漫然とした福祉国家から費用対効果が尊重される時代に転換した世界の教育政策は、教育の成果を測定することから始まった。2000年に始まったOECDのPISA調査による学力ランキングは、各国の教育政策に強い影響を与えている。本書は、ドイツでは州毎に多様な教育政策が展開されていること、学力の低い移民の児童生徒を中心に学力向上策を実現したこと、教育機会を妨げる分岐型学校制度を改革した点を日本の教育政策との相違として分析する。一方、学校外部評価と教員養成改革で学校教育の質保証を目指す政策は、日本の教育政策との共通性を浮き上がらせている。比較教育学の神髄を鮮明に見せてくれる現代ドイツ教育論である。
20世紀後半、グローバル化の波に乗って多くの日本人がアメリカへ渡り、そこで生活を行うことを選択した。「新日系移民」として位置づけられる彼/彼女たちの属するコミュニティやそこでの生活様式は、20世紀初頭に労働を目的として移住した人々とはまるで異なる様相を呈している。新日系移民たちの、日米両国の狭間で揺れ動くアイデンティティの様相と、そのエスニック・コミュニティの中で営まれる生活の諸実態を記した、日系移民研究の最前線!
世界自然遺産の評価を受ける奄美群島。その豊かな生態系の基礎を作るのが、多様な植物の存在である。本書は、鹿児島大学生物多様性研究会が、植物を「自然界に生きる植物」と「人に利用される植物」に分け、19のトピックスを紹介する。
生物多様性という言葉を聞く機会が増えてきた。「生物多様性の危機」が叫ばれる今,市民や企業,科学者や研究機関,行政,さらには国際機関に至るまで,さまざまな場面で生物多様性を保全し,将来へ残そうとする試みが見受けられる。それでは,生物多様性とは何だろうか?いったい何を守ろうとしているのだろうか?生物多様性を保全することの意味や意義は?本書は,これらの問いに答えることを目的としている。
生物多様性の評価方法,保全の意義などは一義的に定義できるものではない。自然からの目線,社会からの目線を踏まえつつ,多様に評価でき,多様な意味を持つ「生物多様性」について,本書では幅広く解説する。
1 はじめにー生物多様性について考え始める
2 生物多様性の多様性
2.1 生物多様性とは?
2.2 生態系とは?
2.3 種とは?
2.4 種内変異とは?
2.5 生物多様性の定量化
3 生物多様性を形作するー偶然性と必然性が織りなす
3.1 生物群集とは?
3.2 生物群集の形成プロセス
4 生物多様性の果たす役割ー人類の福利と関わる
4.1 生物多様性と生態系サービス
4.2 生物多様性と生態系機能
4.3 明らかになってきたこと,不確かなこと
5 おわりにー生物多様性をめぐって
引用文献
あとがき
生態学から生物多様性を把握する(コーディネーター甲山隆司)
索引
古代ギリシャの哲学者へラクレイトスは、「なべての物は流れ、すべて〈ある〉はなく〈なる〉のみ」という有名な言葉を残した。本書の表題は、存在(ある)から発展(なる)への、つまりは可逆的な力学的世界観から不可逆的な熱学的世界観への転換を意味している。
古典物理学の三大支柱のうち、力学と電磁気学は、ある時刻における条件が与えられればその後の変化が確定的に決まるという意味で〈決定論的〉であり、また時間の向きを逆転してもそのまま成立するという意味で〈可逆的〉である。これに対し、熱力学は古典物理学においてきわめて異質的な存在で、その著しい特徴は不可逆性にある。熱現象に特有のこの不可逆性は可逆的な力学理論からどのようにして導出できるのであろうか。
本書は、非平衡熱力学の開拓者である著者が〈発展の物理学〉における自らの独創的業績の基礎を体系づけ、その哲学的意義を明示したものである。構想力に富む本書は、不可逆性への新しい視点を提供するとともに、物理学的世界観の変革への契機をはらむものとして注目を集めてきた。その後『混沌から秩序へ』を経て、〈複雑性〉の考え方につながる端緒となった著作である。
どのように編修され成立したのか言語表現から切り込む。矛盾や齟齬の多い本文は、そもそも「どのように」書かれているのか。古訓や古注釈によって「読める」ように是正されてきた従来の解釈を見直し、文体的特徴の分析により記述に即した実証的読解のための枠組を構築する。東アジアにおける文字・漢文・文献の交流を示す史料としての価値を見出し、日本書紀が成立するまでの段階的な編修過程を明らかにする。
