保護の「客体」ないし「依存者」と見なされていた高齢女性が「主体」として生きることへの提言。
70年代末から続いた一人っ子政策は、中国の社会構造を大きく変えた。近代化路線と同時に始まったリプロダクションにおける強権の行使と黙認・容認、抵抗と打算、家族・労働の変化等々、生殖コントロールをめぐる実践の中で、女性は酷く傷ついたが、結果として、男性中心社会は大きく揺らぎつつある。「圧縮された近代」の隣人たちが経験した、リプロダクティブ・ヘルス&ライツの変貌を鋭く分析する。
困難な状況に置かれた人々を生み出す社会の矛盾に目を向け、当事者主体の支援を展開しながら、人々を抑圧する構造の変革をめざすソーシャルワーク。だが、その本質を失いかけているといわれて久しい。ソーシャルワークはなぜ視野を狭め、非政治化したのか。フェミニズムとジェンダーを通して、ソーシャルワークを批判的に検証し、その変革への糸口を示す。
竹中恵美子を知っていますか?竹中恵美子の「女性労働研究」に出会った人たちが、その出会いをどう受けとめ、自身の実践や人生にどのような影響を受けたのか、熱く語る。
人間を抑圧しつつ、それを隠蔽するもの。「帝国」は人種、ジェンダーなどによる見えない障壁、ヴェールを土台に自らを構成している。例えば黒人に貼りつく孤立や苦しみが、白人の側からは不可視のままになっているように。ヴェールに隠された人間の叫びに応答するための、ラディカルな幕開けの書。序文では、近現代世界史を再検証するために「人種資本主義」という概念を紹介・提案する。第1部ではアメリカ帝国の形成と人種とジェンダーの関わりを、第2部ではポストコロニアリズムの時代におけるジェンダーとセクシュアリティの問題を考察する。第3部では帝国日本に支配されていた東アジアの諸地域が戦後、新たな「帝国」へと再編されつつも、植民地主義の問題が根本的に清算されないまま現代に継続している問題を見つめる。
文学の側から男らしさを問う。オルタナティブなものが存立する可能性に目を向けようとはせずに特定の規範を押し付けてくる社会への抵抗の書。ミドルクラスの白人で異性愛の男という地位への抗い。男らしさの諸相を描き続け、男らしさを覇権的な理念に固定させまいとした作家への新照射。
組織の中の個人、個人と組織との関係性、そして個人の集合としての集団。日進月歩で進化するミクロレベルの組織論から、7つの重要トピックを抽出し、さらに文献レビューの考え方についての論考も掲載。組織と個人のマネジメントへの多角的な示唆に富む一冊。
サイケデリック・カルチャーとリンクしてブリティッシュ・ロックが大きな変容を見せた60年代後半、従来の商業的なロック・バンドとは一線を画す、より自由な表現を模索する一群が出現。アンダーグラウンドで独自のシーンを形成していった。その人脈は70年代後半に勃興するパンク・ロックまで途切れることなく続き、多くのフォロワーを生んでいる。本書は日本で大きく取り上げられることがなかったこのシーンを、初めて網羅的に紹介。作品解説はもちろん、当事者たちや彼らの影響下にあるパンク勢へのインタビューも盛り込み、その実態を浮き彫りにする。
鏡像自己認知テストから鏡像段階、ミラーニューロンまで。18世紀後半以降、人間を人間たらしめるものは何かという疑問に答えるため、精神医学・発達心理学・サイバネティックス・文化人類学・神経科学を専門とする研究者たちは人間、動物、そしてロボットまでを鏡の前に立たせ、自己認識について探ろうとしてきた。それらの研究は人間の独自性を解明することができたのだろうか。知られざる自己認知の歴史を、気鋭の科学史家が描く。
10代から50代まで、職業も人種もジェンダー表現もさまざまなノンバイナリーたちが、自身を率直に語る回想録。
マルチスピーシーズ物語の森へ。人間と動物を対立させる価値観を退け、ポストヒューマンやクィアの思想を取り込みながら、動物表象に潜むジェンダー力学を浮き彫りにする。動物や人間、精霊やウイルスをめぐる物語の森に分け入り、マルチスピーシーズとジェンダーという複合的な視野で作品の可能性を浮上させる。