解の必要性
フリーおよびオープン・ソース・ソフトウェア(FOSS)の開発者およびその支援者達にとって、アクセシビリティーの確保は、ますますその重要度を高めている問題である。これまでもInternational Organization for Standardization (ISO)は、これらのソフトウェアが身体に障害を抱えるユーザでも利用できるよう、関連する標準の整備を進めてきた。また各国の政府からは、公的な利用を前提としたソフトウェアは最低限アクセシビリティーに関する標準を満たすか、あるいはより高い水準に達している必要があるべきだ、との要求がしばしば出されている。それにかかわらず、障害者ユーザとFOSSコミュニティーとは、相互理解の面で依然として大きな問題を抱え続けている。
Open Tech Press | 太鼓叩きの文化にもオープンソース問題
ぴんと張られた太鼓の皮へ奏者の全身から繰り出されるバチの動きは、鍵盤を叩く指の動きとは比べ物にならないほど優美で力強い。だが、北米の太鼓奏者とオープンソースソフトウェア開発者は、実は共通の問題に直面し、それに頭を悩ませている同志でもある。両者に共通する問題とは、特許であり、改良点の共有である。
Open Tech Press | プロプライエタリ・ソフトウェアに学ぶ新規ユーザー獲得法
最良のものが最大の人気を集めるとは限らない。品質の劣る製品が多くの、ときとして絶大な人気を博すのはよくあることだ。しかし、だからといって、市場の多くを獲得するために、品質の追求を犠牲にしなければならないわけではない。だから、オープンソース・ソフトウェアを支持する者として人気を求めたりプロプライエタリ開発者に学ぶことを忌避すべきではない。正しい例を参考にすれば、品質の追求を犠牲にすることなく、オープンソース・ソフトウェアの利用を促進できるのである。
Open Tech Press | オープンソース開発の社会構造
Andreas Brandは、ボランティアをインターネットで募ってチームに組織化する方法を研究する社会学者である。上下関係のない共同作業に基づいたオープンソース・プロジェクトの例として、KDEを研究している。調査の一部として、彼はKDEの開発チームにインタビューし、オープンソース・カンファレンスに7度参加し、KDEホームページを分析し、ボランティアにアンケートを配布した。KDE開発モデルについて、彼の見解を聞いた。
Open Tech Press | プロプライエタリな電子投票システムにまつわる疑惑
近頃、クローズドソースの電子投票システムに対し、疑いの目が多く向けられている。コードが非公開で、正しく集計されているかどうかを確認できないため、簡単に不正を働くことができるというのだ。