幽霊屋敷と呼ばれる古い西洋館に、たった一人で越してきた謎の女性。後藤由紀子というその美女と偶然知り合ったことから、ぼくは彼女をめぐる不思議な事件に巻き込まれていった…。思春期の少年が抱く憧れと恐れを鮮やかに描いた傑作中篇「美女の青い影」、気高い精神をもち、非行グループの凄まじい暴力にも決して屈しない少年、犬神明…。名作・ウルフガイシリーズの原型「悪徳学園」、新任の女教師が平和な高校を恐怖に陥れる殺戮の嵐「魔女の標的」など、情念の作家・平井和正の学園SFアンソロジー全七篇。
恐竜やウルトラマンなど子どもたちの人気者、遊べるおりがみを満載。
日本が国力を費やした日露戦争は樺太の南半分の割譲を始めとするさまざまな権益を得て終結したが多大な犠牲を払ったのに比べて、得たものがあまりに少ないという不満を国民が持ち、暴動まで発生するにいたった。-これ以後の日本の進路に大きな影響を与えた戦争のすべてを独自の視点で描いた大作完結篇。
本書は握りを天職と考える職人の“芸談集”である。春夏秋冬、刻々変化するスシダネを、職人がどう握り分けているのか、客はどう賞味すべきか、彼らは、その真髄を余すところなく語ってくれた。
日本海におけるロシヤ・バルチク艦隊との海戦は日本の大勝に終り、戦局は終戦に向けて動き出した。紆余曲折の末、講和の会議は米国大統領ルーズベルトの斡旋を得てポーツマスで開催された。今度は樺太割譲や賠償金といった条件をめぐって、世界が注目するなかで日露間で熾烈な外交戦が始まる。講和の成立か、戦争の再開か…。
「この時代のギリシア人たちはどのように哲学的思索をなしたのか?あの時代の彼らにとって哲学とは何であったのか、われわれにとって哲学は何であり得るか、また一般に哲学はわれわれにとって何ほどかのものであり得るであろうか?」初期ギリシア哲学研究を足場にして、ニーチェが独自の思想を表白した理論的草晃「哲学者の書」をはじめ、『悲劇の誕生』と同時期に属する初期の諸遺稿を収める。
島崎藤村『破戒』のモデルとなった信州・蓮華寺にまつわる人々、シルクロード探検に情熱を燃やした大谷光瑞ー明治から大正にかけての日本には楽天的な国際主義と日本回帰の心情が奇妙に交錯していた。その渦の中で高野辰之・岡村貞一コンビによる文部唱歌「故郷」「春が来た」「紅葉」等が次々と生まれてゆく。
偏屈で漁師たちから恨まれている網元が、突堤の先端で射殺された。犯人は、どんなトリックで被害者を前から狙撃したのか。書下し表題作「見えない風景」ほか全5篇収録。放浪探偵・呪師霊太郎、映画探偵・相司卓間、そして謎の路上探偵…山田ミステリの名探偵が総登場でくりひろげる華麗な謎と論理の競演。著者初の本格ミステリ短篇集。
本書は、晩年のニーチェの思想とその形成過程を知るための必読文献である。また、若き日のニーチェが「回想」ふうに書き残した文章を編集した『自伝集』を併載する。
名にし負う受験校に入学した著者を待ち受けていた“天国と地獄”-初めてのキス、店屋物への執着、ロックバンドへの過激な傾斜、アルコール中毒、ドラッグ、フーテン浪人…底抜けの明るさと底なし沼の悩みを交錯させながら、60年代を駆けた鬼才・中島らもの面白うてやがて哀しき青春放浪記。
生きるとは、自分なりの零を描くこと。どうせ同じ零なら、がむしゃらに加算させるより、静かに零を富ませ、いとおしみたい。エリック・サティのようにー。徹底して醒めながら、醒めることでより深く結びつく、新しい恋愛の形を提出した、野間文芸新人賞受賞作。表題作と対の関係にある姉妹編『苺』を併録。
あまりに刺激的な幼少期の環境と気弱な反面の劇しい性格。詩と放埓の青春と人生を決定した最初のヨーロッパ旅行。『鮫』『マレー蘭印紀行』等の芳醇、厖大な詩と散文を生んだ破天荒な二度目のヨーロッパ行き。戦後の“解体”と“出発”。人間尊重と自我意識で、独りファシズムに抗し、常に現代詩に独自の輝きを放った詩魂の遍歴の道筋を平易淡々と自ら語った波瀾・流浪の“人生記録”。
夜も更けた大都会のあちこちに男と女の見果てぬ夢が咲き乱れ、やがて最期を迎えたクレオパトラの嘆きのように空しさだけがわだかまる。そして、稀代の色事師カサノバのため息にも似た底知れぬ幻滅の嵐が心の中に吹き荒れるー豪奢なひとときと蠱惑的なまざさしが交錯する愛のつづれ織り51篇。
海の男が切り開いた日米交流の原点ペリーに先立つこと8年、禁を破って浦賀に現れたアメリカのある捕鯨船があった。来航の目的は何か。豊富な資料を駆使してつづる日米交流の原点。
48歳にして、ジャズのトリコになってしまった植草さん。その経緯をいきいきと描いた名篇「モダン・ジャズを聴いた600時間」をはじめ、コラージュ、漫画、現代美術などにかんする、胸躍るエッセイ群。
明治以降、近代化がすすむなかで、都市・東京の街並はどのように変貌していったのか。お雇い外国人やエリートの日本人建築家たちがつくる洋風建築ではなく、江戸以来の伝統的な技術を伝承する棟梁・職人たちと市井の人々のエネルギーがつくりだした「伏流」の建築、あるいは和洋折衷の様式に目を向ける。異色の東京論。