まず、この件が知れ渡った当日の出来事を振り返っておく。1月4日18時頃、WAN - ウィメンズ アクション ネットワークの「登録団体からのレポート」という枠に、「ユニオン WAN」名義で『WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ!』という記事が掲載された。ところがこれが同日23時頃 WAN 側によって削除されたため、ユニオン WAN 側が1月5日0時頃、急遽「WAN争議を一争議で終わらせない - 非営利団体における雇用を考える会(仮)」というウェブサイトを作り(当初はサイト名もきちんと付いていない状態で公開されていた)、この記事を改めて掲載した(『WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ! - 非営利団体における雇用を考える会(仮)』)。詳細はそちらの方を参照していただきたい。

私が驚いた、というのは、このような問題が起こったということよりもむしろ、「WAN って人を雇うような体制でやっていたのか」ということだ。実のところ私は WAN というサイトが昨年6月にできたのは知っていたが、「一年続いたら見てみるか…」という感じで構えていて、この1月4日まで一度も実際に見たことはなかった。「有志で集まって何かやってみます」というくらいのものだろうと何となく思っていた。『WANはウェブマスター業務の〜』によると、WAN はウェブサイトの製作を外注し、維持・管理のため複数名を雇用しているようで、正直「その発想はなかった」と驚いたのだった。

このように WAN が NPO 法人として、人を雇用したり、外部から何かを購入する以上、それ相応の収入が必要となる。そのためにはそれなりのものを動かさなければならない。WAN は NPO 会員からの年会費などの他、サイトへの広告掲載料やアフィリエイト広告による相当の収入を期待しているようである。金を取ろうと思えば必ずしも好きなことができるわけではない。WAN の『ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)とは』と題するページには、女性をつなぐ総合情報サイト「ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)」は、女性のための情報を提供し、活動をつなぐウェブサイトです。めざすのは、女性が自由に活躍できる社会をつくるための、ゆるやかで力強いネットワークの形成です云々、とある。目標に照らしてこれはどうだろう。

初期の段階では小さい規模で小さく成功させ、時間をかけて認知度を高め、サイトの価値を高めていくという方法もある。ちょっとした知識と経験があれば、最低限のウェブサイトを作るにかかる費用は小さくて済む。知恵と工夫次第でできることも少なくない。頂点の競争は厳しいが、底辺では片足突っ込んで様子見られるのもウェブ。時間をかけるつもりがあれば、ウェブサイトを内製できるように人を育てたり、そうした取り組みに向いた人間関係の作り方を学ぶこともできる。そこを押してぽっと出の団体が敢えていきなり収益化を企図するということは、驚くべき戦略に基づいた行動でなければならない。私には想像もできないことで、機会があれば WAN の理事方にその考えを伺ってみたいと思うくらいである。