「従軍慰安婦」の存在は周知のものだったにもかかわらず、一九九〇年代の当事者による告発まで、なぜ彼女らの存在は「見えて」いなかったのか。「慰安婦」問題がつきつけるすぐれて現代的な課題を、フェミニストとして真正面から論じ話題となった著書に、戦争・国家・女性・歴史にかかわるその後の論考を加えた新編集版。
世界的に関心の高まる女性への暴力。その実態は地域や社会によって多様で、その差異を無視しては解決どころか深刻化しかねない。さらにグローバル化のなか地域社会が変容し暴力の構造はますます複雑化している。本書では現地調査をもとに歴史・文化・社会的文脈を考慮しつつ実態を描き出す。
序章 ジェンダー暴力とは何か?
第1部 家族の名誉にかけて
第1章 南アジアにおける強制結婚ーー規定婚、幼児婚、非人間との結婚
第2章 二重の暴力ーーネパールにおける売春とカースト
第3章 名誉は暴力を語るーーエジプト西部砂漠ベドウィンの血讐と醜聞
第4章 ジェンダー暴力の回避ーーエジプトのムスリムの試み
第5章 噂、監視、密告ーーモロッコのベルベル人にみる名誉と日常的暴力の周辺
第6章 復讐するは誰のため?--ギリシャのロマ社会における名誉をめぐる抗争
第2部 国家に抗するジェンダー
第7章 揺れ動くジェンダー規範ーー旧ソ連中央アジアにおける世俗主義とイスラーム化
第8章 抑圧された苦悩の可視化ーー韓国の烈女と鬼神
第9章 ある「母」の生成ーーアルゼンチン強制失踪者の哀悼と変わりゆく家族
第10章 痛みと記憶ーーチリ・軍政下を生き抜く女性たち
第11章 自由、さもなくば罪人ーー性の多様性をめぐるインド刑法の攻防
第3部 ディアスポラ社会の苦悩
第12章 名誉をよみかえるーーイスタンブルの移住者社会における日常の暴力と抵抗
第13章 トランスローカルなジェンダー暴力ーーインド・パンジャーブ出身女性の経験
第14章 暴力と移動が交錯する生ーーメキシコにおける中米女性移民たち
第15章 越境する「強制結婚」--ノルウェーのパキスタン系移民女性とNGO活動
第16章 眼差しの暴力への抵抗ーーノルウェーのアラブ系難民女性をめぐって
第17章 仕事・恋愛・暴力が交錯する場ーーカラオケパブで出会うフィリピン人女性と日本人男性
◆人権論の観点からジェンダー問題を学ぶための基本書◆
LGBTQ/SOGI、ジェンダー平等と憲法14条、政治とジェンダー、家族とジェンダー、夫婦別姓、リプロダクティブ・ライツ、ドメスティック・バイオレンス、性暴力、教育・学術とジェンダー等々、司法や法学におけるジェンダー・バイアスを明らかにする。真の男女共同参画社会を築くための指針。
『概説ジェンダーと人権』
辻村みよ子・糠塚康江・谷田川知恵 著
【執筆者紹介】
辻村みよ子(つじむらみよこ):東北大学名誉教授・元明治大学法科大学院教授・弁護士
1 〜 4,8,13,14担当
糠塚康江(ぬかつかやすえ):東北大学名誉教授
6,7,9,10,15 担当
谷田川知恵(やたがわともえ):明治大学法科大学院,一橋大学,早稲田大学ほか非常勤講師
5,11,12 担当
【目 次】
はじめに
1 ジェンダー法学の目的と課題
2 人権と女性の権利の展開ー女性差別撤廃条約からSDGsへ
3 世界各国の男女共同参画政策
4 日本の男女共同参画政策の展開
5 LGBTQ/SOGI
6 ジェンダー平等と憲法14条
7 政治とジェンダー
8 雇用・社会保障とジェンダー
9 家族とジェンダー
10 リプロダクティブ・ライツ
11 女性に対する暴力とドメスティック・バイオレンス
12 性 暴 力
13 ストーカー,セクシュアル・ハラスメント
14 セクシュアリティーとポルノ・売買春
15 教育・学術とジェンダー
資料編
1 女性差別撤廃条約
2 男女共同参画社会基本法
略年表(『ジェンダーと法』関連年表)
