というわけで前回『Lenovo IdeaPad S10-3 でイヤッホウ』からの続きです。

IdeaPad S10-3 について

一口に IdeaPad S10-3 といっても細かい仕様違いの製品が何種類か存在します。

2010年2月16日発表
064792J/064793J/064796J/064797J
2010年5月25日発表
06479HJ/06479JJ
2010年6月22日発表
0647ASJ/06479ZJ
2010年7月21日発表
0647AVJ
2010年9月14日発表
0647AQJ

注意すべき違いは、2月16日と5月25日に発表されたものは CPU が Atom N450 だったのがそれ以降は Atom N455 となり、メモリは前者が PC2-5300 DDR2 SDRAM だったのが後者は PC3-10600 DDR3 SDRAM になっているという点。ややこしいのが付属の説明書は各種共通で更新されていないらしく、仕様表は「予告なく変更される場合がある」旨の注記つきで、今回購入したもののそれにはメモリは「DDR II SO-DIMM」だと記されている。交換用のメモリを購入する際は、Lenovo のウェブサイトにある製品情報で正確な仕様を確認した方がよい。いずれにしても、メモリのメーカで対応確認済みのものを買えばいいんですけどね。

箱の中には

とにもかくにもウチにやってきた0647AQJ。箱を開けてみましょう。箱の中身は…割りと空間があります。なんか、フラットベットスキャナの箱を見るようです。本体と AC アダプタ、バッテリパックの他は、説明書一式(セットアップポスター、ユーザーガイド、Regulatory Notice)とサポート案内、PC リサイクルマークの案内。

最初にすること

バッテリ付けて、AC アダプタつないで、電源を入れてざっと動作確認します。プリインストールされている Windows 7 Starter はどうでもいいのですが、一応 USB DVD ドライブをつないで、Lenovo Onekey なんちゃらいうプログラムでリカバリディスクを作っておきます。「出荷時のデフォルト」をバックアップするリカバリディスクは、最初 DVD が3枚必要だと表示されますが、実際には2枚で完了となります。謎。実際にリカバリできるかはやってみないとわかりません。終わったらこの動作確認用の簡易 OS とはお別れです。

ハードディスクを交換だ

ほんで、まあ、とりあえず、ThinkPad X60 からハードディスクを引っこ抜いて、S10-3 のものと交換するわけです。これで環境再構築の手間なく移行できるって寸法です。S10-3 は底面のハッチのネジ4本を回して外すだけでハードディスクに触ることができます。このネジ4本は、ハッチからは抜けないようになっているので床が散らかっていても安心。落としてなくす心配がありません。ハードディスクはウェスタンデジタル製でした。マウンタを本体に留めているネジ2本をまず抜きます。ハードディスクの後部を持ち上げて後ろに引くと、すっと動きます。本体側の SATA 端子は、本体とケーブル一本でつながっています。このケーブルはヤワではないけど、扱いには少し気を遣います。ゆっくり力をかけてハードディスクから本体側端子を引き離します。後はマウンタを外して、逆の手順で X60 から外したハードディスクを入れるだけ。

移植したハードディスクと openSUSE 11.3 の調子はどう?

この以前の ThinkPad X60 は Windows Vista と openSUSE 11.3 のデュアルブートになっていました。主に使っているのは openSUSE の方で、Vista は余り役に立ちません。移植後、電源投入し、openSUSE を起動します。おっと、起動時のカーネルオプションでフレームバッファの設定が 1024x768 向けのままだったので、VGA モードの問い合わせが表示されてしまいます。後で YaST のブートローダの設定で 1024x600 向けに直すことにしましょう。X Window System は自動的に新しい画面の解像度で起動します。すごく便利になったねえ。クロック周波数だけで比べると X60 の Core Solo とこれの Atom N455 はほとんど変わらないし、違和感もありません。メモリは半分になったけど、まずは充分ですね。

