手元のコンピュータに保存された文書がそこの画面に表示されるのはあたりまえ。では、遠くのウェブサーバにある文書をなぜ手元の画面に表示できるのだろうか。ウェブページは電波に乗って勝手に飛んでくるわけではない。遠くの文書が手元の画面に表示されるまでをたどってみよう。


あなたはいつもウェブブラウザを使ってウェブページを読んでいる。今もあなたはウェブブラウザを使ってこの文書を読んでいるはずだ。だとすれば、あなたが今この文書を読むのに使っているソフトウェアがウェブブラウザという種類のものだ。

あなたがウェブブラウザの「ブックマーク」(あるいは「お気に入り」)メニューから選ぶなり、URL を直接入力、あるいは別のウェブページ上のリンクをクリックするなりして、http://www.example.com/index.html、すなわち www.example.com というウェブサーバにある /index.html という文書をあなたの手元の画面に表示させようとした、と想定しよう。

あなたのウェブブラウザは www.example.com というウェブサーバがどこにあるのかを知らない。www.example.com という名前にひもづけられた「IP アドレス」という数値を知らないと、www.example.com を見つけることができない。

そこで、あなたのウェブブラウザは「DNS サーバ」に www.example.com の IP アドレスを問い合わせる。DNS サーバはネットワークの水先案内人だ。

ウェブブラウザが最初に問い合わせをする DNS サーバは、家庭からインターネットに接続している場合は、通常はインターネットサービスプロバイダが用意している DNS サーバだ。この DNS サーバは www.example.com の場所を知っているとは限らない。

最初に問い合わせを受けた DNS サーバは、自分が www.example.com の場所を知らなかった場合、これを知っていそうな他の DNS サーバにこれを問い合わせる。その DNS サーバもこれを知らなかった場合は、さらにこれを知っていそうなまた他の DNS サーバを最初の DNS サーバに紹介する。そして www.example.com が見つかるまでこれが繰り返される。

ようやく最初の DNS サーバが www.example.com の IP アドレス 「123.456.7.8」 を知ると、これをあなたのウェブブラウザに伝える。それと同時に、何度も同じことをしなくていいように、この調査結果を貯蔵する。www.example.com の IP アドレスを知ったあなたのウェブブラウザは、123.456.7.8 に対して 「http(ハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル)」 という特別な言葉で index.html という文書を送ってくれるよう要請する。

これに対して、123.456.7.8 のウェブサーバは、要請を受け付けたという旨を返答するのと同時に、index.html の内容をあなたのウェブブラウザに送信する。もし要求された文書が存在しない場合は、その旨を返答する。他にも状況によっていくつかの返答が用意されている。

http://www.example.com/index.html の内容を受け取ったあなたのウェブブラウザは、これの内容に従って、これを人間に読みやすい形にして画面上に描き出す。もしくは音声式のウェブブラウザであれば、これの内容を読み上げる。もしこれの中で画像ファイルなどを表示するように指定されていた場合は、それらもウェブサーバに対し送ってくれるよう要請する。

かくしてあなたの手元にある画面上に、ようやっとあなたの要求したウェブページが表示されることになる。これがウェブの仕組みだ。こうしたことは知らなくてもインターネットを利用することはできるが、知っていれば情報技術を使うための基礎体力を底上げすることができる。そしてこれらはふつう画面の裏に隠されているが、興味を持てばいくらでも触れることができるんだ。