さまざまな場で起動する「男子基準」、性別(間の/内に)ステレオタイプな分化を促すシステム、知に潜むジェンダー・バイアス、機会と選択の壁ー教育と研究の場はいかに変わりうるか。性や家族を問い直す知への逆風や、制度化と格差のジレンマに地道に向き合う実践と省察。
シュルレアリスムの巨星マックス・エルンストとともに過ごした30余年。女流画家ドロテア・タニングが自ら語る、二人の愛と芸術。
ソビエトで生まれ、パリで画家、デザイナーとして活躍したソニア・ドローネ。夫・ロベールを取り巻く画家、詩人たちとの華やかな交流。ソニアの膨大な日記をもとにした書き下ろし。
美術における政治性、特にフェミニズムの視点から捉えた鋭い論評で美術史界の流れを変えた気鋭の美術評論家リンダ・ノックリンの、19世紀絵画についての私激的論文集。
古いケルト族の神話と民話、魔女伝説に魅せられて特異なイメージを表現する画家レオノーラ・キャリントン。インタヴューをまじえた。
フェミニズムとしての女性史研究は、性差を構築し内面化させる「近代」そのものを問い直す実践である。それは「近代」というストーリーを補強する制度的な知としての「歴史学」への鋭い問いでもある。その視座と方法をめぐる提起と議論、実践としての地域女性史研究、聞き書き、近代がもたらした排除と分断のプロセスの分析を紹介。問いかける側のリアリティをも揺るがしつつ紡がれた成果である。
メディアは、メッセージとともに既存の力関係も流通・補強しつつ、「意味をめぐる闘争」の場となるー発信の場からの排除や表現における差別は、構造的な歪みを可視化させ、「女性向け」商品は、受け手の能動的な読み替えで、新たな市場や回路も拓くー。カルチュラル・スタディーズや構築主義以降、メディアのジェンダー分析の新たな到達点も紹介。
妊娠や出産、育児は決して「自然の営み」ではない。育児負担の歪みがもたらす少子社会、出産の医療化の果ての産科医不足、テクノロジーが揺るがす生命観・家族観、生殖や再生産労働の商品化がひろげるグローバルな格差。フェミニズムの試金石でもありつづける〈母性〉=近代の性と生殖をめぐる危機の現在を見渡す論集。
人種差別、経済的搾取、軍国主義、環境破壊など、グローバルなレベルで社会正義と民主主義に反するプロジェクトを推し進める近代西洋科学への論争の書。客観性、合理性、価値中立性、真理…科学の中心的概念から科学と権力の共謀関係を問う。
若い女、中年の女、母親、主婦…孤立させられた女たちが声をあげたリブ。制度や意識の変化を経ても、性愛から老いまで、いまだ「名前のない問題」と向き合い生き抜く思想は終わらない。「女であること」と格闘し掴み取られて来たひとつひとつの価値を、手渡す/受け取るというセカンドステージへ。
本書は、「政治」をどのように考えるかという問題を、政治学の知見を踏まえて真剣に扱うことにより、「政治」をめぐるフェミニズムの理論的考察に新しい知見を提示する。公/私の境界線、国家・社会・家族の関係、「男性のケア」などへの注目を通して、政治学の中心問題に「フェミニズム」をすえるとともに、「女性問題」ではないジェンダー平等を展望する。
「母」「主婦」…「女」役割の固定化の構造を解読し、解放をめざしてきた女性学のメインテーマ、性役割研究。共働きの増大や非婚・少子化の進むいま、雇用やケアをめぐって、性別役割分業が再編成されているー70〜80年代から現在まで蓄積された研究成果が、この社会のジェンダー力学をより鮮明に浮き彫りにする。フェミニズムの根本課題は、まだ大きい。
「国家」と「わたし」の関係はどうあるべきか。過去のシティズンシップ(「市民権」)論、主にリベラリズムの議論を批判的に再検討しながら、「平等で自由な人格」がよりよく尊重されるための新たな理念を構想する。いかなる者の視点をも排除しない可能性を秘めたフェミニズム・シティズンシップ論につづき、誰かに依存せざるを得ない存在であるわたしたちにとって不可欠の「ケア関係」に着目した章を増補。本書は、「シティズンシップ」論入門として最適であると同時に、社会科学の新局面をひらく挑戦の書である。
女性の政治・経済参画は先進国中で依然低く、男女賃金格差も突出する日本。女をあらかじめ劣位に置く権力ーとくに雇用や社会政策など生活を決定する多様な権力の分析は、問題の発見と理論化、実証分析の蓄積へと、フェミニズムの運動/研究の両方の実践が切り開いた。その軌跡と現在の位置を指し示す格好の文献を紹介。
文化的・社会的に構築されたセクシュアリティは、現在どこまで揺らいだか。排他的で抑圧的な異性愛規範を踏み破り、自らのセクシュアリティを選択する人、性暴力被害の当事者、性産業で働く人の声が制度や法を動かし始めた。これまで聞かれることのなかった多様な声を収録。
社会構築主義のインパクト、多様性の承認。バックラッシュと新自由主義、「女性の貧困化」。社会理論がその方向性を見定めがたく彷徨する間に、ひとびとの身体・生命はグローバルな取引の激流に投げ出された。フェミニズムは近代リベラリズムの何を乗り越えるのか。ジェンダーの壁を越えた承認と再分配の理論構築へ、丹念に積み重ねられた論考を紹介。
フェミニズム運動史・思想史の原点である第一波のダイナミックな展開を膨大な資料を駆使して追求する。その全体像の解明。