物語論・言語行為論の視点を用いつつ、「花ごもり」から「われから」にいたる作品をとりあげ、女性への差別が日常的であった明治時代にあっておどろくほど現代的なジェンダー意識をそなえていた一葉文学の謎にせまる。
“偉大な科学者にて良妻賢母”伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨ー、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。自然科学を女子の手に!
彼女たちの高齢期を、いかに社会として迎えるか。在日タイ女性が抱える脆弱性と高齢期に向けた選択を制約するものとはー。越境的な家族関係、それぞれの社会・制度に埋め込まれたジェンダー規範に着目して分析。高齢期を迎えるニューカマーの実相に迫った嚆矢となる研究成果。
社会進化論と優生思想、民族主義と人種主義、身体の国民化とジェンダー…。近代世界が非対称的ながら等しく直面したこれらの問題群を、中国はどう経験し、自らの近代を彫琢していったのか。梁啓超、譚祠同、章炳麟らの思想家、女性教育家、科学者、「纒足」廃止論者などのテキストを、広い視野のもとに縦横に読み解き、中国の近代を描き出す。
子育ては『わくわく』『つらい』『不安』?多様化する育児雑誌が映し出す子育ての現在。子育てをめぐることばの束(言説)を分析し日常に浸透する密かな統制を読み解く。育児メディア研究の最前線。
人間精神の自由と平等を標榜し、19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803〜82)。自己信頼にもとづく個人主義と、社会に対する責務ー。奴隷制廃止運動と女性解放運動等、社会改革運動との関わりを詳述、進化、人種、ジェンダーの視座から、社会改革者としてのエマソンを再評価する。エマソンの家庭、フラーやソローとの交友関係にも焦点をあて、思想の実践も考察する。
欧米には見られない独特なジャンルである「少女小説」。明治末期から現在までの少女小説の物語構造を代表的な作品やジュニア小説・コバルト文庫、マンガ、ラノベを素材に読み解いて、時代ごとに変わる“少女像”や少年/少女の分割線の変容をあぶり出す。そして、明治末から百年間にわたり受容されてきた少女小説がはらむジェンダーの問題系を解明する。
避難所、仮設住宅、復興行政など復興に関わるあらゆる場面で女性たちの声がかき消されてしまっている。女性の声はなぜ聴かれないのか。災害・復興におけるジェンダーについて考える。
市民主権による平和構築の必要性を訴えるとともにジェンダー平等実現のための課題と展望について熱く語った待望の講演録。代理母・クォータ制・平和的生存権など最新の問題に憲法から切り込む渾身のメッセージ。
ベル・フックスのアメリカ黒人現代アート批評、待望の邦訳。白人至上主義的・資本主義的・家父長制による排他的な視覚の政治学が深く浸潤する現代アートとその批評、システムの内部にメスを入れ、真の黒人の美学を開示する。
日本では、パートタイム労働市場の拡大とパートタイマーの企業内定着と同時に、パートタイム労働者と正社員との賃金格差が広がり、「職務と処遇の不均衡」が拡大している。本書では、スーパーマーケット産業の事例を通じて、このような現象が起きる構造と過程を、ジェンダー視点と行為者戦略アプローチから、企業、労働組合、パートタイマー本人それぞれの行為戦略を分析する。日本的パートタイム労働市場の特徴の形成と再生産を解き明かす試み。
10代から50代まで、職業も人種もジェンダー表現もさまざまなノンバイナリーたちが、自身を率直に語る回想録。
ビューティー・サロンは「女らしさ」を読み解く絶好のスポット。身体・ジェンダー・健康をめぐる利用客の多彩な関心と、美容という労働の位置と経験を鮮やかに浮かび上がらせ、新たなフェミニスト思想の地平を拓く。
ときに人々を魅惑し、ときに宗教的・倫理的な観点から可視化を規制される乳房は、隠蔽されながらも性的な消費の対象になり、時代や社会によって「エロス」「卑猥」「母性」などのさまざまな価値観と結び付けられてきた。社会状況の変革や価値観の揺らぎなどの「時代の危機」に乳房イメージが生産・消費される契機を読み取り、ヨーロッパ中世、近世イタリア、戦中・戦後の日本映画、ピンクリボンキャンペーンなど、古今東西の乳房イメージと社会との関係を明らかにする。それらを通じて、女性の身体そのものから乖離している乳房イメージと、それに密接に絡み合うジェンダーの力学を解明する乳房文化論。
「男性優位社会」日本における男の生きづらさとは。ジェンダー平等をめぐる教育現場での錯綜は男子に何をもたらすか。男子の学力不振、厄介者の男子、「男らしさ」の市場価値の下落…男のあり方をめぐるパラドックスに迫る。
男女ともにワーク・ライフ・バランスを実現するためのカギとは?一人ひとり異なる生きた個人の内面の声と、働き方やジェンダー規範という社会の構造的な問題とを、生涯発達心理学の視点から結びつける。