花粉の授受は,植物が子孫を残す上で必要なたくさんのステップのうちの1つに過ぎないが,ダーウィン以来,生態学の一分野として『送粉生態学』と認識されるほど数多くの研究が行われ,近年では,環境問題から新しい光が当てられるようになってきた。これは,人間活動による生態系やその機能への影響が深刻な環境問題として広く認識されながらも生態系の機能には変化を把握しにくいものが多く,その中で送粉は定量的評価が可能で,もっともデータが蓄積されているものの1つであるからだ。
そこで本書では,研究者や研究者を目指す方に限らず,生態学の専門知識をもたない方でも調査の目的や意義を理解できるよう,送粉のごく基本的な調査法について,生態学的な背景にも踏み込んで解説する。各章の最後に紹介する研究例にはできるだけ日本の植物を材料とした研究を選び,人間活動と送粉の関係について述べた章では多数の研究例を掲載し,本書で取り上げた調査法が大学や研究機関以外でも実践的に活かされるよう配慮している。
送粉生態学では,特別な道具がなくても誰でもいろいろなことを調べることができる。本書によってこのことを実感し,送粉に興味をもったり,研究の一助となったりすることがあれば幸いである。
第1章 送粉生態学とは
1.1 はじめに
1.2 送粉生態学略史
1.3 現在の送粉研究
1.3.1 繁殖様式と送粉様式
1.3.2 植物と送粉者の相互作用
1.3.3 群集全体での植物と送粉者の関係
1.3.4 送粉を左右する環境要因
第2章 自殖と他殖
2.1 はじめに
2.2 自殖のメリットとデメリット
2.3 自家不和合性
2.4 雌雄間の干渉
2.5 なぜ両性花をもつのか
2.6 自殖と他殖を使い分ける
2.7 植物の生態と自殖・他殖
2.8 自殖と他殖に関する調査法
2.8.1 袋がけ実験
2.8.2 実験デザイン
2.8.3 結果率の差の検定
2.8.4 近交弱勢の定量
2.9 研究例
2.9.1 ボチョウジ属に見られる繁殖様式の変異
第3章 花粉の運び手を調べる
3.1 はじめに
3.2 被子植物の多様化と送粉
3.3 日本の植物の送粉様式
3.4 送粉様式と送粉者の地理的変異
3.5 送粉様式の調査法
3.5.1 風による送粉の有無
3.5.2 動物の送粉者の同定
3.6 研究例
3.6.1 アカメガシワの送粉様式
3.6.2 ラベンダーの訪花者に見られる送粉効率の違い
第4章 送粉の成功を測る
4.1 はじめに
4.2 花粉制限
4.3 雌としての成功・雄としての成功
4.4 送粉成功の調査法
4.4.1 花粉制限
4.4.2 雌としての送粉成功
4.4.3 雄としての送粉成功
4.5 研究例
4.5.1 雌と雄の繁殖成功の比較
第5章 人と送粉
5.1 はじめに
5.2 人間の活動が送粉に与える影響
5.2.1 気候変動
5.2.2 景観の変化
5.2.3 農業の集約化
5.2.4 帰化種
5.3 生態系サービスとしての送粉
5.4 研究例
5.4.1 気候変動と春植物の繁殖
5.4.2 周辺環境とソバの結実
5.4.3 都市化が招いたツユクサの繁殖形質の変化
5.4.4 帰化種から在来種への繁殖干渉
さらに詳しく勉強したい方のための参考書
索 引
戦略を策定・実行し、組織の目的を果たすための基礎となるのが「人」と「組織」のマネジメントである。旧版の『MBA人材マネジメント』と同様、これらについて包括的に解説すると共に、「個」を生かすマネジメント、多様性、ワーク・ライフ・バランスなど、人材マネジメントの昨今の新しい観点を盛り込んでる。
環境保全林の造成後に、大気の浄化、気温の緩和といった環境改善効果や、樹林の多様性や自然性の回復、といった当初の目的どおりのはたらきが発揮されているかを評価する方法を解説。シリーズ3巻目。カラー12頁付。
第1章 環境保全林の自然性の評価を理解するために
1 現存植生図の凡例からわかること
2 潜在自然植生図の凡例からわかること
