明治以降近代日本のセクシュアリティはいかに形成され、どのように変容したか。膨大な資料を渉猟・分析、言説形成過程を検証する。
近代日本のセクシュアリティ言説形成過程に見出された一定のパターンをオナニーに関する言説に焦点に検証するとともに、「性=本能論」「性=人格論」が拮抗し交錯して慣習や制度を形成してきた様を素描。哲学、理論社会学、フェミニズムなどセクシュアリティ研究の成果に理論的検討を尽くし、資料を検証する方法論の確立を目指す。
生殖医療大国の日本において人権保護の観点から法制定と政策を考えることは喫緊の課題である。生殖医療の進展は、多様な人権の衝突、生命や家族概念の再考、将来の人類への影響等の課題を提起している。本書は生命・身体・セクシュアリティに関わる生殖医療、性別確認検査、健康権、母子保健、ゲノム編集、中絶、第三者の介入する生殖医療、フランスの代理懐胎を取り上げて考える。
「政治と性/ジェンダー/セクシュアリティ」を統一テーマに開催された政治思想学会第31回研究大会の発表報告論文4本を中心に、公募論文10本と書評8本を収録。
オックスフォード大学出版〈Very Short Introductions〉シリーズは1995年に刊行が始まり、現在も続々と新たなトピックを世に送り出している知的教養シリーズ。そのなかでも近年とくに注目されているホットイシューや近現代史のトピックを取り上げる。(1)「レイシズム」(2)「優生学」(3)「貧困」(4)「アメリカの奴隷制度」につづく第5弾は「セクシュアリティ」。ジェンダーや「LGBT-Q」ということばが急速に浸透し、また性的マイノリティへの理解が少しずつ深まるなか、その世界的な流れが不可逆的で、けっして一過性のものでないことを、長い歴史のなかで俯瞰できる一冊。
徹底して子どもの現実に迫り、子どもへの関わり方・援助方法、性教育のポイントを明解に語る。年齢別・テーマ別性教育と科学的な基礎知識、具体的な場面を想定したQ&A、コラムなど、いま必要な内容を網羅。
「性」の世界を生物学や医学の分野ではなく、歴史・人類学・社会学など多分野の刺激的な見地から解説。著者たちに共通する精神分析は、一般的に大人のためとされているセクシュアリティを子供、むしろ幼児にまで広げている。淡い面からきわどいものまで変化に富んだ様相となっている。
包摂しつつ排除するーー台湾・韓国の徴兵制、中国性産業の政治化、アジアの生殖補助医療……同姓不婚、妻と妾の身分差など、規範の淵源たる中国古来の「家族」の変化を捉えつつ、多様な主体がせめぎ合う東アジアジェンダー秩序の未来を考える。
何がリスペクタブルな振舞か。ナチズムへと至る国民主義の高揚の中で、性的領域も正常/異常に分けられていく。セクシュアリティ研究の先駆的著作。
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18世紀の宗教復興とフランス革命を経て、西洋では「礼にかなった」作法を重んじる市民的価値観が浸透していった。リスペクタブルか否か? その問いかけはセクシュアリティをも正常/異常に区分し、国民主義と結びついて社会の管理・統制を強化した。逸脱行為と見なされた同性愛や売春は社会秩序を乱すものとされ、自制する「男らしさ」と、性欲を排した男同士の友情が市民道徳の基盤となっていく──。宗教、医学、芸術、性別分業、人種主義などの諸要素が絡まり合って作用し、市民的価値観と国民主義が手を取り合ってナチズムへ至る道が鮮やかに描き出される。文庫化にあたって、心理学者メアリー・ルイーズ・ロバーツによる新たな解説を付した。
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「正常な性意識」が、ナチズムを支えたーー
セクシュアリティ研究と歴史学を結んだ先駆的名著
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第1章 序論 国民主義と市民的価値観
第2章 男らしさと同性愛
第3章 身体の再発見
第4章 友情と国民主義(ナショナリズム)
第5章 どんな女性?
