狂気と正気の間を激しく揺れ動きつつ、自ら死を選ぶ男の凄絶なる魂の告白の書。醒めては幻視・幻聴に悩まされ、眠っては夢の重圧に押し潰され、赤裸にされた心は、それでも他者を求める。弟、母親、病院で出会った圭子ー彼らとの関わりのなかで真実の優しさに目醒めながらも、男は孤絶を深めていく。現代人の彷徨う精神の行方を見据えた著者の、読売文学賞を受賞した最後の長篇小説。
新しい生命を育てるよろこびに満ちた日々。俵万智、待望の344首。
サラリーマンから探偵に転身した仁木順平と助手の美少女・安梨沙が営む小さな探偵事務所には今日も奇妙な事件が持ちこまれる。育児サークルに続く嫌がらせ。猫好き掲示板サイトに相次ぐ、飼猫が殺されたとの書き込み。仁木の息子の恋人につきまとうストーカー。六つの事件の後で、安梨沙が心に決めた決意とは。
「管鮑の交わり」で知られる春秋時代の宰相・管仲と鮑叔。二人は若き日に周の都で出会い、互いの異なる性格を認め、共に商いや各国遊学の旅をしつつ絆を深めていく。やがて鮑叔は生国の斉に戻り、不運が続き恋人とも裂かれた管仲を斉に招くー。理想の宰相として名高い管仲の無名時代と周囲の人々を生き生きと描く。
1997年7月1日、香港返還。その日を自分の目で、肌で感じたくて、私はこの街にやってきた。故郷に妻子を残した密航者、夢破れてカナダから戻ってきたエリート。それでも人々は転がり続ける。「ここは最低だ。でも俺にはここが似合ってる」。ゆるぎない視線で香港を見据えた2年間の記録。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
産婦人科医の母と15歳のクレアは、冷蔵庫のドアにメモを残す。買い物のリスト、ボーイフレンドのこと、学校のテストのこと。そしてある日突然おそった母親の病気…春から夏へ、夏から秋へ。強かった母と、わがままだった娘は、時に傷つけあいながらもささえあいふたりで生と死をみつめていく。
戦争、空爆、孤児院、ホームレス、いじめ…。「滝川クリサヘル」の別名でも知られるイラン人タレントの数奇な人生。
傍聴ブームという社会現象まで起こしたベストセラー「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」待望の続篇はますます絶好調。男泣き大安売りの被告人に、キャラも十人十色の裁判官。嫉妬に狂った地味な女もキャバ嬢に騙された34歳の男も、法廷でそれぞれドラマを展開中。文庫版スペシャル・伊藤理佐さんの突撃傍聴マンガも必読。
「座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。純粋さが加速させる狂気のノンフィクション。
アフリカの最貧国、マラウイを襲った食糧危機。食べていくために、学費が払えず、著者は中学校に行けなくなった。勉強をしたい。本が読みたい。NPOがつくった図書室に通うぼくが出会った一冊の本。『風力発電』。風車があれば、電気をつくれる。暗闇と空腹から解放される。-そしてマラウイでは、風は神様が与えてくれる数少ないもののひとつだ。
普通の男は、0.8%しかいない?女は磨けば磨くほど、男を遠ざける?結婚ビジネス最前線の元戦略コンサルタントが数字と現実を見据えて教える、目からウロコの婚活術。
異界族の存在を受け入れた19世紀のロンドン。この地で突然人狼や吸血鬼が牙を失って死すべき人間となり、幽霊たちが消滅する現象がおきた。原因は科学兵器か疫病か、あるいは反異界族の陰謀か。疑われたアレクシア・マコン伯爵夫人は謎を解くため、海軍帰還兵で賑わう霧の都から、未開の地スコットランドへと飛ぶーヴィクトリア朝の格式とスチームパンクのガジェットに囲まれて、個性豊かな面々が織りなす懐古冒険奇譚。
乳癌で逝った妻、そのすべてを見届けた夫、歌人夫妻が紡いだ380首とエッセイ。
契約交渉は古来、日本人が最も苦労してきたところだ。国際化が進み、今は企業も個人もネット上で海外企業と情報のやりとりをする時代。現代ビジネスに必須の契約マインドの身につけかたを、国際コンテンツ契約の第一人者が伝授する。
おいちは十六歳。江戸深川の菖蒲長屋で、医者である父の仕事を手伝っている。おいちが他の娘と違うのは、この世に思いを残して死んだ人の姿が見えること。そんなおいちの夢に、必死で助けを求める女が現れる。悩みながらも己の力で人生を切り拓き、医者を目指す娘が、自分に宿った不思議な力を生かし、複雑にからみ合う因縁の糸を解きほぐしていく、青春「時代」ミステリー。
遠藤慶太は30歳。大航ツーリスト成田空港所に赴任して二年目を迎えた。今や空港勤務のプロ「あぽやん」として大活躍ーのはずが、能天気な新人の教育、テロリストの出没騒動に今日も悪戦苦闘。さらに空港所閉鎖の話が浮上する中、恋のライバル登場で、まさに大ピンチ!?遠藤の活躍を描く、大人気シリーズ第二弾。
8年前、私は息子とともに妻を殺し、古井戸に捨てた。殺すことに迷いはなかった。しかし私と息子は、これをきっかけに底なしの破滅へと落下しはじめたのだ…罪悪のもたらす魂の地獄!恐怖の帝王がパワフルな筆致で圧倒する荒涼たる犯罪小説「1922」と、黒いユーモア満載の「公正な取引」を収録。巨匠の最新作品集。