小津安二郎を芸術家と捉え、その認識の深まり、哲学的認識の成長を追う。これまでの評論と一線を画す小津論。
ブラジル芸術を語る上で欠くことのできない日系人画家の存在。移民から百余年、日本ではあまり知られていない彼らの生と創造の有り様を、ブラジルという土壌に通底する「食人主義」概念ー他者を食らうーに照らして辿る。日系コミュニティ内にとどまらず、ブラジル近代芸術の潮流をコンテクストに据えた、かつてない論考。オズワルド・デ・アンドラーデ『食人宣言』全文初訳掲載。
日本の現代美術を怜悧な美学者が「表層」という視点から抉る。現代美術の新しい視点!
彼の作品を契機とした世紀の論争からラモーの全貌を解明する。フランス伝統のトラジェディ・リリックとイタリア由来の新しいオペラ・ブッファ。両者の影響の下に、旋律を含めた音楽理念の基本に和声を据え、独自の世界を追求したラモー。18世紀フランス知識人を巻き込んだ「ブフォン論争」を軸にラモーの音楽と思想を解明する。
「地域・都市を再生させるマネジメント」とは、地域・都市が人口減少と高齢化に耐え、自立した経済を実現し、衰退する地域・都市から発展する地域・都市へ転換する、いずれも起業家である多様なプレイヤーによるイノベーションであることを本書で示します。
芸術における真理とは何かー。ガダマーの「芸術思想」の哲学的意義を彼の主著『真理と方法』の内部から明るみに出し、彼の「哲学的解釈学」を貫く美と芸術の問題を「言語性」の観点から究明する。
何が芸術作品を定義し、何が作品にたいするわれわれの反応を決定するのか?最も影響力のある20世紀美学の古典的名著。
古典的精神の時を超えた価値ー建築が目指し、理想とした理念を追う。ケネス・フランプトンが再評価した「近代建築の解釈学的古典」。待望の邦訳刊行。
未来を推測し、仮説を立て、不安を言語化し、未知の事柄を具象化しながら、想像の世界へと読者を誘うサイエンス・フィクション。科学を刺激し、科学から刺激を受けて発展してきたSFという広大なジャンルがこの1冊に凝縮されている。本書ではサイエンス・フィクションを5部構成で探査する。サイボーグと人間、宇宙旅行、エイリアンとのコミュニケーション、遠い銀河、核戦争や気候変動によって左右される地球の未来。20世紀半ばに生まれた名作に影響を与えた科学者たち、気象問題を取り上げた近年の作品が提唱する新しい生活と、SF作品における科学とSF文化の進化を辿っていく。陳楸帆、チャーリー・ジェーン・アンダース、ヴァンダナ・シン、テイド・トンプソン、キム・スタンリー・ロビンスンとSF界を代表する現代作家たちへのインタビューが各章の終わりを飾る。200点以上のイラストとともに世界的現象を強烈に提示する。
二つの世界大戦から、革命と共産主義、無意識とセクシュアリティ、言語論的転回、アメリカの亡命者たち、映画と精神分析とファシズム、ホロコーストの記憶、構造主義、「歴史の終わり」、情報テクノロジーの進展、世界文学、そして「廃墟としての未来」まで…時代の転回期に「二〇世紀の夢」を振り返る徹底討議。
1951年から1970年代半ばまでの「新バイロイト」の「黄金時代」を現存するすべての録音記録をもとに徹底検証。世界にも例のない、ワーグナー上演史。
町の仏師から日本を代表する木彫家、帝室技芸員、東京美術学校教授へと登りつめた高村光雲。巨大な父の息子として二世芸術家の道を定められながら、彫刻家としてよりもむしろ詩人として知られることになる高村光太郎。そして、刀工家に生まれた不世出の大工道具鍛冶、千代鶴是秀。明治の近代化とともに芸術家へと脱皮をとげ栄に浴した光雲は、いわば無類の製作物を作る職人でありつづけた。その父との相似、相克を経て「芸術家」として生きた光太郎の文章や彫刻作品、そして道具使いのうちに、著者は職人家に相承されてきた技術と道徳の強固な根を見る。戦後、岩手の山深い小屋に隠棲した光太郎が是秀に制作を依頼した幻の彫刻刀をめぐって、道具を作る者たち、道具を使って美を生みだす者たちの系譜を描く。