学ぶ権利を保障するためには、学校・教職員の専門性に基づく自律的な教育活動が欠かせない。しかし他方で、学校・教育現場への統制の強化が、「民意」を背景に進められてきた。教育における民主主義のあり方を探る本格的研究。
序 教育に求められる自律性と教育政治
第一部 「民意」拡散と教育政治の変容
第一章 「民意」拡散による教育専門職裁量の縮小
第二章 教師教育における専門的自律性と正統性
第三章 教育機関の管理運営における民主主義をめぐる課題
第二部 「公正な民意」と教育政治のかたち
第四章 「民意」拡散に対置しうる「公正な民意」のあり方
第五章 学校を基礎とした民主主義のあり方
第六章 教育管理職人事における政治の位置
結 “本当の世界”についての学びを支える教育政治のかたち
本書で育てる『社会性』とは子どもたちが大人になり社会生活を営んでいくために必要な、コミュニケーション能力・実践力・社会適応・集団適応・規範意識等、特に「将来展望性」に焦点を当てた諸能力や資質の総体。
学校教育におけるマンガの可能性について、多様な視座から考察を加えることにした。
マンガ家、マンガ研究者、教科書編集者、そしてマンガを扱った実践のある現職教員と、多彩な顔ぶれの執筆陣。
それぞれの執筆者の立場から、テーマへの独自のアプローチを試みる。
具体的な実践にも言及がなされたことを受けて、今後学校教育とマンガとの新たな関係性の構築にむけた1冊。
教育最前線講演会シリーズとして開催された講演会の記録を収録。
【執筆者】
町田守弘、秦美香子、山田桂吾、岸 圭介、森 大徳、すがやみつる
はじめに 町田守弘
大学教育におけるマンガの可能性ーマンガ研究の視座から - 秦 美香子
教科書とマンガーマンガはどのように教材化されうるか - 山田桂吾
マンガのキャラクターを通した「主体変容」の可能性 - 岸 圭介
マンガを文学作品として読むーこうの史代ー「夕凪の街」教材化の試み - 森 大徳
プロを目指さないマンガ学部学生のマンガ教育とは? - すがやみつる
総括討論の概要 町田守弘
本書では、文学には、皮肉やユーモアなどといった文学を理解し楽しむために必要なcreativity、書き手や話し手の語り口という文章を理解するために必要なnarrativityがふんだんに含まれているという点から、文学教材が単なる事実文、報告文、作られた会話文よりもコミュニケーション能力育成のための活動に有益であることを論じる。
各国のライティング(書くこと)の教育的広がりや深みについて、さまざまな立場・角度から探究し、その可能性を示す。
アカデミック・ライティングの意義や評価に関する議論を含みつつも、「ライティング教育=アカデミックな文章の技術指導」という狭い見方に限定されず、人間形成全体におけるライティング教育の可能性を探る。そのため、パーソナル・ライティングというもう一つの軸を立て、アカデミックとパーソナルの両側面を架橋することを目指す。
二字漢語の意味とその構成漢字の意味との対応関係に着目。その関連性の度合いを「透明性」と定義し、多数の二字漢語の透明性を明らかにする。またその調査結果から日本語教育での教材案を提案する。今後の漢字教育に大きく資する書。
■「はじめに」より
近年、日本語教育では母語の文字体系に漢字を持たない学習者の割合が増加している。(中略)
母語の文字体系に漢字を持たない学習者にとって、漢字学習は日本語の学習で困難を感じる点の1つに挙げられる。表記体系に平仮名、片仮名、漢字の3種類の文字が用いられる日本語において、漢字は実質語を表す。そのため、漢字は文章を理解する際の支えになる。しかし、常用漢字は2,000字以上あり、また複数の漢字を組み合わせて形成される語はそれ以上の数があるという「数の多さ」は学習者にとって大きな負担となっている。
本研究ではこの困難点に関し、二字漢語の透明性、すなわち、二字漢語の中には、二字漢語の意味とその構成漢字の意味が対応して結びつくものと結びつきにくい語があることに着目する。漢字は表語文字とも呼ばれ、1字ごとに意味を持つ一方で、漢字2字から成る二字漢語は語としての意味を持つ。「国外」や「飲酒」のように語の意味と構成漢字の意味が結びつくものがある一方で、「経済」や「精神」のように、現在用いられている一般的な意味では、構成漢字ごとに分解して語の意味を捉えることが難しい語もある。漢字の意味を理解する目的は語の意味を理解することであるとすれば、漢字教育を考えるためには、漢字のみならず、語にも注目し、造語成分としての漢字の教育を考えることが重要である。
変革する産業社会が生み出す道徳的な歪みに対し、学校教育では何ができるのか。道徳教育の基本的理論やその可能性を導く手法を提示し、改めて問い直す。教育関係者必読の書。
まえがき
目次
序 章 道徳教育ーー何が問題なのか
1 近代教育における道徳教育思想のエッセンス
第1章 人間の完成可能性と道徳的人間の形成
第2章 ルソーの道徳教育論
第3章 人間性の探究と道徳教育ーーペスタロッチーの場合
第4章 ヘルバルトの道徳教育論ーー「検索」から「思索」へ
2 現代における道徳教育へのアクセス
第5章 道徳教育への批判的視点
