お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」の研究プロジェクトの一環として、2005年度(平成17年度)から2007年度(平成19年度)に得られた成果をまとめたもの。
ロールズに代表される現代リベラリズムの諸前提ー善の構想の多元性、国家と法の中立性を批判し、フェミニストの法実践の基礎となりうる主体像を探究する。
規範としての身体から越境する身体へ。ジェンダーとポストコロニアルの視点から近現代日本の演劇テクストと身体を読み直す。
急成長する中国の都市で生活する人びとのジェンダーと高齢化の問題に焦点をあて、独自データを用いた実態分析に基づき時間地理学の枠組みで日中を比較・分析する。
「男らしさ」「女らしさ」は時代ごとに形作られて、さまざまな主張・言説の渦に巻き込まれながら変化し続けてきた。天皇家族写真から和服や男性美をめぐる論争、大正期のインターセックスの語られ方、戦時下の「ミス・ニッポン」の身体イメージなどの多様な事例から、“性”や“身体”という連続体に裂け目を入れて分離しようとする力学を浮き彫りにする。
21世紀に入って吹き荒れた日本のジェンダー・バッシング。今、あらためて「男女共同参画」=ジェンダー平等の課題を見つめ直すために。
山地に暮らす少数民族カレン。さまざまな差異がクロスする中で、彼らはどう生きてきたか-。カレンの生活実践を、女性たちに焦点を据えて丹念にたどり、差異による分断を越えた「つながり」の瞬間を、くっきりと描き出す。
「北米最大のフランス語圏」「第二のパリ」と称され、英系とフランス系だけでなく、多種多様な民族・言語・文化がせめぎ合い、共生しながら「モザイク」として輝きを放つモントリオールとカナダ・ケベック州-抑圧からの解放のために、自らのアイデンティティを探るために、彼女たちは「書くこと」を選んだ。女性たちが紡ぎだす魅力的な作品世界。
親子の愛情に支えられる介護はなぜ息子ではなく娘の役割となるのか。ライフコースの多様化を背景に再編される性別分業の仕組みを探る。
個人と国家が緊密で緊張関係にある国・アメリカ。アメリカ史への新たなる切り口。
インド・パンジャブ地方出身の両親のもと、イギリスで生まれ育ったジャスビンダルは、親の決めた結婚から逃れるため、15歳で家出した。慣習を拒み、アウトカーストの恋人と駆け落ちしたのは、家族にとっての二重の「恥」だと絶縁される。「私の人生を生きたい」という思いを貫くほど、同胞コミュニティからは拒絶され、親しみのある暮らしと文化は遠ざかり、ジャスビンダルは帰属のない不安に揺れる。そんな葛藤の中から見つけ出したのは、同じ境遇にある同胞女性の支援活動を始めることだった。これは移民二世女性の半生を綴った実話である。