若き体育会系文芸編集者の美希。ある日、新人賞の候補者に電話をかけたが、その人は応募していないという。何が起きたか見当もつかない美希が、高校教師の父親にこの謎を話すと…(「夢の風車」)。仕事に燃える娘と、抜群の知的推理力を誇る父が、出版界で起きる「日常の謎」に挑む新感覚名探偵シリーズ。
コーラルブルーの海に囲まれ、亜熱帯の緑深い森に包まれている“日本でいちばん天国に近い島”志手島。その島で世界最大級のカマキリが発見された。『びっくりな動物大図鑑』を執筆中のフリーライター・藤間は取材のため、現地へ向かう。だが、楽園とは別の姿が…。
至極のエッセイ45本に加え、文庫版の「おまけ」9本&「あとがき」を収録。あなたの心の中でうごめく「曖昧な感情」に、「曖昧なまま」そっと寄り添ってくれる沢山の言葉たちー最果タヒ初のエッセイ集が待望の文庫化!
北関東に、家々の壁に原色で描かれた稚拙で奇妙な絵で話題となり注目を集める小さな町があった。描いているのはすべて、ひとりの男だという。ライターの「私」はその男・伊苅にインタビューを試みるも寡黙でほとんど語らない。周囲に取材を重ねるうちに、絵に隠された真実と男の孤独な半生が明らかにー。
歴史上、最も多くの命を奪ってきた脅威がパンデミックだ。新型コロナウイルスのワクチン、治療薬も確立していない今、歴史を見つめ直す必要がある。一級の歴史家が、平安の史書、江戸の随筆、百年前の政治家や文豪の日記などから、新たな視点で日本人の知恵に光をあてる。
「絵師になります」明治5年、そう宣言して故郷の笠間(茨城県)を飛び出した山下りん。画業への一途さゆえに、たびたび周囲の人々と衝突するりんだったが、やがて己に西洋画の素質があることを知る。工部美術学校に入学を果たし、西洋画をさらに究めんとするりんは導かれるように神田駿河台のロシヤ正教の教会を訪れ、宣教師ニコライと出会うー。日本初のイコン画家、画業に捧げた生涯。
外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身の構築を目論んでいる。恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑い、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめる込んでゆく。そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は“分身”の力を使おうとするのだが…。高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影ー富に近づけば、死にも近づく。現代人の葛藤を描く羽田圭介の新たな代表作。
「ホノカは何度も炎上したが、そのたびに必ず復活した。炎上が、文字通りこの不死鳥をさらに強くしたのだ」脅される“パパ活女子”、女性を狙う“ぶつかり男”、トリプルワークの“デリバリー配達員”、人気女子アナを襲った“ネット炎上”…。いま池袋で起きているトラブルに、Gボーイズが打った手とはーI/W/G/P第17弾!
新小岩駅南口、下町情緒溢れる商店街の路地裏にある居酒屋・米屋。カウンター七席の小さな店に今夜も悩みを抱えた客が訪れる。定番のお酒と女将の手料理を口にすれば、いつしか心は軽くなって…。でも、この店には大きな秘密があったのです。「食と酒」小説で大人気の著者が贈る、ちょっと不思議でしみじみ温かい居酒屋物語。
出ていかないし、従わない。因習的な故郷に、男性社会からのいわれなき侮蔑に、メディアの暴力に苦しめられた時に、「わたし」はいつも正論を命綱に生き延びてきたー。理不尽で旧弊的な価値観に抗って生きる者に寄り添う、勇気と希望の書。著者初の自伝的小説集。
衝撃の結末に心がざわつく。『あなたの不幸は蜜の味』に続く鳥肌必至のアンソロジー!
裕福な家に嫁いだ千代と、女中頭の初衣。「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。
薬ではなく、本物の猫を患者に処方する怪しげなクリニック「中京こころのびょういん」。ノリの軽いニケ先生と無愛想な美人看護師・千歳さんのもとを訪れる患者は彼氏との関係に悩む女子大生や妻に先立たれた老人、保護猫センターで働く男など事情も様々。「処方猫」と過ごす時間によって、患者たちは少しずつ心の傷を癒やしていく。一方、猫を処方するニケ先生には秘密があってー?大人気シリーズ第二弾!文庫書き下ろし。
土手下に転がされていた無残な遺体。暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。「目には目を」。明かされる悲しい過去、次々と現れる容疑者、そして新たな殺人。罪を償うべきはーあなたかもしれない。『永遠の仔』『悼む人』の著者が描く、ノンストップ・クライムサスペンス。
救いを求めて旅だった若者たちはなぜこんな所に辿り着いてしまったのか?地下鉄サリン事件を生んだ「たましい」の暗闇に村上春樹が迫る。オウム信者徹底インタビュー。
海産物の宝庫である蝦夷地からの商品の需要はかぎりなくあった。そこへは千石積の巨船が日本海の荒波を蹴たてて往き来している。海運の花形であるこの北前船には莫大な金がかかり、船頭にすぎぬ嘉兵衛の手の届くものではない。が、彼はようやく一艘の船を得た、永年の夢をとげるには、あまりに小さく、古船でありすぎたが…。