10月25日、世界経済フォーラム(WEF)は2013年版世界男女格差報告書GGGR)を公表した。報告書そのものは WEF のウェブサイトから PDF 形式で入手できるほか、日本向けの報道発表文も用意されている。日本は前年から四つ下げての105位、などということは新聞記事にもなっているので措くとして、ここではこの報告書に記載された解説によって、その性質を確認しておきたい。

GGGR の主な内容は、WEF がその活動目的のために、各国内における男女格差について、一定の方針のもとで選定した調査項目について、一定の方針によって点を計算したものである。今年の対象は百三十六カ国。調査項目は経済・教育・健康・政治の四分野で、それぞれに複数の副項目が有る。項目は指標になるものとして選択されたものであり、網羅的というわけではない。

採点の方針は、第一に、国際的な水準の比較ではなく、各国内での格差に重点を置いている。例えば、「イ国の女性はロ国の女性より高い水準の教育を受けている」が「イ国の男性は同国の女性より高い水準の教育を受けている」かつ「ロ国の男性は同国の女性と同水準の教育を受けている」場合、イ国の点はロ国よりも低くなる。第二に、各国の政策や、用意された措置よりも、成された結果を重視する。第三に、女性の地位が男性と比べて、その差が減少したかどうかに注目する。このため、女性が優位と見なされる項目が有ったとしても、得点にも減点にもならない。

副項目および総合の点は、1(平等)を最高とし、0(不平等)を最低とする(例外として出生性比は 0.944、健康寿命は 1.06 を平等とする)。先述の通り、男女が同等に達しても、女性が優位でも点は同じになる。この方針は、その目的に対して適切だと、GGGR は説明している。

この様に、GGGR は、WEF の目的に対して指向したものである。その目的や計算方法については、GGGR の中で説明されている。これらの方針は WEF が妥当であると考えている限りにおいて妥当なのだろう。WEF は、他の目的への適合性について何らの保証もしてはいない。もしその他に転用するならば、転用の仕方についての責任は、転用者が負うだろう。

その上で、総合105位(0.650 点)と評価された日本について見ると、健康は 0.979 点、教育は 0.976 点と、平等に接近している。ただし両項目は高得点の国が多く、これでも順位は各々34位と91位に過ぎない。これが経済になると 0.584 点で104位、政治は 0.060 点で118位に落ちる。健康・教育が高く、経済、政治の順で低くなる傾向は、世界各国に共通している。政治などは社会の因習に支配されやすく、それを克服するほど平等化が進むと言えるのだろうか。