大地震、飢饉、天然痘による藤原四兄弟の死、めまぐしい遷都、叛乱、と聖武帝はいっときも心がやすまらない。懊悩の果て、遂に大仏建造を決意、天平15年、詔と共に国中の富と民がかき集められ着工された。帝の悩み、実力者達の思惑、民の苦しみ、すべてをのみ込んで仏は巨大な御姿を現してゆくー。
山村正夫作家生活40周年記念出版。戦慄!!西洋時代ミステリー。西洋の物語に材をとる恐怖の人間絵巻!
趙治勲、原慎太郎、山田泰吉、小椋佳、多田雄幸、三浦和義…。それぞれの人生を共に生きて描く人物ノンフィクション。
宿酔のあしたに思うのは故郷、家族、さすらいの遠い日々、そして異国で出会った人々のやさしい眼差し。人はさまざまな思いの中で優しくなる。伊集院静の処女エッセイ集。
比戦線の最後の主戦場は、マニラーバギオ間を結ぶベンケット道と重畳たる山岳地帯だった。攻め寄せる近代装備の米軍に対して、日本軍守備部隊には斬り込み命令が繰り返される。飢えと病と敵弾と高級指揮官の無能の四重苦のうちに、兵士たちは倒れていく。悲劇の核心を衝き、戦争悪を追及する著者執念の戦場ドキュメント。
ライヴァルを倒し、記録に挑み、ひたすら戦いつづけることで王座を手にした男たちも、やがては頂から降りざるをえない時がやってくる。彼らが発する声にならない声…。その呻きが、喘ぎが、呟きが、そしてその沈黙が、いま再び「敗れざる者たち」の世界に反響する。勝負の世界にまつわる5つの短篇。
幕末の京都、江戸より上洛した浪士組が殺人集団へ変貌していく。「士道に背かぬ、組を抜けぬ、金策を勝手にせぬ、訴訟を勝手に扱わぬ、私闘をせぬ」これら五カ条に背けば切腹という鉄の規則の下、敵対する者たちを次々に斬り捨てていった血まみれ軍団・新選組の凄絶なる実像を描ききった歴史連作長篇。
空襲で一家6人を失った下町の釣竿屋の娘は18の歳に貧乏噺家に嫁ぐ。やがて夫は当代一の人気落語家にー。林家三平未亡人が幼少時の戦争体験に始まり、三平との出会い、結婚生活、夫の闘病と奇跡の再起、そして夫の死後一家を支え4人の子供たちを巣立たせるまでを涙と笑いで綴る“おかみさん”の半生記。
童謡に一時代を画した作詩家の生涯の書。
絢爛華麗な伝説を多く残した女流作家岡本かの子の実像をみごとにとらええた初期代表作「かの子撩乱」と世界的なプリマドンナ三浦環を描いた「お蝶夫人」他一篇。
女が強くなったと言われる今日このごろですが、そんな風潮は何も珍しくはございません。休みなく流れ続ける歴史の中には、あっと驚く猛女たちが数多くいたのです。推古天皇、額田王、元正天皇、伊勢、藤原彰子、藤原元子、小督、平時子、京極お初、絵島など、したたかな女たちの生き方を、おなじみのシリーズでお楽しみ下さい。
原敬により、院外団から、代議士、党幹部に引立てられ、拓殖会社の理事として辷り込む父・尾花晋作。3年前病死した正妻のあとになおった27歳の三輪子。洋行志望する前妻の子、主人公20歳の学生・尾花晋一。俗物・まがいもの行き交う、愛あり恋あり不倫あり、裏切り、謀略なんでもありの巷のなかで、昂然として、高貴なるものの光芒一閃。石川淳を代表する傑作。
曽我赤兄を祖父にもつ、天智帝の皇女山辺は大津皇子と結ばれる。まさに皇后の座にいま一歩ー。古代の朝廷に渦まく熾烈な権力争いと、奔放な恋の顛末を描き出した9篇の小説。
新選組が大活躍した心はずむ話から、幕軍生き残りが官軍に追いたてられる哀話、また番町皿屋敷伝説の真実など、古老の話をひとつひとつ拾い集める。権力の側からの高みにたった発想や判断はかけらもなく、市井に生き抜く者の温かい心情や心の生命に対する強い共鳴に満ちあふれたヒューマンなエッセイ集。
恋多き女、未婚の母、軍歌を歌わない歌手ー幾多の伝説にいろどられた“心の歌い手”の真実の人間像に迫る。
“僕を、アルマンと呼んでください”アルマンに魅入られた男性とアルマンの不思議な関係を描く表題作など、華麗な光芒を放つ待望の異色作品集.