イタリアに対する文化的劣勢の克服を願っていたドイツ人文学者たちにとって、デューラーは希望の星に映ったにちがいない。画家が共同体の名誉を高め、広く喧伝するに学者以上に有効な存在であることを彼等はイタリアにおける先例から熟知していた。彼等はデューラーに待望久しい文化的英雄としての可能性を看て取った。いまやデューラーの使命はイタリアにおいて己の技量を認めさせることにあったといえる。このような状況下の第二次イタリア旅行において、デューラーがどのように効果的に技量を誇示したのか、が本書の主たるテーマとなる。