日韓関係 by id:Kodakana

協定による「経済協力」は、日本政府の公式の見解としては、請求権の放棄とは関係が無く、何らの意味でも補償ではなかった。しかしこれに反して、韓国政府は、日本から受け取った「請求権資金」から支出するという建前で、「対日民間請求権補償法」などを制定した。協定本文によれば経済協力として供出されるものは韓国経済発展のためにしか使えないので、この建前が嘘であることは明らかだ。請求者への支払いは、1975年から77年にかけて行われたが、執行に不備があり、このような方法は受け入れがたいという批判も大きかった。2008年以降、追加的な支援措置がとられた。日本でも朝鮮半島からの引揚者に対しては、特別の法律を作って支給が行われている。

しかしこのような日韓両政府の措置は、失われたものに対する補填ではあっても、補償であるとは言えないだろう。両国は請求権の放棄だけはしておいて、互いに補償という名目ではビタ一文も動かしてはいない。だから実際にはそれぞれの国内法で行った補償なり支給というものは、それぞれの国家予算、つまりは国民の血税から出して、その国民に支払ったのだった。

補償の問題を回避して経済協力という形式で妥結したことを懸念する意見は、当時すでに提出されている。昭和四十年十二月一日…[全文を見る]

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払われなかった補償

日韓請求権経済協力協定には、第一条の経済協力と第二条の請求権放棄がどう関係するかについて書かれていない。経済協力は請求権の放棄に対する補償であると暗示的ながら読めなくもないし、そうでないとも考えられる。

これについては、昭和四十年十月三十日、衆議院「日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会」で質疑応答があった。

○宇野委員 請求権並びに経済協力に関する協定の第一条と第二条の関連についてお尋ねをいたしたいと思います。
 これはもう過般来から、野党の質問者からも相当強く疑義を持たれて質問されたわけですが、つまり経済協力は請求権の対価ではないかという説であります。私は、すでにこのことに関しましては、政府当局の御答弁によりまして、そうではないということを明らかにいたしておるものでございまするが、しかし、過般来の質問を通じて私が考えることは、対日請求八項目の内容、それを知らせよという強い御要望がございました。その項目に関しましては、すでに外務委員会におきましても、外務省当局より資料が出されておりまするが、内容は明らかではありません。内容は明らかではないけれども、しかし、そうした韓国の対日請求権は、経済…[全文を見る]
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韓国人の個人請求権については、昭和四十年十月二十七日、衆議院「日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会」で質疑応答があった。

○小坂委員 次の問題は、経済協力に請求権というものが置きかわったわけでありますが、請求権というのは個人を対象としたものでありますし、経済協力とはちょっと質が違ってくるわけです。そこで、いままでわがほうの法務省に供託されておった未払い賃金とか郵便貯金があるわけですが、こうした個人請求権というものは一体どういうふうになるのか、こういうことです。これは韓国側のことになるかもしれませんが、あわせてこの際伺っておきたいと思います。

○後宮政府委員 韓国の内部におきまして、こういう請求権をどういうふうに扱うか、経済協力をもらってそれを各個人の請求者に配るのか、あるいは全然それは別途処置するのかという点については、先方でもいろいろ国内に議論があったようでございまして、一時はもうそういうものは全然各個人の請求者については処置をしないというような議論もあった時代もございましたですが、最近向こうの政府当局者が言っているところを見ますと、証拠書類のはっきりしているものについては、政府から一定の補償をするというラインで考えるというようなことを言っておるようでございます。

この答弁は、よくいわれる「個別の補償は韓国政府が実施することになっていた」ということについてだが、協定そのものには全く定めれれていないので、仮に韓国政府がそうしなかったとしても協定違反にはならない(実際には行っている)。なお決定された協定においては、経済協力という名目でなされる日本からの供与と貸付は、用途が「大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない」と限定されていて、直接的に補償に回すことはできないと読める。

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日韓請求権経済協力協定により私有財産の請求権を失うと考えた日本人の意見。昭和四十年十二月一日、参議院日韓条約等特別委員会公聴会(この中の「基本条約第二条第二項(a)(b)の措置」はこの協定の間違いだと思われる)。

○公述人(平野佐八君) 私は、今回の日韓条約につきましては、はなはだ遺憾ながら、全面的に反対をするものであります。
 特に、基本条約第二条第二項(a)(b)の措置については、直接私たちに関係のある事柄で、とうてい納得できないものであります。日本政府は、さきに一九五一年九月八日、サンフランシスコ平和条約において、韓国にある日本人の財産は、米軍司令官の行なった行為に同意する旨調印をいたしました。しかし、戦いに敗れたりといえども、個人の私有財産は、国際法上もこれを認めるところであるにもかかわらず、今回、日韓基本条約第二条二項の(a)(b)の措置は、これにとどめを刺さんとするもので、私たちかの地に私有財産を有する者は、極度にこの権利を侵害されるものでとうてい黙視することはできません。ここに所信を表明いたし、公述いたす次第でございます。
 以下私の経歴、引き揚げまでの大要と、反対をするゆえんを明らかにしたいと思います。

