日本では、パートタイム労働市場の拡大とパートタイマーの企業内定着と同時に、パートタイム労働者と正社員との賃金格差が広がり、「職務と処遇の不均衡」が拡大している。本書では、スーパーマーケット産業の事例を通じて、このような現象が起きる構造と過程を、ジェンダー視点と行為者戦略アプローチから、企業、労働組合、パートタイマー本人それぞれの行為戦略を分析する。日本的パートタイム労働市場の特徴の形成と再生産を解き明かす試み。
ビューティー・サロンは「女らしさ」を読み解く絶好のスポット。身体・ジェンダー・健康をめぐる利用客の多彩な関心と、美容という労働の位置と経験を鮮やかに浮かび上がらせ、新たなフェミニスト思想の地平を拓く。
ときに人々を魅惑し、ときに宗教的・倫理的な観点から可視化を規制される乳房は、隠蔽されながらも性的な消費の対象になり、時代や社会によって「エロス」「卑猥」「母性」などのさまざまな価値観と結び付けられてきた。社会状況の変革や価値観の揺らぎなどの「時代の危機」に乳房イメージが生産・消費される契機を読み取り、ヨーロッパ中世、近世イタリア、戦中・戦後の日本映画、ピンクリボンキャンペーンなど、古今東西の乳房イメージと社会との関係を明らかにする。それらを通じて、女性の身体そのものから乖離している乳房イメージと、それに密接に絡み合うジェンダーの力学を解明する乳房文化論。
「男性優位社会」日本における男の生きづらさとは。ジェンダー平等をめぐる教育現場での錯綜は男子に何をもたらすか。男子の学力不振、厄介者の男子、「男らしさ」の市場価値の下落…男のあり方をめぐるパラドックスに迫る。
ベル・フックスのアメリカ黒人現代アート批評、待望の邦訳。白人至上主義的・資本主義的・家父長制による排他的な視覚の政治学が深く浸潤する現代アートとその批評、システムの内部にメスを入れ、真の黒人の美学を開示する。
現代文学の最前線で活躍する女性作家たちー山本文緒・絲山秋子・津村記久子・笙野頼子・多和田葉子・松浦理英子・金原ひとみ・鹿島田真希・姫野カオルコの小説を、結婚制度とそれにまつわる社会状況を照合しながら多角的に考察する。労働・異性愛主義・生殖という三つの観点から、現代日本の「結婚」が、その時代におけるジェンダーの身体化や主体の自己認知とどのように相関しているかを探る。また、複数領域におよぶ理論と豊富な注釈を加えることで、個人のライフコースへ介入する様々な“結節点”が存在する状況を再接合し、「結婚」に関する秩序を照射した。このように「結婚」の自明性を解体すると同時に、社会的な諸条件と制約から芽生える意思と利害によって、人間がどのような主体と親密性を築き得るかという問いを、本書は文学作品を読解することの可能性のなかで発展させたものである。
10代から50代まで、職業も人種もジェンダー表現もさまざまなノンバイナリーたちが、自身を率直に語る回想録。
「ジェンダーに関わる多領域をカバーする」「女性の人生の節目を取り上げる」「最新の法律等の情報を盛り込む」ことを基本方針として、女性をめぐる現代社会における問題について、映画やマンガ等を用いながら分かりやすく解説。改訂版では、LGBTや奨学金問題等の近年関心が高まっているテーマに関する解説も新たに掲載。また、2017年施行の改正男女雇用機会均等法、2018年施行の改正介護保険法等の最新の法令改正にも対応。
詳細なデータを駆使し、一九八〇年代以降の生活保障システムを分析。貧困や地域格差といった偏ったお金の流れが、ジェンダーと深くかかわることを明らかにし、現代日本の社会・経済の脆弱性を浮き彫りにする。誰もが社会で認められ、働き、所得を得て、暮らし続けていくことができる、包摂社会への視座を与える力作。
織工として定収入を得る人から、彼女たちの家事を代行して稼ぐ人まで、戦間期にイギリスの女性の働き方や暮らしは一気に多様化する。理論と実証研究の統合を目指した意欲的なオーラル・ヒストリー。一九二〇年代以降にイングランド北西部、ランカシャーで就労していた女性の経験について、一九九〇年代初頭に実施した調査をまとめたもの。
男女ともにワーク・ライフ・バランスを実現するためのカギとは?一人ひとり異なる生きた個人の内面の声と、働き方やジェンダー規範という社会の構造的な問題とを、生涯発達心理学の視点から結びつける。
いま激動する社会に最適なかたちを模索して試行錯誤する日本の家族。進化心理学、文化心理学など新たな視点をも統合した、新しい家族心理学。
労働のグローバル化が進む中で、脆弱な環境に置かれた現代ラテンアメリカの女性たちが国境を越え、移民労働者として国外労働市場に組み込まれるプロセスと、その中で女性たちが直面する様々な問題を明らかにする。
一つの価値観をおしつけ、自由な批判精神を摘みとるー原理主義克服のために、原初史(創世記1章〜11章)に託された真のメッセージはなにかを問う。
社会学するとは何かーメディアを通して様々な「常識」や「記憶」が創られている。身近な文化現象を、理論/歴史/流行現象の視角から再考し、社会学を「実践」することの面白さと奥深さを開示する。
アフリカの民間信仰を源流とし、19世紀にハイチのヴードゥー教の「生ける死者」となった「ゾンビ」。1932年にアメリカ映画で吸血鬼に次ぐモンスターとして登場後は、またたくまにスクリーンを席捲し、やがては社会のさまざまな事象を代弁し、刻印できる便利な「表象・隠喩」として定着した。理性も知性ももたず人を襲い、噛まれた者も同類になっていくー本書はこうしたゾンビのあり方に、この世/主体/資本主義/人種/ジェンダーの枠組みから逃避する道の可能性を見出す。多彩な現代思想の手法を駆使して、現代社会でゾンビ表象が担う意味をあぶりだした知的冒険の書。
米国の宗教学者による水子供養の画期的論考、待望の邦訳。史料分析と現地調査により、大衆メディアの活用、徹底的な商業化、超宗派的な儀式の性格を多面的に描き、その根底にある女性差別、胎児中心主義的イデオロギーを暴き出す。