ブルックは新しいボス、ネイトが見つめるたび胸をときめかせていた。彼のようなすてきな人に愛されたい。それがはかない夢だとは知りつつも、ブルックは彼のそばで働くひとときを楽しもうと決めた。仕事仲間の関係でいなくてはと自戒しながらも、ネイトは新しい部下ブルックに惹かれずにはいられなかった。だが同じ病院で長い時間を過ごすうち、彼女の行動に不審な点が多いのに気づく。いったい何を隠しているんだ。
十八歳の誕生日、ダニーは一夜限りのシンデレラになった。しがない厩務員であることを隠し、上流社会の夜会に出席したのだ。髪の色を変え、初めての化粧をしてきらびやかなドレスをまとい、カロライナ出身の令嬢ダニエル・デヴリスと名乗って…。令嬢と紳士たちが甘い言葉をささやきかわす舞踏会を、手の届かない生活を、ダニーは味わってみたかった。そして、運命の人に出会ってしまった。ケンタッキーきっての名門ハミルトン家の御曹子リードに。ダンスフロアを横切ってきて手を差し伸べたリードの、南部一と謳われた微笑みにあらがうことなどできなかった。夢のような夜をともにした翌朝、彼女は身分を恥じて姿を消した。ダニーはすべてを忘れるため遠く離れた地で競走馬の世話に励む。だが五年が経った今、残酷な現実が彼女に襲いかかろうとしていた。
アメリカ南部の大農園ローズヘーブン。かつて奴隷制度のもとで繁栄していたころのおもかげは、華麗なバラ園や、巨大なカシの木に残されている。ローズヘーブンには、ロマンチックな亡霊伝説があった。それは、今から百年前にさかのぼる。嵐の夜、見知らぬ男が銃弾に傷つき、農園に助けを求めてやってきた。農園の女主人だったエリザベスの曽祖母は男を手厚く看護し、やがて愛し合うようになり、その男の子供を身ごもった。だが男はある罪に問われて処刑され、二人の恋は結局悲劇に終わる。以来、男は亡霊となって曽祖母と子供の前にバラを手に現れたという。エリザベスはその出来事をしたためた日記を読みながら、奇妙な予感にとらわれていた。男は百年前のちょうどこの日、今夜と同じ嵐の晩に現れた…。と、その時、ドアを激しくたたく音がした。恐る恐るドアを開けると、銃弾に傷つき血まみれの男が立っていた。エリザベスは自分の目を疑った。夢を見ているのだろうか…。彼女は運命に操られるように、男を部屋に迎え入れるのだった。
「僕と結婚して、一年間夫婦でいてくれたら五万ドル払おう」クレイの言葉にジーナは唖然としたが、次の瞬間、喜びがこみ上げた。ロッジのマネージャーとして働き始めてからずっと、ジーナは雇い主のクレイにひそかに思いを寄せていた。その彼にプロポーズされるなんて!遺産相続の条件を満たすため、クレイは早急に妻が必要だった。それでジーナに求婚したのだ。でも、今は便宜的な結婚であっても構わない。彼はときどき熱いまなざしで見つめている。きっといつか私を愛してくれるだろう。彼の目に浮かぶものが、愛情ではなく欲望だということを、無垢なジーナは知らなかった…。
殉職した夫の持ち物を整理していたアリソンは、夫の浮気の証拠を見つけてしまった。私に女性としての魅力が欠けていたからに違いない。傷ついたアリソンはすべてから逃れたくなり、飛行機に飛び乗るとニューメキシコにいる亡き夫の友人ジェイスを訪ねた。ジェイスは突然の訪問に困惑したようだったが、家に泊まるようにと言ってくれた。ジェイスの気遣いは申し分なかったけれど、アリソンは自分に言い聞かせた。勘違いしてはいけない。彼は友人として大切にしてくれているだけ。私をなんとも思っていないからこそ、暑さをしのぐため、涼しい部屋で一緒に寝ようなんて言えるのだ。
おかしくて、やがて奥深き研究記録。食品サンプル観察学者(?)が硬軟ヨーデル文体で紡ぎ出す「大衆食=方言」説のための10の講座。
ふたりで踊るワルツがすべてを変えてしまった。メレディスは住みこみの家庭教師として働くことになった。一度は結婚していた彼女だが、夫の手ひどい裏切りに遭って離婚に至った。つらい経験から、男性に頼るのはやめようと決意し、生きがいを求めて教師の資格を取ったのだった。仕事先は、大きな家具店を経営するクーパー・マーフィーの家。交通事故に遭った娘が自宅療養中で、シングルファーザーの彼は世話や家事に追われているという。きっと家庭教師兼家政婦の到着を心待ちにしているに違いない。ところが、メレディスの予想は見事に裏切られた。やってきた彼女の顔を見るやいなや、クーパーはたちまち不機嫌になったのだ。
「エイミー、お願い、助けてほしいの!」それは、エイミーをつらい過去へと引き戻す声だった。二年前に別れた夫のマイケルが事故にあったことを、彼の姉が電話で知らせてきたのだ。記憶を失ってしまったから、しばらく面倒を見てほしいと。マイケルには二度と会いたくない。悲しみがよみがえるだけ。でも、困っている彼をほうっておくわけにはいかない。エイミーは揺れる心をかかえてマイケルのもとに駆けつけた。彼はエイミーを覚えていなかった。かつて愛した妻だというのに…。エイミーはマイケルの世話をするために、妻のふりをすることにした。二人の離婚のきっかけとなった悲劇を忘れてしまったマイケルは、以前の明るさにあふれ、エイミーを魅了する。また彼に恋をしてしまいそう…。でも、彼が記憶を取り戻したら?それは、あの悲劇がもう一度繰り返されることを意味していた。