freetel priori2(FT142A)が発売日の12月27日に届いた。Palm Z22 以来十年近く、このテのものは白かそれに近い色を選んできたが、今回は黒になった。

freetel priori2 個装箱
スペシャルパックには標準添付品の他にフリップカバーと予備の電池パックが付属する。
左は初代 priori、右は priori2

さて初代priori(FT132A)から約一年、この間に SIM ロックフリー機をとりまく環境はかなり変化した。大手企業の参入も増えたし、MVNO も音声付きがあたりまえになってきた。私が昨年末に初代prioriを買ったのは、一年前の、何とか市場が立ち上がってきた環境の中でのその存在におもしろさを感じたことが理由だが、その環境がどんどん動いている。priori2 は、今の環境に合わせた進化形として、やはりおもしろさを感じさせる。


まずおもしろいのは、性能・機能の向上と円安にも関わらず、通常版で一万円程度、スペシャルパックで一万三千円程度と、初代と同じ価格帯に入れてきたことだ。搭載している SoC は MediaTek の MT6582M ということだが、同じものを採用して数カ月前に発売された geanee FXC-5A が一万円台後半で売られていることを考えると不思議なほどだ。私は priori2 の予価を聞いた時に、MediaTek よりも低価格帯に強い他の企業のチップを搭載しているのではないかと思ったが、予想は外れた。MT6582M は Lenovo や HTC など大手に採用された実績もあり、最新製品ではないが、それだけに基本的な品質は安心できるものになっているはずだ。

仕様としてはメモリが 1GB、ストレージ 8GB、近接感知や電子コンパス、照度計などを搭載し、CPU もマルチコアになるなど、初代での不満を解消している。画面が 3.5 インチから 4.5 へ大型化したことは評価が分かれるだろう。私の好みとしては、これはスマートフォンとしては許容限度だと思っている。解像度は 320x480 から 480x854 に向上している。Android の UI の方向性として、一定以上の密度と縦方向の長さを要求する傾向があり、現状ではこの位が最低限度と見て良いと思う。液晶の発色や視野角も改善している。

freetel priori2 液晶画面の発色。

スペシャルパックの特典としては、フリップカバーと予備の電池パックが付属する。フリップカバーは、初代と同じく、標準の電池蓋と差し替える形で装着する。ただ初代ではフリップカバーの背面部は標準の電池蓋とほぼ同じ形状だったが、今回のものはデザインが異なり、やや厚みがある。表面の合皮が回り込んで背面にも貼り込まれている。単に扉が付くだけではなく、手帳型のカバーを本体と一体化したような感じだ。フリップの裏側には薄いカードが入る切り込みが設けられている。また、磁石が入っておりベロでフリップを留められるようになっている。この磁石は強いものではないが、位置によっては電子コンパスに影響してしまうようだ。

左は初代 priori、右は priori2 にそれぞれ専用フリップカバーを着けたところ。
フリップカバーを装着した priori2 と標準の電池蓋。

電池パックは 65% 程度充電されていた。二つ目の電池パックはしばらくそのまま保管しても過放電による劣化の心配はなさそうだ。AC アダプタは 5V−1A の一般的な仕様で、USB ケーブルを介して充電する。今回は本体側の USB 端子も一般的な長さになっている。なお電池蓋は背面から向かって左下のへこみに爪などを差して外すようになっている。初代よりも外しやすい。

外形的には前面のスピーカ以外はこれと言って特徴はなく、無難な形状にまとめられている。指先で探って電源を押そうとすると間違って音量を押してしまうのだが、まあそのうち慣れるだろう。ストラップホールが無いのは少し残念なところか。

カメラの画素数は初代の200万から500万に増えた。初代のカメラはお世辞にも良いと言えるものではなく、200万画素いっぱい使う意味がない程度の画質だった。なので、最近は 320x480 に設定していた。まさに一時期流行したトイカメラ程度のものだ。今回のものはそれほど悪くない。初代は白飛びしやすかったが今回はそうではない。初代はオートフォーカスが働いているのかよく分からず、マクロ撮影もうまくなかったが、今回はちゃんと写るようになっている。小さめの QR コードも読み取れる。ただ写真の Exif 情報で機種名がからになっているのは欠点だ。カメラアプリは JPEG 圧縮率が高めのようなので、画質のざらつきが気になるなら、圧縮率の設定ができる別のカメラアプリを探そう。

freetel priori2 で撮影。悪くない発色。
freetel priori2 で撮影。寄って撮っても文字がくっきり。
freetel priori2 で撮影。初代のように白飛びはしない。

処理能力もかなり向上し、例えば Chrome ブラウザのようなやや重めのアプリも利用できる。性能の目安として、ほぼ購入直後の状態で AnTuTu Benchmark v5.5 を実行したところ、ZenFone 5 に迫る得点を叩き出した。個別の評価項目では 3D Graphics は ZenFone 5 の方が二倍ほど優っているらしいが、その他では拮抗している。ソフトウェア面はほぼ標準的な Android 4.4 という感じで、一部の Google アプリの他は、「ファイルマネージャー」「懐中電灯」「ToDo」それに入力方式として「FSKAREN」がプリインストールされている。FSKAREN は本体だけでなく、キーボードスキンも一通り入っている。ちなみに「ブラウザ」(というか内蔵の WebView)は SOP に関する脆弱性は修正済みのもよう(検証用のページをどうぞ)。しかしいずれにしろこれからは Chrome を標準のつもりで使った方が良さそうではある。

freetel priori2 で AnTuTu Benchmark を実行、得点は19308。

ハッキリ言って Android 2.3 世代の水準だったハードウェアで 4.1 を動かしていた初代に比べて、priori2 は 4.4 世代に必要な条件を満たしていると言って良いだろう。一年前に初代を買った時、一年後にはもっと良い選択肢が増えているだろうとは思っていた。まだ入手したばかりなので真価が分からない部分もあるが、今のところは想像以上の成長という感触を受けている。期待を超えてくれたことはうれしい。

先述の通り、非キャリアブランドのスマートフォンは、大手ではないいわば「独立系」――Fleaz(コヴィア)・StarQ(TJC)・geanee(ジェネシス)など――だけでも選択肢がかなり増えた。その中でプラスワン・マーケティングは、freetel という共通のブランドで、機器と通信の両方を提供して特色を出している。11月に始まった freetel mobile(フリモバ)の SIM カードは、もちろん freetel のスマートフォンと組み合わせて買うこともできるし、別々に求めることもできる。フリモバの SIM を他社のスマートフォンに挿しても、freetel のスマートフォンに他社の SIM を挿しても良いという形になっている。慣れた人は自分で組み合わせを選べば良いし、そうでない人は組み合わされたものを手にしてすぐに使うこともできる。こうした形で「通信の自由」が提供され始めたことはよろこばしい。