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ラジオ/謎ラジオのことを語る

日本国内で買える中華謎ラジオ「MTDR17」


Mlabs(エムラボ) MTDR17 は東京の株式会社明珍が日本国内向けに発売した FM ステレオ/AM ラジオ放送受信機です。会社名の「明珍」は「みょうちん(呉音)」ではなく「めいしん(何音?)」と読ませるようです。社名からして謎感満点ですが、中国企業の OEM 製品を主に扱っているようで、2022年からラジオ市場に参入しています。

当初は販路がかなり限られていたようですが、現在はビックカメラ系列やヨドバシカメラなどでも取り扱いがあり、入手しやすくなりました。Amazon ではまだ売られていないせいか、読むと頭が痛くなるようなわけのわからないレビューさえ見当たらず、謎に包まれていましたが、ようやくその秘密を暴くことができます。

その商品の一つ MTDR17 は、画像検索したところ広東省の珠海市魅鼎科技有限公司(Zhuhai Meding Technology Co., Ltd.)という企業が、ほぼ同じ形でヨーロッパ系デジタル放送 DAB+ や Bluetooth にも対応した製品を供給していることがわかりました。おそらくここが製造元でしょうか。

alibaba.com に掲載されている魅鼎科技の製品。

なお現在は後継機の MTDR27 が発売されていますが、製品情報を見る限りは、給電用の USB 端子を Type-C に変更し、本体の表記を日本語にしただけのようなので、入れ替えで 17 が値引きされていればお得です。今回、ヨドバシ.com で通常価格より1000円引きの2980円で購入しました。

箱も最近のソニー製品をもほ……良い所を学び取ったような雰囲気。

MTDR17 の外観は、大きさも含めてソニーの旧製品 XDR-56TV によく似ていますが、下手な引き写しというわけではなく、うまく脱個性化して「似た機能を実現するから似た形になるのはしかたない」と言えないこともないぎりぎりの線を探っているかのようです。形状はそれなりに整っており、プラスチックの成形も良好で、ロッドアンテナは収納状態で水平がきちんと取れているなど、工作精度は決して低くない水準にあります。

給電用に長めの USB A-microB ケーブルが附属する。
電源は単三形の電池四本。
一般的な携帯ラジオより大きく、ホームラジオよりは小さい中型機だ。
右側面のへこみにイヤホン端子と給電用の USB 端子がある。
スピーカーの覆いは金属製で、左側面の半ばまで回り込ませてある。
上面には電源や音量ダイヤルなどがある。

本機は AM/FM 各二十件のメモリー・チャンネルを備えています。正面の円形キーは上下でメモリーの選択、左右で周波数の送りができ、モードの切り替えなしで両方の操作ができるのはなかなか快適です。またこれとは別に、上面のボタン(1)〜(3)に周波数を記憶させることもできます。

液晶画面は何か操作をしたときだけ周波数を表示し、数秒後に時刻表示に戻るという動作です。周波数がずっと見えている必要もないので便利と言えるでしょう。時刻が表示されている状態から、周波数やメモリー、電源の操作をするには、一度どれかのボタンを押して周波数の表示にしたあとで、目的の操作をする必要があります。誤操作の防止を意図しているのでしょう。

スリープタイマーは電源が切れるごとにリセットされる仕様で、都度設定する方式です。アラームはピピピという音が鳴るだけですが、どれかボタンを押すと止まるので、電源を二回押すようにすると、そのままラジオを聞くことができるわけです。

感度は、AM は並の携帯ラジオ程度という感触です。FM は七段約54cmのロッドアンテナそ備え、大きさの近い RF-U155 や ICF-306 よりも高感度で、多くのラジオの中でもかなり良いほうではないかという印象です。両方のバンドで、ソフトミュート(電波が弱いときに音量を自動的に小さくする機能)はかなりきつくかかります。

音質は、AM はフィルタがかなり広く、AM 放送の限界である 7.5kHz 前後まで高音が出ているようです。NHk 第二の語学番組を流しても発音が明瞭に聞き取れます。そのかわり混信の影響を受けやすく、特に夜間はそのための雑音が増えます。またノイズフロアがやや高めで、電波がやや弱めだと雑音が少し気になりますが、十分な強さで入感する地元局は快適に聴けるでしょう。

MTDR17 中波 AM 放送のスペクトログラム(一例)

FM は高音が RF-U155 などと同様に伸び切らず、低音は U155 より弱めで、音楽が流れると物足りなさを感じるものの、全体的に変な癖はなくすっきりとしており、煩さがなくまずまず十分な響きです。イヤホンを挿しているときのみ、上面の[LOCK/ST.]ボタンを押してステレオに固定できます。

MTDR17 FM 放送のスペクトログラム(一例)

スピーカーは U155 とほぼ同じ直径 66mm で、心地良さのある音の広がりが楽しめます。音量調整は38段階のデジタル式で、急に大きさが変化するような所がなく、枕元で使うにも十分な細かい制御ができます。

欠点としては、電池持続時間が音量中程度で29時間程度とされていてやや短かいこと、電池残量の表示がないこと(液晶上には電池の表示も用意されているが使われていない……)、XDR-56TV のマネをしているのにハンドルが省略されていることなどを挙げておきます。欲を言えば AM でフィルタの広さを切り替える機能も欲しい所です。

このように本機は市場に機種の少ない中型ラジオであり、聴き心地の良い音の出と取り回しの良さを両立し、価格のわりに多機能で性能も良好、外観の雰囲気もきれいな製品でした。5000円台以下でデジタル操作のできる時計付きのラジオを探している人にお勧めできます。