本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、左官の八五郎、後家女のお染ーひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってきて…。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす、江戸落語さながらの笑いと情緒にあふれる連作時代小説。文庫書き下ろし。
「飲むほどに酔うほどに、かつて奪った命の記憶が甦る」-最強と謳われ怖れられた、新選組三番隊長斎藤一。明治を隔て大正の世まで生き延びた“一刀斎”が近衛師団の若き中尉に夜ごと語る、過ぎにし幕末の動乱、新選組の辿った運命、そして剣の奥義。慟哭の結末に向け香りたつ生死の哲学が深い感動を呼ぶ、新選組三部作完結篇。
少年「梗」を死の淵から救ったのは、竹から生まれた吸血鬼バンブーだった。心優しきバンブーと、彼に憧れる梗との楽しくも奇妙な共同生活が始まる。だが、バンブーにとって、人間との交流は何よりの大罪であった。
ダンサーと、画家の兄弟。答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。
めげず腐らず、花を咲かせた13人の女たちに聞いた「私」の見つけかた。
鮮烈なイメージと豊かなストーリーで織りなされる30の連作短編集。一つずつ順番に、前話をゆがんだ鏡像のように映しだし、最後の話が最初の話へとつながって、読者をめくるめく意識の迷宮へと導く。人間存在の神秘と不可思議さを映し出す鏡の世界の物語は、『モモ』『はてしない物語』とならぶ、エンデの代表作である。
退部を賭けたポンクと燎平の試合は、三時間四十分の死闘となった。勝ち進む者の誇りと孤独、コートから去って行く者の悲しみ。若さゆえのひたむきで無謀な賭けに運命を翻弄されながらも、自らの道を懸命に切り開いていこうとする男女たち。「青春」という一度だけの時間の崇高さと残酷さを描き切った永遠の名作。
「私は父親になるのかい?」江戸町名主の跡取り息子麻之助に待ち受ける運命は。「まんまこと」シリーズ第三弾。
江戸の吉原で黒い狐面の集団による花魁殺しが頻発。北町奉行所の貧乏同士、今村圭吾は花魁たちを抱える女衒に目をつけ、金で殺しを解決してやるともちかけた。一方、大工の幸助は思いを寄せていた裏長屋の華、おようの異変に気づき過去を調べ始める。「姫川」シリーズの著者初の時代小説。傑作捕物帳登場。
和議成立ののち、平穏な日々が戻ったのも束の間、血なまぐさい因縁が風太郎を追い立てる。やがて訪れる最後の大決戦。燃え盛る大坂城目指し、だましだまされ、斬っては斬られ、忍びたちの命を懸けた死闘が始まる。崩れ落ちる天守閣、無情の別離、託された希望。圧巻のクライマックス。万城目学、時代小説でもお構いなし!
文房具メーカーで派遣社員として働いていた26歳の女性は、正社員になれず、家賃が払えなくなりあっという間に貧困になだれこんでいく。漫画喫茶で寝泊りして、菓子パンで腹を満たす生活から抜け出すために、彼女が選んだのは「出会い喫茶」でお金を稼ぐことだった。生きるために「ワリキリ=売春」をしなくてはいけないのか。
住所不定の路上シンガー、キリエは歌うことでしか“声”を出せない。マネージャーを自称する、謎多き女イッコ。二人と数奇な絆で結ばれた夏彦。別れと出逢いを繰り返しながら、それぞれの人生が交差し奏でる“讃歌”。「あの日」から13年の月日を経て岩井俊二が辿り着いた、心に棘が突き刺さる、忘れられない物語。
1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。20世紀は、「何世紀にもわたる不断の発展の末に現われたものでありながら、一つの出発点、一つの夜明け、一つの発端、一つの揺籃期であるかのように見える時代」、過去の模範や規範から断絶した時代。こうして、「生の増大」と「時代の高さ」のなかから『大衆』が誕生する。諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する大衆。オルテガはこの『大衆』に『真の貴族』を対置する。「生・理性」の哲学によってみちびかれた、予言と警世の書。
活発で男まさりのミカ。スカートなんてイヤ!おっぱいなんていらない!思春期の入口にたつ不安定なミカを、双子のユウスケがそばで見まもる。両親の別居、姉の家出、こっそり飼っていた「オトトイ」の死…。流した涙の数だけ幸せな未来が待っている。第49回小学館児童出版文化賞受賞作。
ー神の声が聞きたい。牧師の息子に生まれ、一途に神の存在を求める少年・早乙女。彼が歩む神へと到る道は、同時におのれの手を血に染める殺人者への道だった。三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の真相とは?巧緻な仕掛けを駆使し、“神の沈黙”という壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」。
俺が、おまえを誘拐してやろうか?ひょんなことからヤクザの組長の娘を誘拐する羽目になった翔太郎。関門海峡を挟んで、脱力感あふれる青春が、小気味よい九州弁が、驚愕のミステリーが炸裂する。とびきりキュート、空前の身代金トリック。
リーマン、AIG、メリルといった大手金融機関の超弩級破綻が続くウォール街。これまで繁栄を誇ったアメリカ経済はいかにして間違ったのか。NYの日本人投資銀行家が鋭く抉るアメリカンスタンダード「失敗の本質」。
世界中が、アメリカ発の住宅好況に酔っていた二〇〇〇年代半ばそのまやかしを見抜き、世界経済のシステム自体が破綻するほうに賭けた一握りのアウトサイダーたちがいた。難攻不落の鉄壁のまやかしを演出するのは、ゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズなどの投資銀行ムーディーズなどの格付け機関に、米国政府。彼らに挑んだその大相場を人は、「世紀の空売り」と呼んだ。『マネー・ボール』を超えた痛快NF。
中学一年生の海月は幼なじみの樹絵里に誘われて、「飛行クラブ」に入部する。メンバーは二年生の変人部長・神ことカミサマ、野球部兼部の海星、不登校で高所平気症のるなるな、運動神経はないけど気は優しい球児。果たして彼らは空に舞い上がれるか!?友情、家族愛、恋、冒険ー全てがつまった傑作青春小説。