男女平等や性の自己決定、それらを支える社会制度の設計を推進してきた概念であるジェンダーに対して、誤解や曲解に基づく攻撃=バックラッシュが全国で巻き起こっている。「男らしさ/女らしさ」を基盤に、性別役割の非対称な権力構造を固定化させるのが狙いである。これに反撃するシンポジウムには、江原由美子や井上輝子、若桑みどりら研究者を筆頭に、学校教員・弁護士・政治家・女性団体・市民が集まり、バックラッシュの現状を報告しあい、概念としてのジェンダーをめぐる徹底討論がおこなわれた。その成果をもとに、上野千鶴子や鶴田敦子、加納実紀代、舘かおるらも寄稿し、バックラッシュの反動性を批判し、ジェンダー概念の深化をさぐる。
“社会的・文化的”性差という概念は、文学の読みに変容をもたらしたのか?作品批評を通してその可能性を探る。
ジェンダー法律学を様々な分野から考案した入門テキスト。スタンダードな立場から統計資料や図、表などを使い解説。さらに学習を深めたい人のために参考文献を掲載。最新の法改正や統計情報の変更にあわせて改訂。
制度化された「労働」の批判。家事労働からセックスワークまで、労働のなかの“女/男”をジェンダーの視点から分析する制度・言説・表象の政治学。
私的領域と公的領域においていまだ継続する男女間の不平等。福祉国家はこのジェンダー関係をどのように形成してきたのか。本書は、欧米の8か国を取り上げ、ケア・仕事・福祉(制度)という3つの観点から、ジェンダーと福祉国家間の因果関係を理論的、実証的に解き明かしていく。
「性差」や「文化的・社会的性」と訳されるジェンダー。その概念が日本に導入された際の困難を辿り、ジェンダー史成立までを描く。研究をリードしてきた著者の多彩な成果を集めた、ジェンダー史を学ぶ人々に贈る必読の書。
刑事手続における被疑者・被告人の適正手続の保障に反することなく被害者の安全と権利は如何に守ることができるのか。米国DV防止法・加害者逮捕政策をもとに「配偶者暴力防止法」改正を考える。
西欧における日本女性のイメージはいかにして形成されたかー。ロティの『お菊さん』、ロング、ベラスコ、プッチーニの『蝶々夫人』を、サイードが指摘する「再構成と繰り返し」の過程として読み直し、レーヴェン『バタフライ』における自己相対化の手法、ウォン『M・バタフライ』における異性装のパフォーマンスにジェンダーの本質と模倣の構造を探る。
敗戦から新たな戦前へ。8・15から「慰安婦」・教科書・女性兵士問題まで、戦後60年をジェンダーの視点で読み解く。
男女共同参画社会基本法が制定され、実質的な男女平等の実現が政策課題になっている。しかし社会規範である制度は、性別分業意識でジェンダー化されていると言わざるを得ない。本書では、その諸制度をジェンダー問題解消の視点から検討し、そのあるべき姿を再構築するための提言を試みている。
現代福祉国家の諸制度-賃金、税制、社会保障制度等に組み込まれた女性の自律を阻む不平等要因を、諸福祉国家の比較研究に基づき鋭利に摘出するとともに、その背景をなす男女役割分業思想が今なお強固な日本において、国際条約や諸国家の前進的成果を足掛かりに、独自の視角からジェンダー平等を推進する、新たな戦略構築の基盤を追求した、著者の遺著。
雄々しい男性の理想像を体現した作家という固定観念を打破し、ヘミングウェイの初期と後期の作品の興味の中心が同性愛、性の役割の交換、異種混交にあったことを明らかにした画期的な研究書。