命がけの恋の世界を歌い、あまりにも有名な『殉情詩集』。人口に膾炙する「秋刀魚の歌」を所収の『我が一九二二年』。強い反俗的批評精神が横溢する「愚者の死」等の「初期詩集」。古今東西の詩人のエッセンスを熟知しつつ、あえて古典的韻律にこめた清新な情感と詩の未来を見すえる凄烈な意志。多くの抒情詩と一線を画する“佐藤春夫の詩”の出発点から大正十五年刊『佐藤春夫詩集』とその「補遺」までを全収録。
批評の言葉はいま停滞する時代の厚い層のなかを通過しているー80年代へむけて批評の現在を告知する「批評について」を序に、著者が青年期に心から没入し読みふけった太宰治、小林秀雄、横光利一、芥川龍之介、宮沢賢治についての論考を収める。ここには日本の近代におけるすぐれた資質の演じた悲劇が、生涯と作品を通して克明に読み解かれている。文庫化に際し、さらに補筆修正がなされた。
敗戦の日から半世紀。戦後派短歌、前衛短歌から、「はっぱふみふみ」、ライトヴァースまで。斎藤茂吉、釈迢空、寺山修司、俵万智ー。現代短歌をリードする著者が選ぶ戦後の名歌百首。時代の素顔を描き、日本人の心象をうつす定型詩の世界に、簡潔にして適切な注釈と解説で導く、待望のアンソロジー。
スミソニアン「爆原展」はなぜ挫折したのか?全米に激烈な論争を巻き起こしたエノラ・ゲイ事件の顛末を、元館長自らが綴る第一級のドキュメント。ついに実現することがなかった幻の展示の全貌。
「ああ、おなかがすいた…むにゃ…」ミニー・マラコフは、ふうとうのふとんの中で、耳をかき、ねがえりをうちました。ミニーは、地下鉄のトンネルにすんでいるはつかねずみの女の子。「ちゃんと晩ごはんをたべたから、ほんとにおなかがぺこぺこってわけじゃないんだけど…なんかおいしいものがたべたい…」目をつぶったまま、ミニーは鼻をひくひく。すると、ゆめの中にりんごがぽっかりとあらわれました。ミニーが、きのう、地下鉄の駅のホームの下でひろったりんごです。
「直観は正しい。直観は神の観方を体感して得るものなのだ」。その直観に導かれての旅は、不思議な出来事の連続だった。偶然はやはり必然なのか。「芸術とは天界を地上に映すこと」。神の意思を伝達する道具たらんと欲する著者に、遂に宇宙人からの交信が復活する。画霊・横尾忠則の辿る精神世界の旅、第四弾。
世紀末ウィーンの細部から『夢判断』の衝撃、ユングとの交友と決別、ドーラや鼠男、狼男など患者の様子ほか、フロイトにまつわるすべてを時代のうねりと共に描き尽くした伝記決定版。
知の領域を縦横無尽に越境し、光の謎と神秘を語りつくす。
正月は鯛の浜焼で酒敵を迎え、夏は虎魚尽しの宿へ旅する、食いしん坊が訪ね歩いた絶品44種、誇るべし、食らうべし。
改めて「国の栄辱」と「独立自尊」を問う。舌鋒鋭く、また切々と胸を打つ、慶応義塾大学最終講義を併録。
独得の節回しと数々の名曲で、昭和・平成の日本を熱狂させる都はるみ。少女期から歌手デビュー、トップスターへの道、美空ひばりとの出会い。そして、レコード大賞受賞までの軌跡、突然の引退宣言。復活から今日まで。日本を代表する歌手の実像と素顔を入念で徹底した取材に基づいて描く、著者渾身のノンフィクション。
全員一致の決議は無効ー二千年前のユダヤ人はそう考え、そう実行した。なぜか?全員一致の決議こそ最も有効ー日本人は現在もこの言葉に疑いを抱かない。なぜか?日本人を震撼させた衝撃の書、いま甦る。
藤沢さんが遺した世界。惜しんであまりある、この作家。六十九年の生涯と作品の魅力のすべてを語りつくす。愛読者のための、完全編集版である。
世界的捕鯨漁隆盛の時代に楽園の島をみまった領有権の行方。