3 「日本植生誌」からわかること
4 「日本植生誌」からわかること その2
5 関東地方の主要森林における群落構成種内の常緑植物の占める割合について
6 南関東地方に残存する自然林3群集における構成種内のつる性植物について
7 神奈川県における潜在自然植生3群集の種組成について
第2章 常緑広葉樹環境保全林の自然性の評価
1 常緑広葉樹環境保全林の自然性の評価法
2 常緑広葉樹環境保全林を対象とした自然性評価の試み
3 常緑植物の評価種による環境保全林の自然性の評価
4 仮想的飽和環境保全林を到達目標とした場合の環境保全林の成熟度評価
第3章 落葉広葉樹環境保全林の自然性の評価
1 冷温帯落葉広葉樹環境保全林の自然性評価手法の開発
2 特定の評価種による落葉広葉樹環境保全林の自然性の評価
第4章 環境保全林の管理による評価
1 「環境保全林の種組成の回復を阻害しているのが林床に厚く堆積した未分解の落葉ではないか」という仮説
2 環境保全林内の林床に堆積する落葉を除去した場合の植物種の侵入について
3 環境保全林の種多様性解析のための試案
4 環境保全林の林床に堆積した落葉は火災の延焼を助長する危険性はないか
Q&A
あとがき
引用文献
索 引
●コラム
1 柏とカシワは非なるもの
2 名は体を表したり、表さなかったり
3 タンポポ3種とハルシオン、ヒメジョオン
4 赤色は花に少なく、果実に多い
私たちの身のまわりにあるさまざまな水辺。河川や湖はもちろん、人が管理する水田にも、あまたの種類の生物が暮らしています。水中で生活する魚類をはじめ、両生類や鳥類、甲殻類、昆虫、植物など、水辺とその周辺の環境で見られる生きものは数えきれないほどです。これらの生きものたちは、生息する水辺の環境に適応して、たくましく生きています。
ひとくちに水辺といっても、いろいろな環境があり、その多さに驚かされます。そこで本書ではまず、河川や湖沼、湿原、水田といった水辺の特徴を紹介します。それらの特徴を知ったうえで、生きものたちの暮らしぶりを見ていきます。とくに身近な河川と水田については、研究者直伝の観察や採取の方法も紹介します。
水辺では、生物同士が互いに影響しあい暮らしていますが、人間活動の影響も無視できません。本書は、生きものたちを保全する取り組みも説明しています。生きものたちを守る際のヒント満載です。
本書を読めば、ただ何となく見てきた水辺の環境にも、いろいろな特徴があり、それらに対応するように生きている生物たちの複雑なドラマがあると、思わずにはいられないでしょう。水辺に生きる動物や植物を観察するために役立つ知識を整理した、観察には欠かせない一冊です。
第1章 そもそも水辺とは
第2章 さまざまな水辺の環境
第3章 水辺の環境と生物の危機的状況
第4章 川の流れやかく乱に適応した生物
第5章 水田稲作に適応した生物
英語は交渉・交流の「道具」なのか。「発信型英語力」「コミュニケーション能力」「異文化理解と対応能力」。小学校から大学まで一貫連携の上に立教学院が掲げるこの「三つの柱」は、実は英語を生きたものにする不可分一体の営為なのだ。本書は「グローバル英語」の限界を超えて、主体的なコミュニケーションには幅広く深い異文化理解が不可欠という立場から、さまざまな困難に取り組み、日夜英語教育の改善に努めている立教学院小・中・高・大学各校での教育実践記録を収める。教え子たちの熱烈な謝辞や謙虚な感想も、日本の英語教育担当者・関係者への大きな示唆となるだろう。
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生活様式や宗教の異なる民族は、それぞれ異なった動物観をもち、図像や彫刻などに表象してきた。またそれはバイオテクノロジーなどの発達やメディアの変化によって大きく変容してきている。表象にあらわれた動物観を読み解き、動物観が今日の社会や文化のなかでもつ意味を考察する。