女はやさしく、男は強い。このような男女差に対する意識はなぜ生まれ、どのようにして人びとの心のなかに定着するのか。人はいったん思いこむと、それに従って人を観察したり、ふさわしいようにふるまったりする。その思いこみ-ステレオタイプをキーワードに、法や制度を整えても、なぜ伝統的な性別分業社会は、人びとの意識の上からなくならないのかを、社会心理学の立場からときあかす。
女性の「内なる差異」の追究から共存的フェミニズムへの道をひらく。
性同一性障害者の性転換手術やセクハラをはじめセクシュアリティに関するさまざまな事柄が、これからの社会問題としてさらに深く問い直されている。本書は、アンドロジニー概念およびその測定尺度BSRIの提唱者であり、ジェンダーの心理学的研究の指導的理論家である著者が、人間社会の過去そして将来におけるジェンダーのありようをジェンダー・フリー社会の構築をその基に据え考察する。人間の認知のあり方のなかに潜む問題性を、その機能である「生物学至上主義」「男性中心主義」「ジェンダー両極化」の3つの“レンズ”として指摘し、個人がいかにジェンダー化されていくのかについて“文化化されたレンズ”理論へと展開していくとともに、現実的・実践的な問題にも言及していく。全米出版社協会による1993年度心理学部門the Best New Bookの栄誉に輝く書の訳出。
「生まれもった自分の身体は間違っている」という苦悩や、社会のなかで他人の好奇の目と闘わざるをえない状況-。それを救うために性同一性障害が医療の対象として認められたのは、日本ではつい最近のことだ。著者が女体から男体への性別再指定手術を受けて以来、第二の故郷となったサンフランシスコ。そこではトランスジェンダーたちが、自分のあるべき性で生きる喜びをかみしめつつ、支えあい、ヘイト・クライム(差別犯罪)と闘っている。本書は、同人誌「FTM日本」をはじめとする多くの文筆活動や講演活動が認められ、FTM(FEMALE TO MALE)全米会議で功労賞を受賞した著者のサンフランシスコ交友録である。性的少数派のプライドを示すシンボル、虹色の旗がはためく街が生き生きと描かれる。
本書の焦点は、セックスと政治経済の特定の関係、つまり、労働における性的分業である。それは社会の中で、性を基準としてどのように仕事が割り振られるかということである。性的分業は、単に仕事の区分だけではなく、男女に与えられる価値、地位、権力の差異でもある。それは経済的な分類であり、政治的な区分でもある。本書は、性的分業を社会生活の多様な局面や、都市や地方、家族や政府、資産取引、商業、テクノロジーというさまざまな形態において検討している。特に注意が向けられているのは、フィリピン女性の経験である。
ジェンダーの視点による初の国際関係論。大国、男性中心の歪んだジェンダー関係の中で作り上げられてきた「国際関係論」を根本的に問いなおす。国際家族計画連盟(IPPF:国際非政府組織)と国際労働機関(ILO:政府間国際組織)の歴史を検証し、国際的なジェンダー関係の未来を呈示。
明治後期から高度成長期に至る、女性事務職の「意味」の変遷。職場に「男女の差異」を見い出す視点の生成を具体的に追求する。
本書は、カナダに住む日系人の調査の記録であり、日本の村からカナダへ渡った人々の三世代の文化葛藤や文化変遷を含めた文化変容についての調査研究である。第10回(1999年)カナダ首相出版賞受賞。
メディア環境の変化が社会生活に及ぼす影響の検証を試みた論考をまとめる。第1章では、とくにインターネット広告に焦点をあて、それが持つ斬新性と将来的可能性を分析。第2章では、電子新聞を取り上げ、そのニュース・メディアとしての価値・意義と活字新聞との共存性について論じている。第3章では、情報化の進展、とくにパソコン普及がジェンダー格差に及ぼす影響を検討。第4章では、戦後からの情報化の歴史を振り返り、情報化が家族のあり方に及ぼすインパクトを考察する。そして第5章では、現代における流行現象の様相を再検討した上で、新しいメディアによって変容しつつある流行現象の行く末に考察をめぐらせている。
男女共同参画社会をめざして。転換期に立つ現代社会をどう変えていくのか。ジェンダーに敏感な視点に立ち、現状のジェンダー・バイアス是正を目的とする、学際的かつ実践的な学問としてのジェンダー学からの考察。
冷戦後の世界はどう変わったのか、新自由主義的開発論は発展途上国に何をもたらしたか、21世紀を切りひらく開発の道とは-。
「自立」して生きるために、苦学で手にした税理士資格。税理士業務の中で、子育ての中で、市民活動の中で、芽生えた一つ一つの疑問が、ジェンダーの問題という大きな渦になった。
“社会的・文化的”性差という概念は、文学の読みに変容をもたらしたのか?作品批評を通してその可能性を探る。
女が主役、男は脇役=広告の世界。現実社会でも女たちは、主役だろうか。-広告から戦後の女と男のありようをとらえ、そこに投影された時代の意識とそれが意味するものをよむ。
家庭内では出産・育児を引きうけ、また劣等であるがゆえ社会から遠ざけられ、さらに、男をたぶらかす悪者とされてきた、物言わぬ「女」たち。彼女らがどのようにとらえられ、表象されてきたか-その波瀾万丈な変遷を丹念にたどる新しい美術史。
社会政策という政策領域を雇用と社会保障分野の両方におき、それぞれの領域での男女の関係、とりわけ女性がどのように位置付けられてきたかを歴史的に検討してゆく。