断末魔のような悲鳴が響き渡ったー未曾有の大地震が山内を襲い、禁門の扉がひらく。失った記憶を必死にさがし求める日嗣の御子・若宮。真赭の薄は、浜木綿の決意に衝撃をうける。宿敵・大猿との最終決戦がついに始まったその時、八咫烏の軍を率いる参謀・雪哉のとった作戦とは。壮大な世界の謎が、いま明らかになる!
かつて中学の校長だった東昇平はある日、同窓会に辿り着けず、自宅に戻ってくる。認知症だと診断された彼は、迷い込んだ遊園地で出会った幼い姉妹の相手をしたり、入れ歯を次々と失くしたり。妻と3人の娘を予測不能なアクシデントに巻き込みながら、病気は少しずつ進行していく。あたたかくて切ない、家族の物語。中央公論文芸賞、日本医療小説大賞、W受賞作。
飼い殺しの新人作家と菊池寛の幽霊が騒動を巻き起こす(「Come Come Kan!!」)。『永遠の楽園』のベストセラー作家が舞台のホテルを再訪するが、昔とは様子が違って…(「渚ホテルで会いましょう」)。悪意を持って女性専用車両に乗り込んだタケルは異世界に飛ばされる(「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」)。会員制の鮨屋にエルゴ紐で乳児を抱いた女性が入ってきて冷笑を浴びるが…(「エルゴと不倫鮨」)。クズ夫から逃げ出して実家に戻った「私」を訪ねてきたのは、なんと義父だった(「立っている者は舅でも使え」)。整形クリニックで出会った児童文学全集には人生を変えるヒントが詰まっている!?(「あしみじおじさん」)。菊池寛が他の男たちと違うのは○○なところ…(「アパート一階はカフェー」)。世界の見え方がちょ〜っとだけ変わる7編。
恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。
「あいつをめちゃめちゃにしてやりたい」-。40年近くの年月を経ても、被害者はあの事件を引きずっていた。歳月は遺族たちを癒さない。そのことを私たちは肝に銘じておくべきだと思う。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した著者の、司法を大きく変えた執念のルポルタージュ。
由美子は久しぶりに会ったいとこの昇一と旅に出る。魔女だった母からかけられた呪いを解くために。両親の過去にまつわる忌まわしい記憶と、自分の存在を揺るがす真実と向き合うために。著者が自らの死生観を注ぎ込み、たとえ救いがなくてもきれいな感情を失わずに生きる一人の女の子を描く。暗い世界に小さな光をともす物語。
「なんで俺がこんな仕事を!」女の子雑誌で孤軍奮闘する新米編集者の爽快お仕事小説。
はな、毎朝のみそ汁つくり、がんばってるよ。天国のママとの約束だからね。「朝日新聞」「24時間テレビ」ほかで大反響。人気ブログ「早寝早起き玄米生活」の一家の物語。
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していたー。有能だが不運な女探偵・葉村晶が文庫書下ろしで帰ってきた!
ベストセラー『新・戦争論』に続く最強コンビの第2弾!各地でさまざまな紛争が勃発する現代は、まるで新たな世界大戦の前夜だ。激動の世界を読み解く鍵は「歴史」にこそある!
杉村三郎らバスジャック事件の被害者に届いた「慰謝料」。送り主は?金の出所は?老人の正体は?謎を追う三郎が行き着いたのは、かつて膨大な被害者を生んだ、ある事件だった。待ち受けるのは読む者すべてが目を疑う驚愕の結末。人間とは、かくも不可思議なものなのかー。これぞ宮部みゆきの真骨頂。
金が欲しいんやったら爺を紹介したる。一千万でも二千万でも、おまえの手練手管で稼げや。妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体に。だが、その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆けつけた耕造の娘・尚子と朋美は、次第に牙をむく小夜子の本性を知り…。
ソフィーの目の前に転がる男児の無残な死体。ああ、私はついに人を殺してしまった。幸福だった彼女の破滅が始まったのは数年前。記憶にない奇行を繰り返し、彼女はおぞましい汚名を着て、底辺に転落したのだ…。ベストセラー『その女アレックス』の原点。あなたの心を凍らせる衝撃と恐怖の傑作サスペンス。
八咫烏の一族が支配する世界山内で、宗家を守るのは山内衆と呼ばれる上級武官。勁草院という養成所で厳しい訓練がほどこされ、優秀な成績を収めた者のみが護衛の栄誉に与る。平民の茂丸、下人の千早、大貴族の明留、そして武家の雪哉。生まれも育ちも異なる少年たちは、勁草院の過酷な争いを勝ち抜き、日嗣の御子を護る武人になれるのか…?「八咫烏シリーズ」第四弾。
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって、若者と出会ったー。奇妙で不穏でうつくしい、三つの愛の物語。
なぜ、それが“物語・歴史”だったのだろうかー。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する、“大いなる野性”坂口安吾の“物語・歴史小説世界”。
下町の小さなハンバーグ店に集う、おかしな人たち。みんなちょっとずつ何かが欠けていて、つながりあって、ひとつの命になっている。世界の美しい色を回復させる、滋養たっぷりの小宇宙。
年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ。出会い、別れ、再会、また別れー。人は会うたびに知らない顔を見せ、立体的になる。人生の特別な瞬間を凝縮した、名手による珠玉の六編。
浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描いた比類なき名作。虚実の渦を作り出したもう一人の近松がいた。