「ささがね」という蜘蛛に掛かる枕詞がある。この枕詞は語義不詳とされ、時代が降るにしたがって、蜘蛛の異称と考えられるようになった。しかし、タミル語でこれを解釈すると、実に適切な意味があぶり出される。本書は古典に残るこれらの未詳語を中心に、タミル語でこれを解釈すると、いかに合理的に理解できるかを指摘したものである。
銀座で見かけた妖艶な和服美人の後を迫って着物の展示会に迷い込んだ伊集院大介。彼女の依頼で「幻の友禅」を探すことになる。そんな折、熱心な着物コレクターが惨殺される。謎の美女、激しく対立する着物作家兄弟、連続する殺人…。事件の輪郭すらつかめない伊集院は惑い、悩む。大人気シリーズ第14弾。
食べなければ生きてゆけぬというあたりまえの条理をやや苦みを帯びた虚無とともに噛みしめて生きているということ自体、虚無なのかもしれない。そんなことを考えながら、蜘蛛は目を閉じた。葭切の鳴く蘆の茂る水辺で食うか食われるか、卑小な昆虫や小動物たちが蠢くもうひとつの世界というトポス。
彫刻家・遠野公彦。独身、四十二歳。頭髪と体型に少々の難あれど、相続資産あり。そんな遠野に巡ってきた、千載一遇のモテモテチャンス。だが、ひょんなミスをしたことが運の尽き。艱難辛苦、抱腹絶倒、めくるめく夜の迷走劇がはじまったー(表題作「蜘蛛の糸」)。他、しょうもなさ天井知らずの男たちを濃厚に描いた全七編。
戦後の日本クラシック界を代表する作曲家のひとりだった芥川の中期から後期にかけての管弦楽作品集。前衛的・実験的作風から、彼自身の本質的な嗜好にも沿った都会的でスマートなリリシズムの復活への橋渡しをはたしている点にも大きく興味をひかれる。
豊かな自然に包まれたカナダの大都会バンクーバー。出張捜査でかの地を踏んだ薬師寺涼子警視は、高圧的な外交官僚を挨拶代わりにおシオキする。続いてハリウッドの超大物プロデューサーから女優としてスカウトされたお涼サマ。ウジャウジャ出てくる悪役相手に、演技ではないスーパー・アクションで戦闘開始。
美濃郡上で宿敵・横山佐十郎との決戦を制した音無黙兵衛こと菅郷四郎は、伊之助を伴い、東海道を西に向かった。目的地は、京か奈良か。その行く手を総がかりで阻もうとする伊賀者たち。さらに、謎の幻術師の魔手が忍び寄る。はたして危地は乗り越えられるのか。書き下ろしシリーズ、第二部開幕。
松本清張、島田荘司、有栖川有栖、北村薫、東野圭吾、綾辻行人、法月綸太郎、京極夏彦、高田崇史、殊能将之、舞城王太郎、西尾維新…連綿と連なるミステリーの系譜を、鋭利にそして流麗に斬る。京大ミステリー研にこの人ありと言われた伝説のカリスマ・巽昌章、初のミステリー評論集。
深夜零時。土砂降りのなか飲酒運転していた弁護士フランクは、酔いと仕事への鬱憤から激情に駆られ、自分のBMWをエクスプローラーに追突させる。それにより夫とおなかの子供の命を奪われたFBI捜査官チャーリーは、捜査担当をはずされても犯人を追う。追いつめられたフランクは、狂った糸に操られるように凶行を繰り返し…名手がフロリダを舞台に描く狂熱のサスペンス。