事項索引
判例索引
琉球大学国際沖縄研究所が主体となって5年計画で進めてきたプロジェクトの成果を集成する全3巻シリーズ。第2巻では、沖縄の社会制度とジェンダー観の関わりについて考え、現代沖縄社会のなかに存在する抑圧の構造を見極める。
21世紀に入りわが国において、格差拡大などの貧困の拡大が叫ばれ、雇用の分野におけるジェンダー平等戦略の立ち遅れが顕著になっている現在、女性の雇用問題をとりまく環境は大きく変化している。フェミニズム/ジェンダー問題をふまえて、ジェンダーと正義/平等と雇用の関わりを論じ、フェミニズム/ジェンダーに関する「基礎知識」を提供するとともに、目指すべき方向性を検討・研究する。
琉球大学国際沖縄研究所が主体となって5年計画で進めてきたプロジェクトの成果を集成する全3巻シリーズ。第1巻では、沖縄の伝統文化とジェンダー研究の接点を探る。
あなたは、将来どんな仕事をしたいと思っていますか?本巻では、「女性用の仕事」「男性用の仕事」という区別はないということを述べました。男女とも、自由に職業を選ぶことができる力をつけてほしいのです。今までは、女の人は家庭を守り、男の人は家族を養うことがよいと思われていました。しかし、世界中の国々で、それはおかしいと思う人が増えています。あなたも性にとらわれず、自由に自分の人生を描いてください。本当に自分に合う仕事が見つかるといいですね。
江戸時代の日常生活には、つねに感染症の脅威があった。梅毒・結核・インフルエンザ・コレラ・麻疹・疱瘡…。これらは日々の暮らしにいかなる影響を与えたのか。医療の進歩や都市生活と商業主義の展開、出版メディアの発達など、生活環境の移り変わりによる感染症へのまなざしの変化を描き、現代にも通じる社会と感染症との共生する姿を考える。
序章 「須佐之男命厄神退治之図」(葛飾北斎画)の世界/1 慢性感染症(黴毒(梅毒)-性感染症をめぐるディスクール〈「大風に類する」病/黴毒の広がりと警戒/黴毒への羞恥/病原としての下層社会と遊廓〉/労瘵(結核)-「恋の病」考〈はじめにー「恋の病」という言説/明清医学の導入/医学書の中のジェンダー/心を病む人々/文芸史料の中の労瘵〉/「癩」-「家筋」とされた病〈中世から近世への転換/病者の特定化ー一七世紀後半/「悪血」の排出ー一八世紀以降〉/2 急性感染症(流行り風邪(インフルエンザ)-江戸の町の疫病対策〈医学史からみた流行り風邪/流行り風邪の通称と背景/疫病対策の転換〉/麻疹ー情報氾濫が生む社会不安〈麻疹養生法の広がりー享和三年(一八〇三)/麻疹がもたらす特需ー文政六年(一八二三)/文久二年(一八六二)の流行)以下細目略/疱瘡(天然痘)-共生から予防へ/コレラー新興輸入感染症の脅威
ジェンダーを学ぶ方、関心を抱く方のための入門書。
身近にある書籍や映画を手がかりにして、ジェンダーに関連する知見を読み解いていく。
ジェンダー問題に関心を持ち、さらに関係する書籍を読み進めていく契機になる1冊。
おおまかに、ジェンダーをめぐる社会の動向を、第1段階(1980年代)、第2段階(1990年代)、
第3段階(2000年以降?現在)に分類し、この3段階のジェンダー課題を広く、
また日本だけでなく外国の問題も含めて取り上げる。
日本語を研究し、日本語教育を追求し、ことばとジェンダーを思索し、中国女文字を惜しむ。9つの国・地域、38人の研究者による画期的論集。
トランスジェンダー生徒が直面する困難は学校がつくりだしている!
教室の中で性別カテゴリーが構築される過程でトランスジェンダー生徒はどのような困難を抱えさせられるのか、その困難を軽減するためにどのような実践をおこなうのか。行為主体としてのトランスジェンダー生徒の姿を描く。
……
マイノリティが排除される過程と生徒たちの日常的実践を通して「学校文化」を問う必読の書!