第6章 戦争と青年と美しさ
第7章 血と性ーーアウトサイダーの役割
第8章 ファシズムとセクシュアリティ
第9章 結論ーー万人の道徳
モッセ著作集版解説(メアリー・ルイーズ・ロバーツ)
一九九六年の訳者あとがき(佐藤八寿子)
訳者解題(佐藤八寿子)
原註
人名索引
性教育発展の国際的スタンダードである『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の翻訳書を、日本の教育・福祉・医療・保健等の現場で活動する執筆者たちが読解・論議を重ねて解説。子ども・若者と語りあう包括的性教育を実践するためのヒントいっぱいの案内書。
ジョージ・エリットからアンジェラ・カーターまで。身体/感情の二項対立を超え、両者の錯雑な関係の在り様を文学作品のなかに読む。
序章 身体と感情の二分法を越えて
1 ヒステリー症
第1章 『ダニエル・デロンダ』のねじれー「顔」が暴く豊穣なる亀裂
第2章 ギッシング小説におけるジェンダー化する身体への抵抗ー反流行文士とヒステリー症
2 荒野と都市
第3章 耳と目から読む『帰郷』-歌劇の舞台としての荒野
第4章 『ジキル博士とハイド氏』の優生学的身体ー人格と都市
3 モダニズム小説
第5章 『ダロウェイ夫人』の「ひきつり」-優生学言説と小説技法
第6章 越境する身体ー『ユリシーズ』の民族、女性、書物
4 欲動
第7章 『モーリス』の内なるホモフォビアー精神と身体の均衡に向けて
第8章 「赤ずきん」物語と身体性ー「狼たちの仲間」と内なる「狼」
すぐに解決できる「手立て」だけではなく、当事者の視点に立った「見立て」と「共感的理解」を学び合いたい。保護者・教員・施設職員からの相談支援事例28。
今、教育の現場で問題となっている、教科書で教えない性教育、セクシュアリティ教育、ジェンダー教育、LGBT問題に一石を投じた書。本書は、学校での性教育の役割が子どもの安全基地の確保となるために必要なものは何かを、さまざまな意見聴取や対話から明らかにしたもの。いま全国の高校では、文科省通達に従って保健や家庭科の科目の中で「性教育」を行っている。しかし教科書に沿って行われる「性教育」は、単なる避妊教育だったり、禁欲教育だったりして、「性」の最も重要な部分である人間の尊厳や、日々の暮らしでの自由と自立と「性」との関係について踏み込めていない。それは「性教育」に携わる現場の教員が痛切に感じていることである。試行錯誤を続けている教員から出てきた問いは五つ。1なぜ「性教育」が必要なのか、2セクシュアリティ教育が目指すもの、3生徒に何を伝えたいか、4生徒は何を知りたいか、5生徒の個人差についてーーこれらの問いに答えるために、本書では、「学歴」とともに分断二大要素の一つである「性」にフォーカスし、それを三つの視点から、「性の教育で必要なこと」(一つ目は学校で行われている文科省通達の「性教育」とそれに携わる現場教師の奮闘を座談会形式で、二つ目は助産師の語る性「出産と赤ちゃん」について、三つ目はLGBTQに関わる「性スペクトラム」について)を論じて見えてきた、子どもの成長に重大な影響を及ぼす「性教育」の在り方を浮き彫りにし、教科書では教えない、性教育の正しい知識とは何かを明らかにした書。今、教育の現場で問題となっている、セクシュアリティ教育、ジェンダー教育、LGBT問題に一石を投じた意欲作。
歴史,哲学,文学,心理学等の分野の語彙を400近く収録。それがどのような背景をもっているか,それについてどういった議論がなされているのかを示した事典。
人の移動とセクシュアリティには強い関わりがある。人の国際移動、とりわけ強制移動と呼ばれる現象のなかにセクシュアリティの問題が規定されていることを、性的マイノリティの人々が難民として移動する経験に関するアメリカでの調査を通して明らかにする。
まえがき
序章 「性的マイノリティの難民」を問う
1.「性的マイノリティの難民」を問う
2.研究の方法
3.本書の構成
第1章 難民・強制移動とジェンダー/セクシュアリティ
1.難民・強制移動とジェンダー
2.性的マイノリティの難民へのアプローチ
3.クィア移住研究として
第2章 国境におけるセクシュアリティの歴史と政治
1.セクシュアリティの規範と入国管理
2.難民政策のターニングポイントーー1980年マリエル・ボートリフト
3.「ホモセクシュアル・マリエルズ」から「特定の社会的集団の構成員」へ
第3章 性的マイノリティの難民の保護
1.セクシュアリティと保護/排除の言説
2.外交政策としての「LGBT難民と庇護希望者」
3.「LGBT難民」≠「LGBT庇護希望者」
4.新聞報道のなかの性的マイノリティの難民
5.国境の厳格化と入国管理政策
第4章 難民の移動と語りの構築
1.調査のフィールドと支援のアクター
2.移動と難民認定申請
3.難民の語りの構築
4.権利とアイデンティティを「学び」、語るーニューヨーク市の事例から
5.非正規移民から難民申請者へーサンフランシスコ・ベイエリアの事例から
第5章 難民の語りのクィアな可能性
1.「寛容なアメリカ」対「ホモフォビックな出身国」
2.帰属意識の複層性
3.庇護国アメリカとLGBTコミュニティの包摂の幻想
終章 性的マイノリティの難民の包摂と排除
1.「LGBT難民」の包摂と移民・庇護希望者の排除
2.クィアな実践としての移動と語り
3.今後の研究課題
あとがき
参考文献一覧
多様なセクシュアリティの人にとって、対人援助の場を安心・安全な空間としていくために。さまざまな現場で、セクシュアリティの視点を実践に活かす方途を探る。
LGBTとSOGI(性的指向と性自認)に関する個票データによる初の本格的な実証分析のほか、日本人の初交経験の変遷、不倫行動の要因分析、セックスレスと若者の草食化まで、セクシュアリティを人口学的側面から検証。
「男/女」の規範に必ずしもあてはまらない文化がロシア文学のなかで花開いた「銀の時代」と呼ばれる時代が百年前にあった。本書では二十世紀初頭のロシアで都市のミドルクラスの女性たちに人気を博した三人の女性作家による女性向け大衆小説に着目し、これらの作品がいかなる方法を用いて非規範的な“性”のあり方を呈示し、「男/女」や「異性愛/同性愛」といったジェンダーやセクシュアリティに向き合ったのかを探っていく。小説のなかで既存の「男/女」の秩序におさまらない“性”の諸相がいかに示され、そうした表象を支える原理がいかなるものであったのか、当時の社会・文化的コンテクストを参照しつつ明らかにしていくと、彼女たちの小説のなかに豊穣な“性”文化が存在していたことが見えてくる。