本書の直接的な問題関心は、二〇〇五年から二〇一五年までの時期を中心とした女性のM字就業の解体を中核的内容とする日本におけるジェンダー革命の端緒的展開の予測と二一世紀の世界史的なジェンダー革命の展望を明らかにするための歴史的・理論的考察である。そのためにフェミニズムの古典としてのボーヴォワール『第二の性』と、マルクス経済学の古典としての『資本論』とを比較検討しつつ、マルクスが検討しえなかった歴史と現状の資料、とくに性・生殖史と近現代の人口史の資料によって『資本論』を再検討する。
現在、宗教とフェミニズムが交錯する場は複雑に入り組んでいる。この複雑な語りの交差するところにこそ、現代女性の自己再生への可能性がある。宗教は「家父長制の道具」なのか。抑圧された女性を救う力となるのか。
「帝国」の暴力に抗し「帝国のフェミニズム」を越える、女性国際戦犯法廷。
密かに進行するジェンダーフリー教育や過激な性教育、多発するドメスティック・バイオレンス告発にセクハラ訴訟。これらの現象に底流する思想こそフェミニズムであり、その目的とするところは「家族の解体」と「男女が敵対」する社会の実現に他ならない。本書はこの現代の“悪魔の思想”の正体を余すところなく明らかにした「フェミニズム解体新書」である。
旧ユーゴスラビア紛争下で、民族や宗教の違いを越えて女性の戦争被害者を支援したフェミニストNGOがあった。民族紛争といわれたものの実態は、民族の名のもとに暴力化していったナショナリズムではなかったのか。現地にいく度も足を運び、被害者救済や平和な社会をつくるために活動する人々と交流を続けている著者が、いかなるナショナリズムにも与しないフェミニストNGOの活動から、ナショナリズム克服の可能性を探る。
本書のタイトルは「フェミニズム法学」である。本書によって、性差別社会をなくす営みの一翼を担いたいという思いから、また、性差別と人権侵害への闘いのために法を必要としているすべての人たちへの支援となることを願って、あえて「フェミニズム法学」を名乗ることにした。本書によって、法律学が社会の中心に位置してきた男性による「知の世界」であったことを批判しつつ、ジェンダー視点から、新たな法律学を構築しようと試みるものである。本書では、生活と法の新しい関係を創り出すために、「労働」、「家族」、「身体・性」という三つの領域を対象として設定している。
「国家」と「わたし」の関係はどうあるべきか。過去のシティズンシップ(「市民権」)論、主にリベラリズムの議論を批判的に再検討しながら、「平等で自由な人格」がよりよく尊重されるための新たな理念を構想する。最終章で展開される、いかなる者の視点をも排除しない可能性を秘めたフェミニズム・シティズンシップの議論は、フェミニズム、ジェンダー論にとって必見。本書は、「シティズンシップ」論入門として最適であると同時に、社会科学の新局面をひらく挑戦の書である。
「“ポスト”フェミニズム」とは何か?精神分析学、ポスト構造主義、ポストモダニズム、ポストコロニアリズム等の批評理論と交差しながら、理論をさらに先鋭化・深化させ、新たな領野を切り拓いていくフェミニズムの新段階のことである。先鋭化・深化を進める“ポスト”フェミニズム理論の図解による初の入門書。ラカン、フーコーから、バトラー、セジウィックまで。
「ポスト」とは「フェミニズムが終わった」という意味ではない。近年、他の批評理論と交差しながら理論をより先鋭化・深化させ、新たな領野を切り拓いているフェミニズムの新段階のことである。本書は、“ポスト”フェミニズム理論が、どのような現実的文脈から内発的に要請されてきたのか、社会・政治・科学の現況が今何を思考することを迫っているのか、そして、今後どのような展望を描きうるのかを問いかける、新たな時代への「挑戦」の書である。
フェミニズムをまともに語り直すために。法を社会的差別の隠蔽装置とする短絡を戒め、法の役割を真剣に考える。安逸と独断のまどろみを衝く、法哲学の鋭鋒。
世の中の理不尽と女の快楽のあいだ-あっちで悩み、こっちで怒り、それから笑う。ノーブラ、スッピン、冷蔵庫なしで生きる貧乏フェミニストが読む、日常・身体・本。
本書は、抽象的説明に終始しがちな道徳哲学の諸学説を、安楽死・同性愛・中絶・動物の権利・死刑制度など現代社会のさまざまな現実と引き合わせることによって、他に類をみないほど鮮やかに描き出している。これらの豊富で適切な実例によって、倫理学上の問題とは、書物の中に閉じ込められた空虚な理論ではなく、我々の眼前で生起している生々しい出来事に他ならないということが実感されるであろう。
古代から現代まで女性たちは両性の平等を求めてたたかってきた。そのたたかいの原動力となった思想の歴史をたどるとともに、今も生成の過程にあるフェミニズムを、労働、宗教、エコロジー、母性、ポスト・コロニアル、セクシュアリティなどを通して検証し、未来への展望をひらく。
「法的制度としての婚姻を廃止せよ」。「性の絆」から「ケアの絆」へ、新しい家族の定義が、いま生まれる。