無線 LAN の設定

S10-3 の内蔵無線 LAN のチップは、Broadcom のものと Atheros のものがあるらしいです。ウチに来たヒトは Broadcom でした。packman のリポジトリから broadcom-wl と broadcom-wl-kmp-うんちゃらいうのを入れるといいっぽいので、インストールします。最初つながらなかったものの、アクセスポイントの方を再起動したらすんなり接続できました。

バックライトの調整

ノート PC で Fn キーとの組み合わせで使うキーの機能が Linux では一部使えないということがたまにあります。S10-3 では Fn+↑、Fn+↓ で使うバックライトの調整が使えません。これについては Archlinux の Wiki を参考にします(『Lenovo Ideapad S10-3 - ArchWiki』)。ArchWiki に掲載されているシェルスクリプトの内容をテキストエディタにコピーし、setpci を /sbin/setpci に置き換え。適当なディレクトリに適当なファイル名で保存したら、実行属性を付けておきます。YaST の sudo の設定では自分が sudo /sbin/setpci をパスワードなしで実行できるよう設定します。KDE のメニューエディタで先に作ったシェルスクリプトをメニューの中の適当な位置に登録、「詳細」タブでショートカットキーを設定するとキーボード操作でバックライトの調整ができるようになります。「全般」タブの方で起動フィードバックを無効にしておくのがオススメです。

ところでキーボードはどうなのよ

とまあこのくらいで openSUSE は大体ちゃんと動くみたいなので、いよいよ本格的に使ってみようという段階に入ります(Vista は無視の方向で)。まずこの S10-3、液晶は10.1インチなので、従来の感覚だとかなり小さいと思ってしまいますが、16対9のワイド画面なので、横幅は12インチ・4対3の液晶を積んだB5ノートと同じくらいあります。大きさの感じは従来型のB5ノートの縦を切って小さくした感じですから、キーボードもそれなりの大きさがあります。主要な文字キーではキーピッチが変化しているのは右手上段の -^\ の三つだけです。ThinkPad X60 では中段の @:[] も小さくなっているのに比べ、打ちやすさを感じるところです。代わりに Enter キーが細くなっていますが、実際に打ってみてこれは問題になりません。

同じアイソレーション型のキーボードということで、所有している初代 MacBook と比べても、S10-3 の方が打ちやすく感じます。MacBook の場合キータッチは悪くないのになぜか打つ気にならず、プラスチックのまな板のような筐体の形状もわずらわしく感じられ、私の手にはどうしてもなじみません。キータッチだけを取れば S10-3 は劣ります。しかしこちらの方が好みに合い、ずっと打つ気になります。MacBook はキートップが正方形に近いのに対し、S10-3 では下辺がゆるく曲線を描いているのも打ちやすさに寄与しているようです。

一つだけ、少し気に入らない点を挙げると、それは F1 から F11 までは独立しているのに、F12 だけが Fn+F11 の組み合わせで入れるようになっているところです。デスクトップではこの列自体がない HHK Lite を使っているのこともあり別にいいんだけど、F12 だけがっていうのと、ほかに省略できるキーがあるだろ、と思ってしまいます。カーソルキーの為に空きになりがちなところに独立した PgUp と PgDn があるのは使いやすいかもですね。ついでに、キーがパッドと一体化しているタッチパッドですが、少し慣れが必要かもだけどまあ大丈夫な感じ。クリックは隅の方を押すようにすると良い。買う前は左右キー同時押しできない構造になっているのではないかと心配していましたが、ちゃんと X Window System の中ボタンクリックのエミュレートもできます。

全体的には満足度高いよ

とまあ、こんな感じで、今のところすごく気に入っています。今までに購入したノート PC の中で一番費用対満足度が高いと思っているくらいです。5年前には工人舎の SA が8万円でも安かったことを思うと、隔世の感があります。画面は 1024x600 なので今時広くはないけど、KDE なら設定と使い方次第でこの解像度を充分活用できます。作文には集中しやすい大きさの画面だと思います。あとは耐久性かな。大事に使ってこぉ。