太陰太陽暦で平成三十年の十一月は、西暦2018年12月7日から19年1月5日に当たる。太陰太陽暦の十一月は、仲冬の月で、必ず冬至を含むように置かれる。日本の宮中行事としての新嘗祭(本来はニヒナヘ)は、この十一月の下の卯の日に行われた。下の卯の日というのは、日付の十二支の卯がこの月で二回目に巡ってくる日を指す(一ヶ月中に卯の日が三回ある場合は中の卯ということになる)。今年はグレゴリオ暦の12月25日に当たる。
つまり新嘗祭というは、冬至の前後の時期に行われるものだった。俗に新嘗祭とは「収穫を祝う」とか「収穫祭である」と説く向きがある。しかし仲冬の月に催されることからいって、秋に収穫があったことを祝うものではない。また俗に、新嘗祭を待って初めてその年の新穀を食卓に進めると説くのを見たが、現代ならともかく伝統的な日本社会において、冬の半ばまで収穫に手を付けないでいられるのはよほど豊かな身分の人に限られる。この儀式自体が宮中行事であって民俗的な祭りではなく、そもそも庶民には関わりがない。
新嘗祭は日光が最も衰える時期に行われることから、太陽の復活、ひいては翌年の収穫を祈ることに本来の意義があると考えられる。しかもそれが王権の継承と維持に結び付けられているという点に特徴があり、政治的祭祀としての起源はかなり古いもので、おそらく古墳文化期以前ににさかのぼるものだろう。多くの伝統行事がそうであるように、これも季節との関わりで意味を持つものであって、グレゴリオ暦の11月に引き移された明治以降においては、滅びた文化の一つだと言える。
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