中東欧の旧社会主義圏11カ国の体制転換を、ポランニー理論に基づいて分析する決定版。
本書では、目の前の子ども同士や子どもと保育者との間で生まれるやりとりや気持ちを大事にして、臨機応変に保育をつくりだしていく「インクルーシブ保育」の実際を伝える。第1部で「みんなが同じ」であることを前提としない「インクルーシブ保育」の考え方を伝える。第2部では、実践事例をとりあげ、面白い活動が生まれる中でクラス集団の関係性や子ども一人ひとりの姿、保育者自身の認識などが変化していく過程を伝える。第3部では、インクルーシブ保育と従来の障がい児保育や統合保育とのちがいについてあらためて検討し、これからの保育の実践や研究のあり方について考察する。
渓流から海辺、海中に暮らす宝物のような生き物たち。エビ・カニ、ウニ・ヒトデ・ナマコ、サンゴやゴカイの仲間、海草・海藻、そして魚たち。この宝石のような生き物たちは、どこから来て、どのように暮らしているのか。研究者たちが案内する。
ダイバーシティは、解決すべき「問題」ではなく、活かすべき「強み」。長年にわたり組織のダイバーシティ推進を支援してきた著者が伝える、ダイバーシティの本質的な意義とその重要性。
四季の風物の美しさと、竜巻・台風・局地的豪雨などの気象災害。定評あるテキストの著者が多種多様な天気の謎に迫る。雑誌『天気』の好評連載を書籍化。
「ホモネタ」やアウティング(暴露)、男女別制服の強要など、性的指向や性自認(SOGI)にまつわるハラスメントはLGBTQ当事者に対する深刻な人権侵害となります。基本的なとらえ方から、事例も多数紹介した初の入門書。
はじめに
マンガで考える「これってSOGIハラ?」
パート1 基礎から知る「SOGIハラってなに?」
1「SOGI」ってなんだろう
2 SOGIの視点で多様な性をとらえる
3「SOGIハラ」をどう防ぐか
パート2 学校で起こるSOGIハラと支援のありかたーーそのとき、あなたにできること
はじめに
1 あなたにできること(1)──想像する
2 あなたにできること(2)──聴く
3 あなたにできること(3)──変えていく
おわりに
パート3 これってSOGIハラ?事例集
はじめに
1 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
2 いじめ・暴力・無視
3 望まない性での生活の強要
4 不当な入学拒否や転校強制、異動や解雇
5 だれかのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
6 その他
パート4 SOGIハラのない学校・職場づくりに必要なこと
巻末資料
SDGsでは性感染症予防やジェンダー平等が明記され、保護者の強力なニーズもあり、性教育に注目が集まっている。国際標準の性教育は学校が拠点となる。日本のボトルネックは何か、いかに打開し実践を切り拓くか、理論的に論じる。
はじめにーー性教育のさわやかな風を吹かそう
第1部 包括的性教育とは何か
第1章 性教育の新しい時代を拓く国際的スタンダード
--『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』初版から改訂版へ
【補足資料1】アメリカ性情報・性教育協議会(SIECUS)の「包括的性教育ガイドライン」(第3版、2004年)
第2章 性教育におけるテーマ主義と課題主義
--テーマ主義を悪用された都議会での性教育バッシング質問にも触れて
第3章 “青少年の性”はどう捉えられてきたか
--戦後日本の性教育政策と国際的スタンダード
第2部 包括的性教育をすすめる
第4章 乳幼児期から包括的性教育をすすめる
--人生のはじめだからこそ偏見のない性の学びを
【補足資料2】乳幼児の性教育で「からだ学習」をすすめる10のポイント
第5章 学校教育の現場で包括的性教育をすすめる
--学習指導要領の問題点と国際的スタンダードへの展望
第6章 包括的性教育の立場で「性教育の手引」を発展させる
--東京都教育委員会「手引」の問題点の解明と性教育実践の展望
第7章 性教育をすすめるとき、すすむとき、そして立ち止まるとき
--ゆたかで多様な実践の可能性
おわりにーーいまこそ性教育政策の転換のとき