はじめにーー本書を書くにいたった個人的な背景
序章 研究の背景と本書の目的
1 トランスジェンダー生徒をめぐる社会的背景
2 本書の目的
第1章 先行研究の検討と本書の分析視角
1 トランスジェンダー生徒はどのように語られてきたか
2 学校教育とジェンダー
3 本書の分析視角
第2章 調査の概要
1 私のポジショナリティ
2 研究の対象
3 調査協力者の5つの局面とその時代背景
第3章 トランスジェンダー生徒に対する学校の対応と当事者からの評価
1 何にもそんな言葉ないから「自分変なんや」みたいなーートランス男性のハルトさん
2 性別をおしつけるも何も、性別なかったですーートランス女性のツバサさん
3 「したい」っていう選択肢なんてないですよーートランス男性のススムさん
4 そういうちょっとしたことをやってもらうだけで自分はうれしかったなぁーートランス男性のユウヤさん
5 なんかもうすべてが「もうええわ」ってなりましたねーートランス男性のシュウトさん
6 直接聞いてきてくれたのが、すごいうれしかったーートランス男性のユウキさん
7 新しい前例としたらおかしくないでしょうーートランス女性のキョウコさん
8 あれがなかったらなかったで、こうならなかったーートランス男性をやめたアキさん
第4章 学校の性別分化とトランスジェンダー生徒のジェンダー葛藤
1 ジェンダー葛藤が強まる過程
2 「言語化」「カミングアウト」「出会い」「要求」
3 ジェンダー葛藤を弱める要素
4 「性別にもとづく扱いの差異」によって設定される性別カテゴリーの境界線とジェンダー葛藤
5 おわりに
第5章 トランスジェンダー生徒による性別移行をめぐる日常的実践
1 研究の対象と方法
2 ユイコさんの教室内の所属グループと他者からの性別の扱い
3 ユイコさんの語りから見た教室内に働くAGABの強制力と性別カテゴリーの境界線の変遷
4 おわりに
第6章 トランスジェンダー生徒による実践しない「実践」
1 研究の対象と方法
2 マコトさんの語りに見る女子グループへの参入過程
3 マコトさんによる実践しない「実践」
4 おわりに
終章 トランスジェンダー生徒の学校経験から見えてきたこと
1 性別カテゴリーへの「割り当て」に着目することの意義
2 AGABの強制力と性別カテゴリー内の多様な位置どり
3 トランスジェンダー生徒の実践が意味すること
4 トランスジェンダー生徒が包摂される学校であるために
あとがきーー「はじめに」のその後
文献
ネオリベラリズムが蝕む女性たちの生
「仕事も家庭もあきらめないで、すべてを手に入れましょう」「欠点を受け容れ、粘り強く立ち直りましょう」「福祉に頼るのはだらしなさの証拠です」「あんなふうにはなりたくないでしょう?」--映画、雑誌、テレビにSNSと、至るところから絶え間なく響く呼びかけに駆り立てられ、あるいは抑えつけられる女性たちの生。苛烈な「自己責任」の時代を生きる女性たちに課された幾重もの抑圧をさまざまな文化事象の分析を通じて鋭く抉り出す。一九九〇年代以後のフェミニズム理論を牽引してきた著者の到達点にして、待望の初邦訳書。
2015 年、文部科学省が出した通知を契機に、「『性的マイノリティ』とされる児
童生徒に対する相談体制等の充実」として「適切な生徒指導・人権教育等を推進
すること」が求められるようになりました。けれど現場では「具体的に何から始
めたらよいか」「ちょうどいい教材が見つからない」という悩みが続いていました。
本書では、マンガで様々な場面を想定することによって、子どもたちの発言を引
き出しやすく工夫したワークシートを開発しました。コピーして授業にすぐに使
えるうえ、授業づくりに役立つ「話し合いのポイント」と「解説」が付いています。
道徳・特別活動(学級活動)・総合的な学習の時間で使える.
◆実務と研究を架橋し、新たな共生社会を拓く【ジェンダー法学】の専門誌◆
第7号は3つの特集から成る。〈特集1〉女性差別撤廃条約40周年に4論文(秋月、山下、浅倉、軽部)、〈特集2〉ノルウェーにおける性の多様性に1論文(矢野)と講演の翻訳(矢野・齋藤)、〈特集3〉DSDsを考えるに2論文(ヨ・ヘイル、石嶋)を掲載。「立法・司法の動向」は、「日本学術会議の提言の意義」として性暴力に対する今後の刑法改正に向けた重要な提言(後藤)。最新テーマで迫る。
中国の政治イデオロギーとの関連をとおした家族研究の学説史から、中国の主流社会の農村・都市部女性の生、また少数民族や国際移住当事者など様々な中国女性の生の変容を考察した、現代中国の家族研究、ジェンダー研究論集。