世間では亀田が話題だがここではそれについて語らない。問題は、よく知りもしないくせにプロレスを引き合いに出す奴がいることだ。曰く、プロレスまがいの、だとか、プロレスじゃないんだから、などと。

相手を持ち上げたりすることについて、ボクシングの用語で「レスリング行為」と呼ぶのはいい。これは単にボクシングのルールを表現しているだけだ。気に入らないのはプロレスを低く見て、プロレスではない、などと、亀田でも朝青龍の件でも新聞やラジオなどで言う奴がいた。これは全く正当でない。

例えばこの前、ラジオでだれかが「相手を持ち上げたり、サミングなどのプロレスまがいの」などと言っていた。サミングはプロレスでも反則である。確かにプロレスではサミングはヒールの技の定番になっている。だが、プロレスには「5カウント」がある。全てはプロレスの規則と慣習にのっとって、プロとして闘いを表現するために行っていることなのだ。

ところで、昔、TBS テレビが当時の新興団体である国際プロレスの放映権を得て、経験の浅いグレート草津をスターに仕立て上げようとしたことがあった。かつて力道山と名勝負を繰り広げた”鉄人”ルー・テーズとの試合に勝利させ、ベルトを奪わせようとしたのだ。ところが国際プロレス側がこれに納得しなかった。プロレスはそんな甘いもんじゃない。プロレスにはタネも仕掛けもある。だがプロレスは闘いだ。ルー・テーズはグレート草津を名人芸のバックドロップでマットに沈め、草津のセコンドに付いていたグレート東郷は彼をそのままノックダウンさせた。結果、TBS も国際プロレスも傷を負ったが、プロレスは誇りを勝ち取ったのだ。

だからプロレスには亀田と比べて低く見られるいわれはない。亀田は TBS の演出に乗ったが、プロレスは TBS と闘った。TBS テレビはあれから何十年も経ってもなにも学んでいないことについて、それからプロレスを不当におとしめた新聞記者なども、グレート草津さんに謝ってもらいたい。