性同一性障害傾向をもつことに、遺伝と環境はどのような影響をおよぼすのか。ホルモン療法、性別適合手術、性役割、性的指向、他者からの受容、パッシング…これらは、トランスジェンダーの性同一性にどのような影響をあたえるのであろうか。3300組以上の双生児と、545名のトランスジェンダー当事者への調査を通じて、多様で流動的な性別のあり方がどのような発達メカニズムで起こり、どのように形成されていくのかを解明する。また男性にも女性にも規定されない性別(Xジェンダー)にも注目する。
中学入試の社会科は、現実社会を映す鏡である。2022年の実際の入試問題の中から、中学受験のプロが9問を厳選。外国人労働者、環境、格差、ジェンダーなど多岐にわたる分野はSDGsにも通じており、大人の学びにとっても格好の教科書となる。掲載校は麻布、田園調布、武蔵、頌栄、浅野、〓友、駒場東邦、東京純心、市川。圧倒的本気度の9問は、子どもにとってはペーパーテストでも、大人にとっては解決すべきリアルな課題だ。
移民女性看護師の生活世界に迫る境界侵犯的エスノグラフィー。著者が10歳のとき、彼女の母親は、彼女と幼少の弟二人を心優しい夫の手に託し、看護師としての技能をいかすためにアメリカにわたった。そして、その二年後、四人は新天地で母親と合流することになる。本書は、この旅路の社会学的意味を明らかにするものである。
ジェンダーに「男性」と「女性」しかないなんて、もう過去の話!自分のジェンダー・アイデンティティを探してみよう!ジェンダー・アイデンティティを表現してみよう!不安に感じること、つらい問題に立ち向かう方法を見つけよう!
18世紀の植民地の暗く苛烈な文化交流史において、著者はオウコチョウのようなつつましい植物に焦点を当てる。現地の人びとから植物の知識を熱心に吸収したヨーロッパ人は、奴隷の女たちが主人を欺くために使っていた中絶薬についての知識を、あえて無視した。ヨーロッパはまさに重商主義のもと、人口増加を奨励している時代だった。植物探査のはらむ深刻なモラル問題に光を当てる。アメリカ歴史学会大西洋世界史賞、フランス植民地歴史学会Heggoy賞、アメリカ医学誌協会薬学史Ester賞ー受賞。
新聞、雑誌、教科書など様々なメディアを通して広く読まれてきた島崎藤村。“私的領域”をモチーフとしながらも、ただの自伝や告白としてではなく、文学として昇華させることが目論まれたテクストは、社会の制度や通念に揺さぶりをかける、鋭い批評性を持っていた。メディア・他者・ジェンダーをキーワードに、実生活と芸術、個人と社会、規範と逸脱が交錯する藤村文学を読み直し、そのダイナミズムを提示する。
『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。恐怖の対象として類を見ないその存在に託されたものは何か。本書では、ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作に映るものを仔細に分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる力作。
代わりに書くのは何者か。谷崎潤一郎をはじめ、口述筆記を行った作家は実は多い。だが、ディスアビリティやケアが絡み合う空間で、筆記者、特に女性の役割は不可視化されてきた。大江健三郎、多和田葉子、桐野夏生らの作品をも取り上げ、書くことの代行に伴う葛藤とジェンダー・ポリティクスを鋭く分析した力作。
日本政府の借金はこの30年間で莫大な額に膨れ上がっており、財政の持続可能性が危惧されている。限られた予算のなかで、効率的にお金をつかう「賢い支出」が必要とされているのだ。本書は、景気刺激策としての財政出動の効果について論じる最先端の経済政策分析。財政乗数の決定要因、高齢化が財政政策の効果(財政乗数)に与える影響、公共投資の効果がインフラストラクチャーガバナンスと労働市場の柔軟性に大きく左右されること、財政政策が雇用・失業に与える影響、そして、ジェンダー平等に与える影響について明らかにする。
「国民の仏教」=「鎌倉新仏教」論の生成、西洋との遭遇、「国家神道体制」の成立、対外戦争の勃発、「良妻賢母」という規範の喧伝ー。近代日本における国民国家形成のプロセスにおいて、仏教はいかに「国民国家の“宗教”」たろうとしたのか。また、そこにはいかなる葛藤があったのか。主に浄土真宗(真宗大谷派)に関する諸問題を題材に、真宗者・真宗教団が打ち出した信仰(信心)の言説を分析し、国民国家と仏教の関係をいま改めて考察する。
非正規雇用の拡大とジェンダー格差の中で、若者のキャリア形成はどのような困難に直面してきたか。学校か仕事か、勤続か転職か、親同居か自立か、結婚するかしないか。就職超氷河期を経て若者たちが成人期に移行する道筋は複雑化している。東京、ソウル、ミラノ、トロントで同一調査を実施してデータを比較検証し、4ヵ国の若者支援政策の現状と課題に迫る、かつてない国際比較研究の全容。