>&g…[全文を見る]

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個人請求権の行方

日韓請求権経済協力協定には、いくつか「書いていないこと」がある。日韓両政府の妥協の結果、意図的に曖昧にされたとみられる部分だ。そのうちの一つは、これによる請求権の放棄とは、外交保護権の問題なのか、個人請求権を含むのかという点である。条文自体は読みようで個人請求権を含むようにとれないことはないし、そうでないようにも考えられる。

これについては交渉が行われていた当時から問題となっていたが、昭和四十年十一月五日、衆議院「日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会」議事録にもその質疑応答が記録されている。

○石橋委員 ちょっと待ってください。聞き方が間違えました。
 外交保護権を放棄しただけであって、個人の請求権を放棄したのではないという解釈をとっておられたわけです。――もう一度お尋ねします。国の財産権のみならず、個人の財産権の所属変更、移転まで承認したというのであるならば、外交保護権のみならず、個人のそれぞれ持っているところの国際法上の請求権すら、個人の承諾なしに、不当にも国が放棄したことになるのではないか、こういう意味です。正確を期して私もお聞きします。

○椎名国務大臣 外交保護権だ…[全文を見る]
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請求権の放棄

請求権の問題に関しては、協定本文第二条「財産、権利及び利益並びに請求権に関する問題の解決」に規定されている。

1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。) の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する間題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランンスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く。) に影響を及ばすものではない。
 (a) 一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及ひ利益
 (b) 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であって千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいったもの
3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置…[全文を見る]
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経済協力の実施について

協定に付属する第一議定書は、協定第一条1(a)の実施について補足している。これにはさらに「第一議定書の実施細目に関する交換公文」が付属する。

実施計画については、第一議定書第一条に、それは

…大韓民国政府により作成され、両締約国政府間の協議により決定されるものとする。

としている。また交換公文において、

実施計画は、両政府間の合意により修正することができる。

とされている。

協定第一条1(b)に関しては、「請求権経済協力協定第一条1(b)の規定の実施に関する交換公文」が付属する。ここでも、この貸し付けは、韓国政府と日本の海外経済協力基金との合意によって計画されることになっている。

協定により行われる供与と貸し付けの両方で、韓国政府の自由な判断による方途の決定はできず、日本政府が使途について一半の権限を持ち、責任のかなりの部分を負っていたとも言える。

続く。

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協定による経済協力

「韓国との請求権・経済協力協定」第一条では、日本から韓国へ経済協力を行うことが定められている。この経済協力は二つの部分からなる。第一条 1 の a において、三億米ドル相当の無償供与、1 の b において、二億米ドル相当の長期低利の貸し付けを行うこととしている。

第一の無償供与は、資金の形ではなく、「日本国の生産物及び日本人の役務」、つまり製品や労働力として提供されることとされている。これは協定の発効から十年間にわたって分割で供与されることとしている。

第二の貸付は、次のように規定されている。

…大韓民国政府が要請し、かつ、3 の規定に基づいて締結される取極に従って決定される事業の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務の大韓民国による調達に充てられるものをこの協定の効力発生の日から十年の期間にわたって行なうものとする。

「3 の規定」とは、

両締約国政府は、この条の規定の実施のため、必要な取極を締結するものとする。

というものである。

この経済協力に関しては、これがどういう理由で行われるのか、どういう性格を持つものであるかについては言及が無い。何かに対する補償であるとも、ましてや賠償であるとも書いていない。

なお 1 の b の末尾において、

前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。

とあり、その用途が限定されている。

続く。

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「韓国との請求権・経済協力協定」を読んでいく。

1965年に日韓両国で批准されたこの協定は、同時に調印された基本条約と四つの協定の一つで、正式な日本語の名称は「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」という。全文は外務省の条約データ検索から PDF 形式でダウンロードできる(ファイルは二部に分かれている)。

この協定文書は、協定自体の本文と、付属するいくつかの議定書などからなる。協定は四条からなり、第一条は経済協力、第二条は請求権の放棄、第三条は協定に関して紛争が生じた場合の解決について規定する。第四条は「批准されなければならない」というだけで実質的な内容は無い。付属文書は大部分が経済協力の実施方法についての細則である。

この協定に関する主な問題は、第一条と第二条にある。

以下続く。

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