命の火をみつめながら…。あい次ぐ友の死を哀惜しつつ、医療のあり方へ苦言を呈し、日本への失望と期待を刻むー命終に到る日々の生の記録。
運よく出所した姜哲煥、安赫は交際を深める。だが、「15号出身者」のレッテルは容易に消えない。しだいに追いつめられていく二人。そして、姜哲煥の父と祖母は相次いで憤死し、安赫の一家は崩壊。「絶対ここから逃げ出して、金日成親子の悪業を全世界にバラしてやる!」復讐に燃える二人は、必死の国外脱出を開始した…。
愚鈍な教え子に翻弄される高校教師、妻に去られた初老のマーケティング・マネージャー、天才の兄を持った気のいい弟…初めて優等生(グッド・ボーイ)をヒーローに据えてさわやかな読後感を残す傑作中篇小説集。
志野・黄瀬戸・織部ー桃山古陶を評価・再興した著者が、実作者の立場から、小野賢一郎、北大路魯山人、青山二郎、益田鈍翁らの功績と共に日本のやきもの鑑賞の歴史を語る「やきものの見方のうつりかわり」、「土から窯びらきまで」とピカソ陶器ほか、学術研究の一端「やきもの東と西」の三部。既成の権威に抗し、天衣無縫の探究心で独自の境地を拓いた現代陶芸の巨人・唐九郎のやきもの魂、卓見横溢のエッセイ。
本書は、住生活の中の身近な話題を起点として、私たちの「今・ここ」の生活を見直すことから始まり、豊かな住生活の「これから・ここ」を皆さんと一緒に考える構成となっています。
大阪市中央区心斎橋筋2丁目5-5心斎橋筋2丁目劇場。わずか114席のちっちゃな劇場だけど、そこから生まれるお笑いは、フレッシュ&パワフル!そこで活躍するメッセンジャー、水玉れっぷう隊ら、“全国区”を目指す奴らを完全紹介!千原兄弟、ジャリズムのスペシャルメッセージもついてるゾ。
本書では革工芸の基本技法である「手縫い」と「かがり」の実際を、イラストでわかりやすく解説しました。仕立ての基礎も、使う道具と並べて紹介してあります。
エロスとは摩擦から生まれる摩擦熱。体と体の摩擦、そして不安や同情や苛立ちや嫉妬などの心の内の摩擦、その両方によって引き起こされる激しい摩擦熱…。離婚した新聞記者と生物の高校女教師は偶然の再会から、かつての時期にもまして狂おしく求め合う。現代における究極の愛と官能を追求した問題作。
阿鼻叫喚の戦場を脱し、漂流の末、生還を果たしたものの「俘虜」の十字架を背負って生きねばならなかった日本将兵。一方、米軍パイロットとしてミッドウェーに消えたイタリー系移民の若者にはまだ見ぬ子がいた。しかし、その息子もまたベトナムの未帰還兵となる。『滄海よ眠れ』の著者が痛切の思いをこめて戦争と「家族」を問う。
明治文壇を代表する批評家であり、小説も書き、外国文学の紹介者でもあった内田魯庵。彼の旺盛な好奇心と洋の東西におよぶ該博な知識は文学を越えて、民俗学そして文明論的な拡がりをもつに至る。江戸から明治への時代の推移は、急激な西洋化に伴い、ある種の伝統の暖絶でもあり日本的ハイカラ文化の誕生でもあった。両者をバランス良い視点から眺め綴る自由主義者魯庵、神髄発揮のエッセイ。
「守成」の時代にいかに組織を活性化するか。リーダー学の教科書から読み解く民主主義時代の「帝王学」。
カリフォルニアのある穏やかな朝。ひとりの女が、見慣れぬ部屋で目を覚ます。かたわらには彼女の夫だと名乗る見知らぬ青年が付き添い、彼女の過去を少しずつ明かしていく。彼女がリズ・サンズボローという名を持っていること、CIAの腕利き工作員だったこと、「肉食獣」という名で知られる国際的な暗殺者に命を狙われていることを。いっさいの記憶を取り戻せぬまま、何者かの襲撃をうけたリズは、コロラドの山奥にあるCIAの極秘訓練所に送られ、カーニヴォアをとらえる作戦指令「マスカレード」に協力すべく、秘密訓練を受ける。が、わずかな記憶がよみがえってくるにつれ、他人に教えられた自分の過去に疑問を抱くようになる。いったい誰を信じればいいのか、どの情報を信頼すればいいのか、そして、ほんとうの自分は誰なのか?この暗闇を手さぐりですすむような狂気の仮面舞踏会の果てに、想像を絶する国際的陰謀が、彼女を待ち受けていた…。
共産主義を鼓舞しながら、その裏切りや挫折のうちに潰えていったものは何だったのか?今世紀を貫く政治的文学的体験における「共同体」をめぐる思考を根底から問い直し、「共に存在する」ことの裸形の相に肉薄する。それはいっさいの社会的関係の外でこそ生きられる出来事であり、そこで分かち合われるのは逆説的にも複数の生の「絶対的分離」である。ハイデガーの「共存在」を換骨奪胎し、バタイユの共同体の試みやデュラスの愛の作品、そして「六八年五月」の意味を問いながら、「共同体の企て」やその政治化の厄々しい倒錯を照らし出し、「共同体」を開放系へと転じる20世紀のオルフェウス、ブランショの思想的遺言ともいうべき書。
地球上初の原爆実験を行った米国南部の地の一牧童が、対日戦闘機乗員となり撃墜、捕虜となって広島で被爆する。広島には飢えと被差別下の朝鮮人、日系アメリカ人らもいた。加害が被害に、被害が加害ともなる錯綜した現代史の闇部を多くの登場人物と寓話性をおびた独自の構成と文体で描き、原爆体験、現代の「核」に新しい光をあてた画期的長篇。英訳本、BBCラジオ劇(一九九六年)ともなった衝撃作。