親と子をむすぶ心のぬくもりの中で育くまれてきた昔話の数かず-昔話の第1級の語り手である笠原政雄さんは、雪深い山里で、お母さんからたくさんの話を聞いて育った。以来60年、昔話は彼のからだの中に蓄えられ、育くまれ、語り出されてきた…。その珠玉の昔話の数かずを紹介する昔話集と、昔話の伝承と語り手の形成に光をあてる、回想記とをあわせて、いま昔話の世界の全体像がここに明らかにされる。
古来から、木と人間のかかわりは深い。したたるような緑の海のあるところにはどこにでも、地をはうようにして木々を植え、守り、育て、伐り、運び、流してきた無数の人々の汗と息づかいが、喜びや悲しみがある。本書は、木と人間の共生のドラマを、人々の労働を通して語ろうとするものである。
本書は、九州の若松に育った著者の三歳から小学校卒業のころまでの小宇宙を、達者な絵と文章を駆使してつづった少年記である。子どもの眼と精神がとらえた子どもの宇宙は、時と場所をこえて輝きわたる。原っぱには光があふれ、さわやかな風が吹きわたっていた。貧しくとも快活さを失わなかった戦前の子どもたちの豊かな宇宙が、47枚の絵となり、47の短編となって余すところなくうつしだされる。
身の回りをとりかこむ“できあいのモノ”や“おしきせの生き方”を振り捨て、そぎ落とし、あくまで、本源の自分を求めて生きようと苦闘する青年の熱き青春の記。少年少女から大人まで。
31年間にわたる国外追放に屈せず、「希望と決意と歌と」を胸に、アフリカの魂を全身で表現しながら歌いつづけてきた〈ママ・アフリカ〉ミリアム・マケバ。ひとりの女性のひたむきな半生の向こうに、アフリカの現代史が、そしてアフリカの大地に生きる人々の想いが、くっきりと浮かびあがる。
広い土地で百姓がしたい。貧農の長男に生まれた由五郎は、満蒙、国内、そして南米パラグアイでの開拓と、一生のあいだ過酷な開拓に挑みつづけた。開拓の夢を追って走りつづけたもうひとりの男の生涯を、綿密な聞き書きと著者の記憶とで蘇らせ、昭和の開拓史の薄明の部分に内側から光を当てる。
戦時色一色にぬりつぶされた時代も、少年であった「ぼく」には二度とないかけがえのない時であり、忘れがたい人との出会いがあり、別れがあり、喜びがあり、悲しみがあった。
ヒマラヤ山麓の峠から峠をトレッキングした若者が出会ったのは、辺境の地に暮らす人びとの素朴な心だった。習慣や価値観のちがいに戸惑いながらも、胸を熱くして歩いた旅の記録。
ここに、ぼくの居場所はあるんだろうか?…。みなしごになったオリヴィエは、裕福な伯父夫婦のもとに引き取られた。知らない街、新しい家族の中で、一歩一歩手さぐりの暮らしが始まる。懐かしいラバ通りの光を、心に抱いて。
父母が生まれ、育ち、結ばれたソーグの村-そこは光と水と風と生き物たちが躍る、ゆたかなひとつの「国」だった。オリヴィエは心と体をいっぱいに解き放って、美しくみずみずしい大地に触れ、温かな人々の懐にとびこんでいく。