制度化された「労働」の批判。家事労働からセックスワークまで、労働のなかの“女/男”をジェンダーの視点から分析する制度・言説・表象の政治学。
私的領域と公的領域においていまだ継続する男女間の不平等。福祉国家はこのジェンダー関係をどのように形成してきたのか。本書は、欧米の8か国を取り上げ、ケア・仕事・福祉(制度)という3つの観点から、ジェンダーと福祉国家間の因果関係を理論的、実証的に解き明かしていく。
「性差」や「文化的・社会的性」と訳されるジェンダー。その概念が日本に導入された際の困難を辿り、ジェンダー史成立までを描く。研究をリードしてきた著者の多彩な成果を集めた、ジェンダー史を学ぶ人々に贈る必読の書。
刑事手続における被疑者・被告人の適正手続の保障に反することなく被害者の安全と権利は如何に守ることができるのか。米国DV防止法・加害者逮捕政策をもとに「配偶者暴力防止法」改正を考える。
西欧における日本女性のイメージはいかにして形成されたかー。ロティの『お菊さん』、ロング、ベラスコ、プッチーニの『蝶々夫人』を、サイードが指摘する「再構成と繰り返し」の過程として読み直し、レーヴェン『バタフライ』における自己相対化の手法、ウォン『M・バタフライ』における異性装のパフォーマンスにジェンダーの本質と模倣の構造を探る。
敗戦から新たな戦前へ。8・15から「慰安婦」・教科書・女性兵士問題まで、戦後60年をジェンダーの視点で読み解く。
雄々しい男性の理想像を体現した作家という固定観念を打破し、ヘミングウェイの初期と後期の作品の興味の中心が同性愛、性の役割の交換、異種混交にあったことを明らかにした画期的な研究書。
男女共同参画社会基本法が制定され、実質的な男女平等の実現が政策課題になっている。しかし社会規範である制度は、性別分業意識でジェンダー化されていると言わざるを得ない。本書では、その諸制度をジェンダー問題解消の視点から検討し、そのあるべき姿を再構築するための提言を試みている。
現代福祉国家の諸制度-賃金、税制、社会保障制度等に組み込まれた女性の自律を阻む不平等要因を、諸福祉国家の比較研究に基づき鋭利に摘出するとともに、その背景をなす男女役割分業思想が今なお強固な日本において、国際条約や諸国家の前進的成果を足掛かりに、独自の視角からジェンダー平等を推進する、新たな戦略構築の基盤を追求した、著者の遺著。
意志決定や労働分担の面から世帯に焦点をあて、女と男のニーズの違いを明らかにする。生活改善のための実際的ジェンダー・ニーズと自立のための戦略的ジェンダー・ニーズの区別が、ジェンダーに対処した開発計画をすすめる場合いかに有効か、その根拠を示す。福祉、公正、貧困撲滅、効率、エンパワーメントの5アプローチからジェンダー計画を分析する。ジェンダー診断やWID/GAD政策表の分析ツールを下にジェンダー政策の実践手順を示す。ジェンダー政策を実施する機関・部署・部門の問題を政治・制度・組織面から考察する。ジェンダーに対処した開発を行うための手法とそこで生じる様々な制約に注意を促す。開発スタッフ向けのジェンダー・トレーニング法とその具体的実践メニューを紹介する。家庭、地域、国、世界の様々なレベルの接近法を第三世界の女性NGOの活動から学ぶ。
「統一」から十年以上を経たドイツにおいて、「ジェンダー・スタディーズ」のパラダイム転換が着実に進行している。「資本主義/社会主義」の二項対立構造と結びついた伝統的な「性差」理解の変容過程の中で、「表象」「身体」「パフォーマンス」といった新たな問題系に、英語圏の議論とは異なった視角から光が当てられようとしている。一八世紀にゲーテとロマン派が発見した「永遠に女性的なもの」をめぐる歴史的言説と、ポスト・モダン的なジェンダー理論の交差点を探っていく。
佐賀には、ジェンダーを知らない人は、もういない。初の全国公募でやって来た、県立女性センター「アバンセ」の館長のことばを、確実にとらえたのだ。出会いを慈しみ、地域に根差し、世界にネットワークを結んで、女と男の平等な社会をめざして紡ぎ出されることばは、勢いに乗って、はるか県境を越える。
本書は、一橋大学大学院社会学研究科において、二〇〇六年四月から三年間にわたって続けられた先端課題研究7「日常実践/方法としてのジェンダー」の成果である。ジェンダー関連の書籍は、現在、入門書から専門書まで大量に生み出されているが、著者たちが心がけてきたのは、女性学や男性学、ジェンダー研究のテリトリーに閉じるのではなく、社会科学のなかにジェンダー視点を導入し、定着させ、その融合的な研究視座から、日常空間で作動するジェンダーに関わる諸問題(労働、家族、身体/生命、アイデンティティ、権力、政治秩序、市民社会、公共性、国際関係など)を可視化し、いかに対象化し研究として立ち上げることができるのか、それを徹底して追究することであった。
反「慰安婦」キャンペーンはセカンド・レイプにほかならない。「国民基金」政策に次いで高まってきた反「慰安婦」キャンペーン。さらに「自由主義史観」の登場…。「慰安婦」問題をめぐる’90〜’97年の動きを跡づけ、性暴力の視点から戦争責任を問う。
社会とその基底をなす教育を貫く「隠れたメカニズム」-現階級社会を正当化するイデオロギーの発出とそれに照応した人間と文化の再生産は、今なお日々繰り返されている。男女の非対称性、高校教育の階層構造等、今日の日本における「欺瞞の構造」を明確に摘出した、新たな現代国家・社会批判の書。
表象は、制度や社会システムといかに結びつき、どのように支配的言説を構成していくのか。世界のジェンダーのありようから浮かび上がる、近代という時代の性質。一橋大学リレー講義「ジェンダーから世界を読む」から生まれた、多彩な論考11編。