アダルトチルドレンとは決して特殊な人間ではない。経済的に豊かな先進国ではどこにでも見られる、この世紀末にはごく一般的な人たちである。アダルトチルドレンとは人を愛することができずに、ただひたすら愛されることを求めてしまう、どこか子供のままで、大人になることに失敗した人たちである。この過剰にすべてがあふれる時代にあって、わたしたちはみな窒息状態となり、なにか大事なものを失ってしまったのじゃないだろうか。この失ったものをもっとも敏感に感じ取るのは、いつも次世代を担う子供たちである。そして、子供たちは成長することを拒否し始めた。わたしたちが失ってしまった大事なものとはなんなのか、子供たちが成長することを拒否するとはどういうことなのか、その結果なにが生まれてきたのか、そんなことを説明、分析し、解明しようというのが本書の狙いである。
明治文学の黎明を告げる名作「浮雲」を執筆しながらも人生への懐疑より一時筆を断ち、晩年はロシヤに渡って、病に倒れ、帰途ベンガル湾洋上にて、四十五歳で客死。終生、人間いかに生くべきかを自問し、明治の激動期を生き急いだ先覚者四迷の小説、翻訳、評論を一冊に集成。自伝体小説「平凡」、翻訳「あいびき」、「狂人日記」他、評論「私は懐疑派だ」「予が半生の懴悔」「遺言書」等収録。
紙吹雪、灼熱、錯乱、更迭。転機、光明、死闘、そして歓喜。史上最大規模で燃え上がったアジア地区予選を世界基準の眼力で分析した、15都市からの完全報告。
「弱ケレド温カキ若キ人々」の永遠の味方、太宰治ー。選ばれてあることの恍惚と不安に引き裂かれ、自己破壊・脱出・反逆という「下降指向の道」を突き進んだ彼は、自身の弱さをいかにして人間本質の問題に深めえたのか?そしてその真の魔力の源とは何か?数知れぬファンに読み継がれてきた太宰論の古典。
45歳の都清掃局課長・松本洋介は仕事も生活も順調で平穏な毎日を送っていた。見知らぬ小男が妻に声をかける日までは…。鵞鳥声の美少女と大男、闇の弔いに集う無数の人々、そしてゴミ処分場の「夜、光るもの」。現実の持つ危うさを描く、山田ファンタジーの秀作。
収録作品。織田信長の弟・勘十郎信行の奥向きに仕える勝子は、嫉妬に狂った無頼漢にいいなずけを惨殺された。清洲から京、美濃へと続く仇討行の顛末は。(「白日の鹿」)。武蔵国・忍城主・成田氏長の美貌の娘・甲斐姫は、上泉信綱直伝の剣技と兵法で豊臣秀吉の大軍勢に一矢報いるべく、勇躍立ち上がった。(「紅蓮の狼」)。家康の甥・保科久太郎は奔放不羈の悪たれ坊主。だが、長じて名門・後北条家を継いだこの快男児の生涯に影を落とした出生の秘密とは。(「青嵐の馬」)。
ゴールドは、強く、賢く、温かい母親だった。近所の猫好きにさえ嫌われていた黒猫がある日、子連れでわが家にやって来た。野良猫の「意地」も「プライド」も捨て、飢えたわが子の安全と食糧を求めて…人間を超えた猫。
かまびすしい流行言論に与することなく、事物の本質にじかに迫る透徹した知性で、戦後日本に孤独な問いかけをつづけてきた福田恒存。近代化、新憲法、民主主義、平和運動、進歩主義など、戦後文化の根幹にかかわる諸問題への論考を、精選収録。かつて「反時代的」と映りながらも、今、その見事な予見と洞察で人を驚かせる氏の思想の全貌を、本書は三百余の断章に抽出・編集した。
ほーら、巡査がまた子猫を産んだぞォ。講談社エッセイ賞受賞の名エッセイ。