第6章 道徳教育の限界と可能性を考えるーー人間操作の技術の時代に
第7章 コールバーグの道徳教育論
第8章 ゲーレンの道徳教育論
第9章 コミュニケーションと道徳教育
3 今日の道徳教育の位相
第10章 現代社会と道徳教育ーー高度情報化社会の課題
第11章 ルールとマナーの教育ーー道徳の社会的考察
第12章 教養教育における道徳教育
第13章 教員養成教育における道徳教育ーー「道徳」の指導を支える能力育成の課題
第14章 教師にとっての道徳教育
4 道徳教育の実践的展開
第15章 幼児期からの道徳教育
第16章 小・中学校における道徳教育の特徴
第17章 小学校における道徳教育の実践
第18章 中学校における道徳教育の実践
第19章 高等学校における道徳教育の実践
第20章 小・中学校の道徳の授業づくりの実際
5 道徳教育の歴史
第21章 日本の戦前の道徳教育
第22章 戦後の道徳教育ーー特設道徳をめぐって
子どもたちに性の多様性をどう教え、教職員の意識をどう変えるのか。そして、教員のカミングアウトは学校に何をもたらしたのか。同性愛当事者が教員として取り組んだ、性差別をしないことを学校でまなぶための理論と実践。
序章 学校での記憶ー教室を支配するジェンダー規範と異性愛規範
1 主語の喪失ー「オレ」が言えない
2 同性愛への気づきとクローゼットの出現
3 逃げ場のない教室ー拘束され操られる身体と心
4 未来の喪失と獲得ー電話相談でのカミングアウト
第1章 性の多様性と人権
1 SOGIEとは何か
2 SOGIEを理由とした差別
第2章 ジェンダー・セクシュアリティと教育に関する理論
1 隠れたカリキュラムとセクシズム
2 ジェンダーの再生産装置としての学校
3 ジェンダー・セクシュアリティに関する理論
4 同性愛嫌悪と異性愛至上主義
第3章 学校は性の多様性をどう教えてきたか
1 教材・教育課程の中の同性愛嫌悪
2 多様な性に関する教員の意識
第4章 性的マイノリティへの「支援」
1 性的マイノリティの子どもの可視化と「個別的な支援」
2 「個別的支援」の事例から見える課題
3 性的マイノリティの子どもが直面する困難と支援のあり方
第5章 人権同和教育と性の多様性の交叉
1 人権同和教育担当教員への聞き取り調査
2 人権同和教育の経験は、性の多様性にどうつながりうるか
3 考察ー人権同和教育と性の多様性の交叉性
第6章 性の多様性をめぐる諸外国の教育
1 海外の教育実践から学ぶ二つの教育アプローチ
2 ドイツ・ハイデルベルク自由学校
3 考察ー性の多様性と教育をめぐる分離と統合
第7章 性の多様性とカリキュラム
1 カリキュラムと中立性
2 学習指導要領と性の多様性
3 性の多様性を前提とした学習指導要領の提案
第8章 性の多様性をどう教えるのか
1 性の多様性と教育学の交叉
2 性の多様性を教える授業
3 成果と課題
第9章 教職員の意識を変える研修
1 性の多様性に関する教職員研修の要請
2 性の多様性に関する教職員研修
3 成果と課題
第10章 LGBT教育の手引書ができるまで
1 調査の概要
2 調査結果
3 結論ー手引書ができたのはなぜか
4 課題ー多様な語りの把握と分析
第11章 教員のカミングアウトは何を変えたか
1 学校でのカミングアウト
2 保護者たちはどう受け止めたか
終章 多様な性の視点でつくる教育へ向けて
あとがき
文献一覧
近年、社会的需要の高まるSTEM分野やグローバル人材の育成のための才能教育が、わが国でも徐々に整備されている。他方、優れた才能と発達障害を併せ持ち、二重の特別支援教育が必要な多くの2E(twice-exceptional)の子どもたちが、既存の学校教育に馴染めず、才能を十分に発揮できないまま置き去りにされている現状もある。多様な発達を遂げる子どもたち一人ひとりの才能を見出し伸ばす包括的な教育の整備は、今後も重要な課題となるだろう。米国の実践事例を合わせ鏡とすることで、わが国に適した才能・2E教育の具体的あり方を検討し、「誰一人取り残すことのない個別最適な学び」の極致を志向した一冊。
はじめに/重要用語解説
第1章 才能の概念と発達多様性
第2章 才能児の多様な才能とニーズの評価
第3章 才能教育の方法と早修
第4章 拡充プログラム
第5章 2E の概念と2E 教育の方策
第6章 2E 教育の実践方法
第7章 日本の才能教育の現状と課題
第8章 日本の2E 教育の現状と課題
あとがき/索引
教科教育学研究における課題として、授業研究、教師教育、カリキュラム・マネジメント、資質・能力(コンピテンシー)、アクティブ・ラーニングなどの鍵概念を示して、今後の研究のあり方を提案する。
学校での勉強が役に立たないと感じてしまうのは、なぜだろう?世界各地の多様なノンフォーマル教育の事例を紹介し、「別様の教育」の可能性を模索!
誰も訳していなかった原典。人間とは何か?
社会教育の転形期において、「社会教育の基本かつ喫緊のテーマ」である「制度設計と評価」について、
基本的・原則的な事柄を整理し、社会教育とその行政が直面している課題を示し、
公共性という視角を意識しながら今後の社会教育の展望を描くための視点を示す。