本書では、何よりも住民自治の強化という視点から、大都市から中山間地域にいたる多様な地域類型ごとの具体的な事例を紹介・分析することにより、地域自治組織の可能性と限界について明らかにしていく。その際、今回法制化された地域自治組織という狭義の地域組織に限定せず、法には基づかないものの基礎自治体の団体自治及び住民自治のあり方に能動的な影響を及ぼす住民自治組織にも視野を広げることにする。
本書が対象とする地域は、マラッカ海峡からイリアンジャヤ(西パプア)までの広大な熱帯の海域に分布する島々の連なりである。これらの島々の多くは、現在インドネシアの国土に含まれている。人びとは、それをタナ・アイル(tanah air)という言葉で表現する。タナとは大地を、アイルとは水を意味し、大地と河川や海が一体となった空間を表している。多くの島々と内海が織り成すこの世界は、さまざまなエスニックグループに含まれる、二億人以上の人びとの生活世界である。海が島と島を隔てる壁ではなく、島と島を結ぶ道として機能してきたこの地域では、人びとが頻繁に移動し、分散しながら結びつく、ネットワーク型の社会を形成してきた。海とかかわって生きる人びとを海民と呼べば、海民の海とのかかわり方は、生活の場であったり、移動や交易の場であったり、漁業という生産の場であったりする。かつて、あるいは現在でも、海賊という名の生業さえあり得る海だ。しかも、この地域では一人の人間が同時に、漁民であり、農民であり、交易民であったりする。本書は、そうした多様な面を持つ人びととその社会へのアプローチとして、海を生産の場とする「漁民」から接近するものである。
経済のグローバル化、少子高齢化。生活・福祉領域における新たな課題の克服をどこに求めるか。地域コミュニティに目を向け、新しい協同組織との連携を視野に展望。
本書は、地域産業の活性化や情報通信等ニュービジネスの振興などによる魅力ある就業の場の確保と、いきいきと住み、憩い、学べる環境の創出を目指した、新たな国土・地域のあり方についての取り組みの基本的方向をとりまとめたものです。
「開発教育」は、従来は「北」の市民を対象に、南北問題をはじめとする地球規模の諸問題についての理解を深め、解決のために参加し行動する態度を養成する教育活動として描かれてきた。本書は、この解釈そのものをめぐる近年の多様な議論も紹介しつつ、開発教育の未来像を私たち自身の「地域」から問い直そうとするものである。
大分県国東半島に位置する六郷山地域。中世社会における六郷満山の成立と、近世から現代にまで及ぶ歴史的変遷過程を明らかにし、「山」の開発と信仰の態様・政治的支配などを、総合的に検討する。
本書は東北大学大学院医学系研究科地域医療システム学(宮城県)寄附講座が開催した4回の地域医療に関するシンポジウムの第2回から第4回までの分を記録集としてまとめたものである。
人類誕生の地、アフリカ。その始原から二一世紀に至る長大な歴史のうち、私たちは何を知っているだろうか。狩猟採集民の社会からポストコロニアルまで、アフリカ大陸諸地域の歴史的展開を、多様な文字史料とオーラル史料を駆使して概観する。解放の思想やジェンダーにも注目した野心的構成。
本書は、次世代を担う子どもたちを大切に育んでいくために、子どもと家庭を地域社会全体で支えていくことに主眼を置いている。保育所、児童福祉施設、NPOを拠点として子育て支援に従事する4人の実践者および研究者によって、子育て・子育ちを地域で支える取り組みの方向性や具体的な方法について、実践例を交えながら論じている。地域の子育て支援に携わる可能性のある専門職(保育士、保健師、教員、児童指導員、児童厚生員など)はもとより、NPO活動家やボランティアとして子育てに携わる実践者、さらにはそれらの仕事を志す学生のための基本の書。
本書は、「私」を基点に捉えることで、身近な私たちの暮らしの中で、ごく自然に地域福祉について考え、実践できる斬新な「視座」を提示している。ルーマンやハーバーマスなどの社会科学の理論を応用した多角的な論考を通じて、「コミュニティ」を「私たちづくり」という観点から再解釈し、住民による福祉活動や各種の専門職による実践をより充実させたり、これから活動してみようとしてる人たちを後押しする「実践」のための書であり、地域福祉の新たな地平を切り拓く「理論」書でもある。「私」と地域の「つながり」を把握しやすくなる一冊。
肥後細川家などの国持大名クラスの領国に成立し、藩政と対応しながら展開される百姓的な政治社会を指す「領国地域社会」。熊本藩伝来の「永青文庫細川家文書」を駆使して、一七世紀から転換期としての宝暦改革前後、さらに幕末維新期まで、二〇〇年以上に及ぶ領国地域社会の展開過程を一一本の論考により追究し、日本近世社会の特質を分析する。
人々が住み慣れた地域で、親しい人々に囲まれながら、充実した医療・ケアを享受できる社会、それが本書の提案する「地域包括ケア」システムである。本書は、社会保障・税一体改革、多職種協働体制の確立と人材育成、中央地方・官民の連携のあり方など重要課題を考察し、高齢社会・日本の新たな姿を描く。