しがない中二階なれど魅入られた世界から足は洗えず、今日も腰元役を務める瀬川小菊は、成行きで劇場の怪事件を調べ始める。二か月前、上演中に花形役者の婚約者が謎の死を遂げた。人目を避けることは至難であったにも拘らず、目撃証言すら満足に得られない。事件の焦点が梨園の住人に絞られるにつれ、歌舞伎界の光と闇を知りながら、客観視できない小菊は激情に身を焼かれる。名探偵今泉文吾が導く真相は?梨園を舞台に展開する三幕の悲劇。歌舞伎ミステリ。
この話は、大抵、原話をけずりおとし、自分のかわいい娘を、ぜひ、世界じゅうで一番強いもののところへ嫁にやりたいという長者の願いが表現されずに、ただ、太陽から雲へ、雲からかべへ、かべからねずみへと、ぐるりひとまわりするおもしろさだけに終っています。これでは、昔話のほんとうの楽しさは味わえません。幼い子どもたちは、ストーリーだけに目をうばわれがちですが、できれば原話にできるだけ近い形でめぐりあわせたいものです。そこで、この本では、ねずみが世界で一番強いことにきまったとき、長者は、娘に求婚してきた若者たちにすもうをとらせ、勝ちのこったもののところへ嫁がせるようにしました。4・5・6歳向け。
ラットとは、知的でかわいいネズミのなかま。ヨーロッパでは、ペットとしても人気があります。この本は、ドイツの田舎で150匹ものラットと生活を共にし、わが子同様の愛情をそそいできた女性による、心あたたまる感動的な観察記録です。ほほえましい恋愛、必死の巣造り、厳粛な出産、すさまじい重労働の育児、手におえない子供たちのいたずら…。元気に走りまわるラットたちの愉快なふるまい。
きりのなかではりねずみが体験したのは、あこがれ、おどろき、おそれ、そして、よろこび…、そう、人生そのものなんだ。映像の詩人と呼ばれ、世界的に評価の高いロシアのアニメーション作家ノルシュテインが、短編アニメーションの傑作『きりのなかのはりねずみ』を、新たに絵本として見事に表現してくれました。絵は、ノルシュテイン作品の美術監督でパートナーでもあるヤルブーソヴァが担当。詩情あふれる、美しく、味わい深い絵本です。
相変わらず友情以上恋人未満の稔との関係に、ちょっとモヤモヤの博紀…。ある日、二人が溜まり場とする古本屋店主ヨネが強盗に襲われ、希少価値ある古本が盗まれる。その容疑者としてなんと稔の父、『怪盗六十九号』が浮かび上がるが、当の本人は行方不明。義賊の父を信じる稔は動揺し、思わず博紀にその正体をバラすことになるが…。博紀が稔をレイプしちゃったあの事件、『ネズミとオオカミの愉快な関係』も同時収録。
もしもねずみをえいがにつれていくと、きっと、ポップコーンをくれ、という。ポップコーンをかってあげると、たぶん、ひもでつなぎたがる。そして、それをクリスマス・ツリーにかざりたがる。ツリーをかわされるはめになるぞ。
「ぼく、ネズミだったの。」お小姓すがたの、その少年はいいはります。どこからきたのか、その正体は?真実を知っているのはただひとり、お城の皇太子妃になった少女だけ。魔法で、ネズミから召使いに変えられた少年が、ロンドンの下町をさまよいながらまきこまれた冒険のかずかず。シンデレラ・ストーリーを巧みに織りこんだイギリスのお話です。
「犯人を捕らない刑事には用はない」。たとえ出世はしなくても、犯人検挙に全力を尽くす蟹沢石太郎警部補の信条だ。-毒ヘビによる死亡事件や連続拳銃強盗事件など、何かと物騒な北多摩署管内で、またも大事件!ホステスの強姦殺人事件が発生した。捜査陣はB型の男をマークする…が!?逆転また逆転。蟹沢・相馬の好漢刑事コンビが大活躍。
『ねずみのすもう』は東北地方だけに伝わる昔話ですが、なんともあたたかくユーモラスで、昔話というより童話を読むような楽しさがあります。とりわけ心やさしいおじいさんとおばあさんのねずみに寄せる愛情、お金持ちも貧乏も関係なく、必死になってすもうをとる二匹のねずみの無邪気さが、いきいきと伝わってきます。赤いふんどしをつけた二匹のねずみが、どっちも強くてがんばっているところはおじいさんやおばあさんでなくても、思わず笑いだしたくなります。4〜5歳。
野生動物がどんどん姿を消していく大都会で、カラスとネズミは、人間に嫌われながらもますます繁栄している。なぜなのか。彼らにとって大都市とはどのような「自然」なのか。人間の知恵の裏をかきたくましく生き抜く彼らの実態から、人と動物の現在の関係の仕方とともに、人間という生物の生きざままでが透けて見えてくる。