詳細なデータを駆使し、一九八〇年代以降の生活保障システムを分析。貧困や地域格差といった偏ったお金の流れが、ジェンダーと深くかかわることを明らかにし、現代日本の社会・経済の脆弱性を浮き彫りにする。誰もが社会で認められ、働き、所得を得て、暮らし続けていくことができる、包摂社会への視座を与える力作。
現代文学の最前線で活躍する女性作家たちー山本文緒・絲山秋子・津村記久子・笙野頼子・多和田葉子・松浦理英子・金原ひとみ・鹿島田真希・姫野カオルコの小説を、結婚制度とそれにまつわる社会状況を照合しながら多角的に考察する。労働・異性愛主義・生殖という三つの観点から、現代日本の「結婚」が、その時代におけるジェンダーの身体化や主体の自己認知とどのように相関しているかを探る。また、複数領域におよぶ理論と豊富な注釈を加えることで、個人のライフコースへ介入する様々な“結節点”が存在する状況を再接合し、「結婚」に関する秩序を照射した。このように「結婚」の自明性を解体すると同時に、社会的な諸条件と制約から芽生える意思と利害によって、人間がどのような主体と親密性を築き得るかという問いを、本書は文学作品を読解することの可能性のなかで発展させたものである。
「ジェンダーに関わる多領域をカバーする」「女性の人生の節目を取り上げる」「最新の法律等の情報を盛り込む」ことを基本方針として、女性をめぐる現代社会における問題について、映画やマンガ等を用いながら分かりやすく解説。改訂版では、LGBTや奨学金問題等の近年関心が高まっているテーマに関する解説も新たに掲載。また、2017年施行の改正男女雇用機会均等法、2018年施行の改正介護保険法等の最新の法令改正にも対応。
織工として定収入を得る人から、彼女たちの家事を代行して稼ぐ人まで、戦間期にイギリスの女性の働き方や暮らしは一気に多様化する。理論と実証研究の統合を目指した意欲的なオーラル・ヒストリー。一九二〇年代以降にイングランド北西部、ランカシャーで就労していた女性の経験について、一九九〇年代初頭に実施した調査をまとめたもの。
労働のグローバル化が進む中で、脆弱な環境に置かれた現代ラテンアメリカの女性たちが国境を越え、移民労働者として国外労働市場に組み込まれるプロセスと、その中で女性たちが直面する様々な問題を明らかにする。
女たちはたくさんの仕事をこなしてきた。バリの女たちの日常が、日本の女たちの現在を照らし出す。交響する民族誌。
一つの価値観をおしつけ、自由な批判精神を摘みとるー原理主義克服のために、原初史(創世記1章〜11章)に託された真のメッセージはなにかを問う。
アフリカの民間信仰を源流とし、19世紀にハイチのヴードゥー教の「生ける死者」となった「ゾンビ」。1932年にアメリカ映画で吸血鬼に次ぐモンスターとして登場後は、またたくまにスクリーンを席捲し、やがては社会のさまざまな事象を代弁し、刻印できる便利な「表象・隠喩」として定着した。理性も知性ももたず人を襲い、噛まれた者も同類になっていくー本書はこうしたゾンビのあり方に、この世/主体/資本主義/人種/ジェンダーの枠組みから逃避する道の可能性を見出す。多彩な現代思想の手法を駆使して、現代社会でゾンビ表象が担う意味をあぶりだした知的冒険の書。
社会学するとは何かーメディアを通して様々な「常識」や「記憶」が創られている。身近な文化現象を、理論/歴史/流行現象の視角から再考し、社会学を「実践」することの面白さと奥深さを開示する。
米国の宗教学者による水子供養の画期的論考、待望の邦訳。史料分析と現地調査により、大衆メディアの活用、徹底的な商業化、超宗派的な儀式の性格を多面的に描き、その根底にある女性差別、胎児中心主義的イデオロギーを暴き出す。
共同体に滅亡をもたらす者、革命家として憲兵の刃に倒れる者、産まれたばかりの我が子を手にかける者ー死と暴力にまみれ、恐怖の相貌を帯びた女性たちはなぜ描かれたのか。19、20世紀を生きた作家たち、宮崎夢柳・福田英子・平林たい子・三枝和子の諸作品から、今なお根強く残るジェンダー秩序と、女性表象や女性解放をめぐる問題に鋭く切り込む。
近世の版本、ポスター・雑誌、CM、流行歌、映画、小説などの多彩な資料から、遊女、町娘、農婦、上流階級女性、モダンガール、作家、街娼、女工、主婦の喫煙や「たばこ屋の娘」の表象、戦争とたばこ、嫌煙権、分煙社会の方途に挑んだ意欲作。
男性優位の主流政治学が見落としてきたものとはなにか。叛骨の精神が組み込まれたジェンダー概念を用い、リベラリズムとデモクラシーに内在する不平等を解き明かす。
メディアのなかにあらわれた病、女、血、アイヌをめぐる差別と定型の物語から、韓国併合、閔妃暗殺、大逆事件などの暗殺をめぐる物語まで。物語のほころびをとおして、帝国日本の成立過程をさぐる気鋭の論考。